雨の日だけのバイトだよ
俺はレインコートを着て、球場へと出かける。
雨の日だけのバイトがあるのだ。この球場では本日、プロ野球の試合が行われる。
球場の駐車場には、いつもの顔ぶれが集まっていた。そのほとんどが、俺と同じように、近所に住んでいる大学生たちだ。
このバイト、プロ野球の試合を無料で見ることができる。
しかし・・・・・・。
試合中、俺たちはうつ伏せの状態で、言葉を交わしていた。
「雨が強くなってきたな」
「天気予報によると、さらに激しくなるらしい」
「まじかよ」
この球場には普段、屋根がついていない。
なので、雨の日には、臨時の屋根を設置するのだ。
まず、屋根のあるべき場所に、格子状に鉄骨を組む。その見た目から、『鉄のワッフル』とも呼ばれている。
そうした『ワッフル』の上に、バイトの大学生たちが命綱をつけて、次々とうつ伏せになっていく。
特製の防水シートが全員に支給されていて、それを背中側に広げるのだ。手足を伸ばして、ピンと張る。
下からだと、『鉄のワッフル』の向こう側で、大きな凧に人間が「×」の形にくくりつけられている、そんな風にも見えるらしい。
これが屋根の代わりとなる。シートを風に飛ばされてはいけない。
あとは試合が終わるまで、この体勢を維持すればいいのだ。
「ぐほぉっ!」
たまに、特大のフライが飛んできて、運が悪いと、おなかとかに命中することもある。
「おいおい、口から黄色いヨーグルトが漏れてるぞ」
「・・・・・・す、すまん」
「気にしない、気にしない! 事故だよ、事故!」
「もう試合は五回、折り返し地点だ。残り半分も、みんなでがんばろう!」
「この試合が終わったら、何か温かい物でも食おうぜ!」
こうしてバイト仲間同士で、励まし合うことも多い。
なお、試合が延長戦に突入することもある。
その場合、本拠地チームが勝利しない限り、残業代は出ない。
次回は「FA宣言」のお話です。




