この餃子、あるプロ野球チームのファン
この餃子、最大のピンチを迎えていた。
今まさに食べられようとしているのだが、そのこと自体は大した問題ではなかった。
自分は餃子だ。食べられて当然。
ここで問題なのは、食べようとしている相手だった。
プロ野球の投手だ。
で、こいつが所属しているのは、この餃子が応援しているのとは別のチーム、つまりは敵だ。
しかも、餃子が応援しているチームの選手たちは、こいつの球をほとんど打つことができずに、これまでの対戦では全敗している。まさに天敵だった。
餃子は心から嘆く。まさか、こんな奴に食われるなんて。拒否できるものなら拒否したい。
だが、すでに箸でつかまれている。奴の大きな口が、すぐそこまで迫ってきていた。
皿の上では他の餃子たちが、同情するように見上げている。彼らにはもう、どうすることもできない。
絶体絶命の餃子は、ここにきて最後の力をふりしぼる。
ぱくっとされた直後に、「渾身の一撃」を発射した。
熱々の肉汁だ。
餃子界に伝わる究極奥義、秘伝の威力を食らうがいい!
それで餃子は完全に力尽きた。
だが、渾身の一撃をまともに食らった投手も、箸を握ったままで悶絶していた。
しかし、餃子を吐き出すことはなかった。そのまま美味しくいただいたのである。
ところが、この餃子の一撃、思いがけない効果を生んだ。
翌日の試合だ。相手チームの投手は、ボコボコに打たれまくっていた。
昨日食べた餃子のせいで、口の中をヤケドしているのだ。それが影響して、球が走らない。コントロールも定まらなかった。
けれども、肩や肘の違和感ならともかく、「口の中に違和感があるから休ませて」とは、さすがに言えない。
すでに自軍ベンチでは、この試合を捨てるつもりのようだ。とにかく長く投げろと、投手コーチがジェスチャーしている。防御率は完全崩壊だ。
こうして名も無き餃子は、自分の応援しているチームを、歴史的大勝利に導いたのである。
めでたし、めでたし。
次回は「ベース」のお話です。




