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将来の夢はプロ野球選手
「将来の夢はプロ野球選手」
さらに、ぼくは言葉を続ける。
「そのバットになることです!」
ここは野球道具の工場だ。そして、今日は卒業式。このあと、ぼくは一人前の野球道具として、工場の外へと旅立つのだ。
これまでお世話になった工場の人たち、その温かい拍手に送られながら、ぼくは胸を躍らせて、トラックの荷台に乗り込んだ。
ところが、それから一時間後、驚愕の事実を知ってしまう。
「プロ野球選手が使っているのは、木製バットだよ」
スポーツショップのお姉さんが、申し訳なさそうに教えてくれた。
どうしよう。ぼくは金属バットなのに。「プロ野球選手のバットになる」という夢は、絶対に叶わない。
そんな時、一人の男子高校生が、落ち込むぼくを手に取った。
何回か軽く素振りをしてから、
「これ、買います!」
その日の内に、ぼくは知った。
この男子高校生、野球強豪校の四番打者だったのだ。
「俺は絶対に、プロ野球選手になる!」
彼の口癖だ。そう言いながら毎日、何百回と素振りをしている。
素振りの最中、ぼくは密かに、この幸せを噛みしめていた。
(もしかしたら今、未来のプロ野球選手に使ってもらっているのかも♪)
次回は「盆栽」のお話です。




