ベースの秘策・二
監督は回想する。
昨日のトゲトゲベースは失敗した。
別デザインのホームベースも、試合開始前に撤去させられた。
あの時、審判から強い口調で言われた。
「ベースに変な絵を描く、そういうのは絶対にダメです!」
それで元のベースに戻した結果、相手チームに盗塁されまくって、試合はぼろ負けだった。
しかし、この程度のことでは挫けない。
今日の試合、新たな秘策を用意してきた。
さっそく準備に取りかかる。大きなバケツの中で、複数のペンキを混ぜ合わせた。
何をしているのかというと、ここの球場の内野の土、それと同じ色をつくろうとしているのだ。
「こんな感じかな」
自分の趣味はプラモデルで、ジオラマをつくった数は百を超える。このような作業はお手のものだ。
完成したペンキと内野の土とを、何回も見比べてから、
「ふふふふふふ。この色のベースなら完璧だ。相手チームの選手は盗塁しようとした時、どこにベースがあるのか、確実に戸惑うはず」
なんたって、周囲の地面と同じ色なのだ。茶色の中にある、茶色いベース。
「絵を描いてるわけじゃないから、たぶんセーフ。ただ、色を塗っただけだし」
完成したペンキの中に、監督は二塁ベースを浸していく。さらに三塁ベースにも、同じ処理を施した。
「今日の試合、これで勝ったな」
相手チームの機動力は、封じたも同然。我ながら、見事な作戦だ。ふはははははは。
もう少し続くよ。




