入手困難なチケット
特別な野球の試合、その観戦ツアーを、ある旅行会社が企画した。
確保したチケットは、全部で二〇席分。よって、ツアーの定員は二〇人だ。
これに対して、現在までに一〇〇万人を超える申し込みがあった。抽選に当たる確率は、五万人に一人だ。
嬉しい悲鳴を上げる旅行会社。
販売担当の二人が、お昼休みに会話する。
「あの試合のチケットをもっとたくさん確保できれば、いいんですけどね」
「それは無理だよ。この数を確保するのも、めちゃくちゃ大変だったらしいし」
野球の歴史に燦然と輝く、七〇年前の名試合。その試合を、「最新のタイムマシンに乗って見にいく」というツアーだ。
もっとたくさんのチケットを確保できるといいのだけど、それをすると未来が変わってしまう。
今回用意したのは、「その試合中に誰も座っていなかった席」だ。チケットは入手したものの、何らかの理由によって球場に来ることができなかった、そんな人たちの席。これなら、他の人間が座っても未来は変わらない。該当するのは、二〇席しかなかったとか。
買いつけ専門の担当者が、何十回も過去に飛んで、チケットを持っている人たちと交渉し、そうやって確保してきた二〇枚だ。未来に与える影響に気をつけながら、慎重に買い集めてきたと聞いている。
本当に貴重なチケットなので、この機会を逃すと、次はないと思っていい。
旅行会社はかなり強気な価格設定をしていて、
「このチケット一枚で、七〇年前の国家予算と同額ですか」
当時と今とでは物価が違うとはいえ、ものすごい価格だ。
それでも、一〇〇万人を超える申し込みがあった。たぶん倍の価格にしても、余裕で完売しているだろう。
そんな事実を踏まえて、販売担当の二人は考える。
これと同様のことは、自分たちの時代でも当てはまるのでは? のちのち人気の出そうな野球の試合、そのチケットを今の内に確保しておけば・・・・・・。
二人はほとんど同時に、ニヤリと笑う。
現在の国家予算とまではいかなくても、結構な高値で買い取りたいと、未来の旅行会社が接触してくるかもしれない。
そうなったら、大もうけだ!
次回は「餃子」のお話です。




