必殺、変化球!
「『快速球』というのが『ストレート』でね。『曲球』は『カーブ』なんだよ」
「結構そのまんまなんだね」
私が感想を口にすると、さらに彼女が教えてくれる。
野球の変化球は、台湾語で何と言うのか。
「『切球』が『カットボール』で、『掌心球』が『パーム』」
「おお! さっきのやつよりも、格闘ゲームの技っぽい気がするよ!」
「ふっふっふっふ。驚くのはまだ早いって」
彼女は何やら光線技を放つような構えをすると、
「えいっ、『白虎変速球』!」
威勢良く叫んだ。
「それは何?」
「『サークルチェンジ』だよ♪」
さらに、またもや派手な構えをしてから、
「とりゃー、『青龍円月球』!」
「それは何?」
「『ナックルカーブ』だよ♪ そして、これがとどめの、『青龍上昇快速球』! おりゃりゃりゃりゃー!」
「うわわわ、やられたー!」
彼女のおふざけに、私は友人としてつき合ってあげる。『青龍上昇快速球』というのは、『ライジング・ファストボール』のことらしい。
(台湾語だと野球の変化球が、必殺技の名前っぽくて面白いなぁ)
もっと知りたくなったので、家に帰ったあと、インターネットで調べてみる。「玄武」や「朱雀」がつく変化球もあるのかな。
その結果、衝撃の事実が判明する。
(だまされたー!)
なにが、『白虎変速球』が『サークルチェンジ』で、『青龍円月球』が『ナックルカーブ』だ。
本当は、『サークルチェンジ』が『圏指変速球』で、『ナックルカーブ』は『弾指曲球』というらしい。
そこでふと、私は一つのアイデアを思いつく。
世界には、まだ野球を知らない国や地域がたくさんあるのだ。そういう場所に行って、先に変化球の名前を決めてしまえば・・・・・・。
私の中で休眠状態にあった中二病、それが再覚醒した瞬間だった。
たとえば、『フォーク』の名前は、こんな感じで。
「永続魔海の『トライデント・フォール』!」
次回は「指名打者制」のお話です。




