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ベースの秘策・三

「いいかげんにしてください!」


 審判は声を荒げた。


 一昨日、昨日と、あれほど注意したにもかかわらず、この監督はまったくりていない。今日も別の方法をこうじてきている。


「でも、今回はベースに何もしていませんよ」


 白々しいことを、平然と言ってくる監督。


 しかし、野球の審判として、このような状況を認めるわけにはいかない。


 たしかに、今回の二塁ベースは普通だ。それ自体に問題はない。


 ところが、その周囲に問題がありまくりなのだ。内野の地面、そこに直接、絵を描いている。


 おかげで、十個以上もある二塁ベース。まるで分身の術だ。


 しかも、足でんでみないと確認できないほどの、脅威きょういのハイクオリティーをほこっている。


 なお、三塁ベース周辺も、同じ状態になっていた。


「今すぐ消しなさい! 試合開始前ですが、そちらのチームの不戦敗にしますよ!」


 かなり本気で言ってみる。


 前のように渋々従うかと思ったら、監督は素直に応じた。


 が、球場スタッフたちがはこんできたのは、まさかの白い土!


 監督は満面の笑みに変わると、


「さー、消しちゃってちょーだい」


 二塁ベース周辺の土を、白い土と入れ替えるよう指示している。これが終わったら、三塁ベース周辺でも、同じことをする予定だとか。


 その様子を見ながら、審判は苦々しく思った。この監督、最初からここまで計算していたらしい。


 そういえば、ここ二試合、このチームの内野手はエラーが多かった。


 一方で、相手チームはエラーをしていない。


 それで、こういう強行策に出たわけか。白い土のグラウンドに、白いボール。どんなに守備のうまい選手でも、この状況ではエラーをするだろう。


 おまけに、ベースはもともと白い色をしているので、相手チームの盗塁対策も兼ねている。


 さすがに、審判は激怒げきどした。ならば、こちらにも考えがある。


 すぐさま球場近くの文房具店に走ると、ありったけの墨汁ぼくじゅうを買ってきた。


「今日の試合で使うボールを全部、別の色にめてやる!」


 それが終わったら、すべてのベースも染める予定だ。


次回は「北海道」のお話です。

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