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月食②
彼女に連れられて来たのは、人気のない小さな丘だった。
「こんなとこで、ほんとに月なんて見えんのかよ。誰もいないじゃないか。」
「ふふっ。今日だけは陽が下向いててくれてよかったっておもうんだな。」
と言う彼女はうれしそうだった。
「はーい。とーちゃーく。」
着いたのは、おそらく丘の1番高いところ。
そこには、大きめのブルーシートが一枚ひいてあった。
「そこ、寝転んで。
あっ。だめ!目は閉じて。私がいいって言うまで、開けちゃダメなんだからねっ。」
まったく、目を閉じて寝転べなんて、無茶なことを言う。
「いーい?いち、にの、さんで目開けてね。
いち…にの…」
目を開けると、そこには真っ赤で大きな月があった。
本当に大きい。手を延ばしたら届きそうで…。
「きれい…」
思わずそうつぶやいていた。




