ハッピーバースデー
今日は私の誕生日だ。
大きなケーキの上には、ローソクの輪ができている。
ローソクの本数が正しいかなんて、細かいことは気にしない。たくさんあった方が派手でいいから。
さっそく私は、ケーキの上にあるローソクに、息を吹きかける。
前半は勢い良くローソクの火を消せたけれど、後半には少し息切れしてしまった。
でも、なんとか最後の一本まで、消すことができた。
ハッピーバースデー、誕生日おめでとー。
そのあと、ママがローソクにもう一回、火をつける。
今度はパパの番だ。親子そろって、今日が誕生日。
プロ野球選手のパパには、こだわりがあるそうだ。ホームランをたくさん打つ選手にとって、息を吹きかけて消すのは邪道らしい。
ここはバットをふって風を起こし、それでローソクの火を消すという。
「パパ、大丈夫?」
ママが心配そうに声をかけた。
「ちょっとケーキから離れすぎじゃ」
「大丈夫。試合でホームランを打つよりも、こんなの簡単だから」
パパとケーキとの距離は、三メートルくらいある。
でも、パパならきっと、やってくれるはず。がんばれー、パパー。
そして、私の前で、バットを力強くふり抜いた。
おお! すごい! すごい! これなら、ローソクの火は全部消えたね♪
ところが、私がケーキの方を見ると、半分くらいしか消えていなかった。
「アウトになるのは、三回失敗した時だから」
パパが少し焦りながら言う。
「まだ一回目。あと二回以内に消せばいいんだよ。それがルールだ」
その直後に、もう一回スイングする。
けれど、残っていた内の半分しか、ローソクの火は消えなかった。
「パパ・・・・・・」
私はつぶやく。ママも不安そうだ。あとチャンスは一回のみ。
でも、きっとパパなら・・・・・・。
絶対に消せるはず! そう信じて、私はじっと見守る。
パパが全力でバットをふった。
これまでで一番強い風が吹き抜けていく。
ローソクの火が一気に消えていった。
しかし、一本だけ残ってしまう。消えそう、でも、消えない・・・・・・。
とっさに私は、ケーキに息を吹きかける。
だって、今日は私とパパの誕生日だ。
こうしたって、ルール上は問題ないはず。
今日が誕生日の人は、ケーキの上にあるローソクの火を、消してもいいから!
私の息で、最後の一本、その火が消えた。
パパは静かにバットを置くと、
「これこそ、チームプレーだな」
笑顔で褒めてくれた。
パパはいつも言っている。野球ではチームプレーが大事なんだって。
ハッピーバースデー、誕生日おめでとー。
「ベスボマ、ベスボマ、ベースボールピープル・・・・・・」




