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神の悪戯  作者: 羽毛 330
第一章 ペン回しをし続けた男
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10話 さくの最期


 

 さくが自らを猿だと自覚してから、また20年が過ぎた。


 彼はその頃になるとペン回しをしている間に思考をすることをやめていた。


 ペン回しをしているときには、ペン回しをしているということだけを感じて、他は何も考えていなかった。


 常人にはとてもできない技だが、さくは50年にわたるペン回し生活により、そのような能力を取得していた。


 そのため、この20年は彼にとってそれほど長くは感じられなかった。


 彼の精神もいつになく安定した。


 彼は50年前から、1日に45000回ペン回しをすることを義務としていた。


 そうすれば、最初の計算より早い60年で使命を達成できるからであった。


 なので計算ではあと10年程でペン回し10億回を達成できるはずであった。


 しかし、誰かがあと何回で達成だと教えてくれるわけでもなかったので本当に無事使命を達成できるのかと、彼は不安に思っていた。


 ここまできて、やり方が間違っていたからやり直しなどと言われるのだけは避けたかった。


 しかし、神は50年間1度も訪ねてくれなかったのでそれを確かめる術もなかった。


 なので彼はただひたすらにペン回しをした。


 それが彼にできる唯一の事であったからだ。


 彼も65歳と高齢になっており体のあちこちにしわができていた。


 彼はまだ子供だった頃からその年齢になるまでずっとペン回しをし続けたのである。


 まさに彼はペン回しに人生を捧げていたのである。


 だが、そんなペン回しに捧げた彼の人生にも終わりが見え始めていた。







 そこからさらに20年の時が過ぎた。


 さくはとうとう85歳の老人になっていた。


 彼の計算では10年前にはペン回し10億回を達成したはずであったが実際達成したのかは分からなく、計算間違いが怖かったためその後もペン回しをし続けた。


 実を言うとペン回し以外に何をすればいいか分からなかったのも理由の一つである。


 ペン回しをし過ぎたがために、ペン回しをする以外の行動が出来ないように思えてしまったのだ。


 彼は本当によくペン回しをした。


 ペン回しという、暇つぶしのためのくだらない行為という印象が大きいペン回しに、彼は人類で初めて人生を捧げたのだ。


 勿論、彼も後悔していない訳ではなかった。


 あのとき、ペン回しに人生を捧げないという決断を下せば、何一つ不自由のない輝かしい人生になるはずだったのである。


 それを夢見た事も多くあった。


 だが、事実として彼はペン回しに人生を捧げた。


 国民の命のために、自身の人生を破滅させたのである。


 しかし、その事実を知る唯一の人物であったかにはもう既に自らの手によって命を落とした。


 さくの真実を知るものはさく本人のみなのである。


 さくは少し休憩をしたのち、またペン回しを始めた。


 いつものように。


 彼がしばらくペン回しをしていると、突然彼は胸に激痛を感じた。


 それは偶然な事に、ルンルとかにを殺した心臓発作であった。


 彼らと違ったのは、毒による人為発症ではなく、老化による自然発症であった点だ。


 彼もまた、薄れゆく視界の中で死を悟った。


 彼が最後に思い出したのは、彼に使命を言い渡したあの神のことであった。


 全ての元凶は彼が与えた使命であった。


 さくはその神を恨んでいたが、結局あの日以来会うことはなく、彼があのような使命を与えた理由も分からないままであった。


「…もっと違った人生を、歩んでみたかった……」


 それだけ言い残すとさくは静かに息を引き取った。


 彼はその生涯において累計で11億回もペン回しをしており、使命を達成していた。


 彼は国民を救ったのである。


 こうして、幾十万の命を救った英雄は、その功績を誰にも知られる事なく、静かにその命を落とした。


 こうして、ペンを回し続けた男の人生も幕を閉じたのであった。



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