転校生の場合 3
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彼方は今、名門星之山学院の校門前に立っている。
早朝に由羅の家を出たのも関わらず、今は夕日でさえ沈もうをしていた。それも、星高が彼方の地元以上の田舎にあったからである。
彼方の到着を待ち侘びている、どこにでもいそうな、人の良さそうな、ふっくらとした男性を見て、彼も能力者、もしくはその関係者なのだろうかと、彼方はゾクリと震えた。
「碧彼方くんさね⁉︎待ってたさ!僕は寮監督の小野田さ!今日はまず、入寮手続きをしようかさ。ついておいでさね」
小野田はニコニコ笑って歩き始めた。
「すみません。朝から新入生の相手して疲れていらっしゃいますよね」
「いやいや、全然元気さ。新入生は碧君の一人だけさね」
「え、そうなんですか⁉︎」
「そうさね。月之山の生徒は、ほぼ全員小学2年でここに来てるさ。イトスニ、能力者にしかない物質さね、それが6から7歳で落ち着くさね。その時に能力テストを受けて、入学者が決まる事が程んどさ」
つまり、彼方以外は全員お互いを知っている事である。細かい事を気にしない彼方であるが、これからの高校生活を想像して、不安で眉をひそめた。
「心配はいらないさね。2年前に中等部2年に転入生が来たさね。丁度、碧くんの同級生さ。みんな経験してるから、すぐに馴染めるさ」
異様に「さ」をつけてしゃべる小野田は、心許ないフォローをした。
「碧君の住む事になっている寮も、いい子ばかりさ。ついておいでさ」
そうやってだどりついたのは水色の一軒家だった。寝室は十つで、リビングとキッチン、浴場、トイレがそれそれ一つずつ。ペンションのような作りである。
食事は毎日用意されているため、キッチンが使われる事はほとんどないが、自炊を好む生徒がいるらしい。
そのペンションのリビングには5人の生徒がいた。
ハウスメイトである生徒達は、彼方に興味津々である。彼方の地元や、能力について聞きたがった。能力が分からないと言えば、残念とも、失望とも言える表情を見せた。
「入浴だけど、基本、空いてる時に使うわ。申し訳なけど、碧くんは最後でもいいかしら?みんな9時までにま終えてるから」
「ええ。大丈夫ですよ」
眼鏡をかけた気の強そうな女子生徒、門可飛鳥が目を細めて言った。彼方は悪くなった空気を気にせずにっこり笑った。
「ところで、地元の牧場の搾りたて新鮮な牛乳を使用したチーズケーキを持ってきたんです。よろしければ、どうですか?」
「まぁ!嬉しい!」
目を輝かせたのは、今まで会話に興味を示さなかった、モデル体型の寺田楓だった。
「楓は料理の好きだものね」
「デザートは基本作らないけど、食べるのは大好き」
寺田は自炊が好きでよく料理を振る舞っているそうだ。
ずっとニコニコ聞笑っていた牡丹陽葵は身長が低いものの、ボンキュウボンの魅力的な体型をしていた。彼女から甘い香りがした。香水というよりはもっと自然で、身近な匂いである。彼女は進んで、キッチンからお皿やフォークを用意してみんなに配った。
「あー、うちはいいわ。甘いもんは好きじゃない」
ショートヘアの高田光は眉をひそめケーキを見た。
「燈はいる?」
「は、はい!ほ、欲しいです!」
おどおどして、動きが落ち着かない渡部燈は、チラチラ伺うように彼方を見る。目が合った瞬間目を逸らす事の繰り返し。
「もちろん。どうぞ」
彼方がそう言えば、渡部はほっとして微笑んだ。なかなか可愛らしい笑顔である。
ホールのケーキは最後の一切れを残して、5人の女子高校生の腹に収まった。最後の一切れはもう一人のハウスメイトに残しとくのだという。
門可は表情を緩めて、美味しそうにケーキを頬張った。
牡丹はニコニコと表情を変えずに、黙々とケーキを口に運んだ。
寺田はその細い体のどこに入っているのか不思議なくらい、5つのケーキをペロリと食べて、彼方を驚かせた。
渡部は一個のケーキをすぐに食べ終え、チラチラ彼方とケーキを見ていると、彼方がどーぞと言って、合計3つのケーキを腹に収めた。
彼方の地元のチーズケーキは好評のようだった。
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