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テレビの前でキャッチャーミット

 自宅のリビングルームで、俺はソファーに座り、キャッチャーミットをはめていた。


 正面にあるテレビでは、プロ野球の試合を中継している。


 その映像を見ながら、キャッチャーミットを構える俺。


 そうやって待っていると、応援しているチームのピッチャーが、鋭いボールを投げ込んできた。


 ストライク!


 テレビの中で、審判が告げる。


 わずかに遅れて、俺もつぶやく。


「うん、いい球だ」


 もちろん、自分のキャッチャーミットの中に、実際のボールは収まっていない。


 けれども、こんな風に野球観戦をしていると、まるで自分が、プロ野球のキャッチャーになったみたいだ。


 たまに調子に乗って、自分で球種のサインを出してみたりもする。


 とはいえ、テレビの中と、テレビの外だ。俺のサイン通りに、ピッチャーが投げてくることなんて、そんなに多くはない。そもそも、このサインだってデタラメだし。


 でも、ごくたまにあるのだ。


 要求した通りのボールが飛んでくると、本当に試合に出場しているみたいだ。それでピンチを切り抜けた時なんかは、至福の気分を味わえる。


 だから、この観戦方法はやめられない。高校で野球をしている友人たちにも、たびたび勧めている。


 しかし、大きな注意点があった。


 テレビの野球中継は基本的に、ピッチャーの後方から撮影している映像だ。


 できれば、真正面からとらえた映像を増やして欲しいのだけど、そこは仕方がない。自分の脳内で、うまく調節するしかないのだ。


 またもや、ピッチャーがボールを投げ込んでくる。


 ストライク! うん、いい球だ。


 こうして今夜も、テレビの前で野球観戦を楽しむ俺。


 緊迫した展開で試合は進み、九回裏になった。同点の状態で、相手チームの攻撃だ。


 俺は慎重に配球を考える。この回を0点に抑える。そして、延長戦へとつなげるのだ。


 間もなく、夜の九時になろうとしていた。このチャンネルでは、試合の最後まで放送してくれるので、途中で打ち切られる心配はない。


 俺がキャッチャーミットを構えていると、中学一年生の妹がやって来た。


 なぜかプラスチック製のバットを持っており、俺の左前方に立つ。バッターが打席に入るような感じ。


 しかも、予告ホームランのポーズをしてきた。


「お前、何やってるんだ?」


「見たいドラマが、九時からあるの。スペシャルドラマ、『特殊すぎる探偵』」


 点が入れば、そこで試合は終了になる。そうなれば心置きなく、スペシャルドラマにチャンネルを変えることができる、と考えたらしい。


 それで妹はこういう形で、相手チームの応援をすることにしたようだ。


 いいだろう。その浅はかな目論見もくろみ、空振りさせてやる。この回を抑えて、延長戦に突入だ。


 キャッチャーミットを構える手に、自然と力が入る。いざ勝負!


 緊張した空気の中、ピッチャーが勢い良くボールを投げ込んでくる。


 スピードは悪くない。


 が、その一球はあろうことか、打者の頭部に直撃した! よりにもよって、デッドボールだ!


 すかさず妹が、バットをリモコンに持ち替えて、


「ぶつけてくるなんて、お兄ちゃんの反則! よって、ドラマを見ます!」


 テレビのチャンネルを変えられてしまった。


次回の主人公は、「人間」ではありません。

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