表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/85

変則DH

 監督は一人で部屋にもって、考えごとをしていた。


 今日の試合、そのスターティングメンバーをどうしようか。


 ある程度は覚悟かくごしていたものの、いざとなると、ここまでなやむことになるとは思わなかった。


 今シーズン、自分たちが加盟しているリーグでは、一部の試合において、特別なルールが適用てきようされる。『変則的な指名打者制』だ。


 これによって、ここムー大陸における野球の歴史が、大きく変わることになるかもしれない。


 指名打者制の可否かひについては、これまでも、たびたび議論されてきた。


 そういった中で、折衷せっちゅう案として出てきたのが、今日の試合で適用される『変則的な指名打者制』だ。


 その内容を端的たんてきに言うなら、次のようなものになる。


 試合の前半は『指名打者制あり』で、試合の後半は『指名打者制なし』という野球だ。


 試合が始まってから「打順が二巡ふためぐりするまで」は、『指名打者制あり』。


 二巡りしたあとは、『指名打者制なし』だ。「その時点で試合に出ている投手」が、指名打者の打順に入ることになる。


 そんな投手に対して、代打を送ることは、もちろん可能だ。しかし、それをすると、投手は降板扱いになる。その試合ではもう、投げることができなくなる。


 投手が好投している場合や、チームのなかぎ事情によっては、代打を送らずにそのまま打たせる、というのも選択肢の一つになってくる。


 これが、『変則的な指名打者制』の概要がいようだ。


 リーグ運営本部の言葉をりるなら、以下の利点があるらしい。


 先発投手でも、試合の後半まで投げ続ければ、みずから打席に入ることができる。投手が打席に立つチャンスを、完全にうばってしまうわけではないのだ。


 他にも利点がある。投手交代のタイミングをどうするか、ここで代打を送るべきか、そういった作戦面の駆け引きも残すことができる。


 と、いいことずくめのように運営本部は言っているが、これがうまくいくかどうかは、実際にやってみないとわからない。


 まずは少しだけためしてみて、ファンの反応を調べ、それを参考に、来シーズン以降の導入を検討けんとうするのだとか。


 監督の立場としては、正直なところ、この『変則的な指名打者制』を歓迎かんげいしていない。


 というのも、野球解説者が口をそろえて言っているのだ。「この『変則的な指名打者制』は、監督の力量が大いに問われるだろう」と。


 そのせいで、余計よけいなプレッシャーを感じている。


 さて、間もなく試合だ。そろそろ決めてしまわなければならない。今日のスターティングメンバーをどうしようか。


 この『変則的な指名打者制』において、重要になりそうなのは、次の二点だと思う。


 今日の試合の指名打者を、だれにするのか。


 そして、その打順を何番にするのか。


 試合開始時の指名打者には、三巡目さんじゅんめの打席が回ってこない。


 打てる回数に制限があるという意味では、「代打」に近い存在なのだが、大きく異なる点がある。


 代打と違って、任意のタイミングで使えるわけではないのだ。チャンスの場面で打席に立てるかどうかは、打順のめぐり合わせ次第しだい


 一方で、試合の後半には、投手が打席に立つことになる。


 それがチャンスの場面なら、代打を使った方がいい。


 つまり、この『変則的な指名打者制』においても、ベンチに代打要員は必須ひっすなのだ。打てる選手をまだ残しているとなれば、相手チームに対して、多少なりとも警戒をいることができる。


 監督として、本当に頭のいたい問題だ。チーム内の限られた攻撃力を、試合の「前半」にかたむけるのか、試合の「後半」に傾けるのか。


 うーむ、試合開始時の指名打者を誰にしよう?


 育てたい若手に、一軍での出場機会をあたえるか。それとも・・・・・・。


 そのあと十分近く悩んでから、ようやく迷いをち切った。色々と不安はあるものの、今日のスターティングメンバーは、これでいこう。






 両チームのスターティングメンバーが、次々と発表されていく。


 ファンの注目は、やはり指名打者だ。


 先攻のチーム、そのわくに入ったのは・・・・・・む? 先発投手?


 さらに後攻のチームも同じだ。先発投手が指名打者の枠に入っている。


 これでは、指名打者制がないのと同じことでは・・・・・・。しかも、どちらも九番バッターだ。


 球場内がざわつく中、両チームの監督は相手側のベンチを見て、「ですよね」という顔をしていた。


 新しいことに挑戦するのだ。どうしても最初は、手探てさぐりになる。


 その上で試合に勝とうとするのだから、まずは自分のれているやり方でいく。これが一番だ。


次回は「大掃除」のお話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ