月食
あれ以来、彼女は僕の所へこなくなった。
うるさいのがいなくなって、せいせいする。
…けれど、やっぱり傷つけてしまったのだろうか。謝罪くらいした方がいいかな…。
ああ。もう。
これだから、人と関わるのは嫌なのだ。
今度あったら、謝罪だけしておこう。
…だめだ。僕は彼女の顔を覚えていない。
人に聞くのだけは避けたい…。
もやもやした気持ちのまま、1日を過ごす。
「いたっ…」
誰かにぶつかった。
なんだか、高校に入ってから他人とぶつかることが多い。
「すいません」
「あっ‼いたいた。」
なんだか聞いたことのある声だった。
「陽!こっち‼来て‼」
僕のことを陽と呼ぶのは、彼女しかいない。
彼女は、僕のことをぐいぐいひっぱる。
「ちょっと…。
どこに連れて行くつもり…」
着いた先は、倉庫のようだった。
「はい、これ持って。」
と、彼女は僕に一眼レフのカメラをもたせ、また僕を引っ張って行く。
「なぁ。一体どこに行くんだい?
僕はてっきり、君は落ち込んでいるものだとおもってたよ。」
彼女は何のことかわかっていないような顔をし、そしてそれから、ああ。と、合点が言ったかのような顔をする。
「たしかに、びっくりはしたけど、私はそれくらいで傷つくような女じゃないかな。」
「それで?どこにいくんだ?」
「陽、今日何の日か知らないの?月食見に行くんだよ。」
「なんで僕がっ…。」
反抗しようとしたが、彼女の瞳は真剣そのもので、僕には逆らうことなどできなかった。




