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第七話 戦いの終わり、そして

レインは剣を天高く掲げ、全身から溢れる魔力を一点に集中させた。


形態(モード)!剣聖!」


その叫びと共に天から降り注いだ青白い光がレインを包み込み、彼の姿は次第に変貌していく。

その肉体は魔力の波動に満ち、剣先から放たれるオーラは空気を震わせた。


まるで剣そのものが意思を持ったように、輝く刃が一層凶悪な光を放つ。


一方、ガイルはその異様な光景に苛立ちを募らせていた。


「なんだ、その姿は!?お前ごときが神器の力に抗えると思うな!」


彼は自らの神器――金色に輝く盾に膨大な魔力を注ぎ込む。盾は雷のような音を立て、ガイルの全身を金色の光で包んでいく。その光景は、まるで人間離れした何かに変貌していく様子を示していた。


「お前に、この力を超えられるはずがない!」


ガイルが狂気じみた叫び声をあげる。


「喰らえ!ガイル!これで終わりだ!」


レインは渾身の力で剣を振り下ろした。その一撃は、大型の魔獣ですら一刀両断するほどの威力を秘めていた。剣先から放たれた青白い閃光が空間を裂き、ガイルに迫る。


「俺が負けるものかぁぁ!」


ガイルも盾を前に突き出し、全身の魔力を解放する。金色の光が渦を巻きながら剣に対抗する。


二つの光がぶつかり合った瞬間、辺り一帯が青と金の激しい閃光に包まれた。轟音が響き、地面が揺れる。その余波は、まるで世界そのものを揺さぶるかのようだった。


光が収まった時、リーナとセリナは恐る恐る目を開けた。そこには、剣をガイルの胸に突き刺したまま立ち尽くすレインの姿があった。


「レイン!」


リーナが叫ぶ。

ガイルは胸から血を吹き出し、膝を突いた。それでも彼の目はまだ狂気を宿している。


「…お前の負けだ…」


レインは疲れ切った声で呟き、剣をゆっくりと引き抜いた。そして膝をつき、荒い息を繰り返す。


「俺たちが…いや、俺が、お前を見殺しにしたせいで…こんなことになっちまったんだ…」


レインの声は震えていた。


「俺が…お前を変えてしまった…。俺のせいだ…すまない…」


レインは深々と頭を下げた。


「違う…」


ガイルは血を吐きながらも、苦しげに口を開く。


「俺は最初から…お前たちが嫌いだった…。追放は…きっかけに過ぎない…」


レインが何か言おうとした瞬間、ガイルは薄く笑みを浮かべた。


「でも…やり直すのも悪くないな。」


その言葉にレインが顔を上げた次の瞬間――


「お前たちを殺してからな!」


ガイルが盾を掴み、力を振り絞ってレインに襲い掛かった。


「くっ!」


咄嗟に剣を持ち直し、レインはガードしたが、至近距離で放たれる見えない衝撃波に押され、体が軋む。


「はぁはぁ…痛いだろう!これを至近距離で受けたら、どれほど辛いか…知っているか!?」


ガイルが嗤う。

神器の力で再生し続ける肉体と、盾から放たれる無形の攻撃――その二重の脅威に、レインは追い詰められていった。


「形態が…切れる…!」


レインの心の中に焦りが生じた。その時、突然風を切る音が響いた。

ガイルの身体が一瞬硬直する。その額から一本の矢が突き刺さり、金色の光が揺らめいた。


「ミカ!」


レインが叫ぶと、雑木林の中からミカが姿を現した。


「今だ!全員、火元素魔法を放って!」


ミカの声が響き渡り、リーナやセリナも即座に反応した。


「ガイル!もうやめて!」


リーナが涙声で叫ぶ。


セリナとリーナ、さらにはミカの矢に支援され、ガイルの身体は次々と放たれる火魔法に包まれた。


「あ”あ”ぁ…死”ぬ…」

「死にたくない…皆ぁ、助け…」


神器の力で再生し続けていた彼の体も、再生が追いつかなくなり、やがてその姿は燃え尽き、塵と化した。


燃え尽きたガイルの姿を見て、レインは崩れるように膝をついた。


「これで…終わったのか…?」


「ええ…終わったわ、レイン。」


セリナが疲れた表情で答え、彼の肩を支えた。


「でも…この傷跡は消えないわ…」


リーナが呟き、全員が沈黙の中で空を見上げた。


彼らの戦いは終わった。しかし、それが本当の意味での終わりなのかは、誰も答えることができなかった。



―――。



戦いを終えた蒼銀の翼のメンバーたちは、一人の少女を抱えてオノクスへ帰還した。


ガイルとその仲間たちはオノクスの街ではかなり有名な冒険者パーティーだったらしく、よそ者である蒼銀の翼の一行がガイルの仲間の一人を抱えて帰還したことで街は大騒ぎになった。


パーティーリーダーであるレインが、街の住民に自分が彼にやってしまったこと、そしてその因縁を消し去るためにガイルを殺したことを正直に話すと、それに激高した住民たちによってレインはリンチに遭う羽目になった。



オノクスの住民にとってガイルは救世主だった。

数か月前まで廃街同然だったこの街を救ってくれたのが、ガイルとその一行だったからだ。


ガイルがこの街をわざわざ救った真意はすでに分からないものの、それでも彼はこの街の『勇者』だったのだ――。



それから二日あまりの時が経った。


戦いの傷が癒えない中、馬車を走らせレインは自分が生まれ育った街、カーヴァインに帰還した。

一人の少女を抱えて。


レインたちは、旅の疲れで眠る少女を宿で寝かせ、ガイルの遺品を持って”ある場所”へと向かう。

そこは魔獣蔓延る薄暗い森、常に魔獣の咆哮が止まないその場所は、いつの日か、レインがガイルを追放した場所――二人の因縁が生まれた場所だ。


蒼銀の翼の一行はその森の一画に穴を掘り、そこに神器とガイルが装備していた鎧を無造作に埋めた。

最後でミカだけはめんどくさそうに作業を行っていたが、黙々と穴を振り続ける3人の姿勢を見て、少し背筋を伸ばした。



―――。



4人は、ガイルの墓の前で並び立つ。

各々がガイルと過ごした日々を思い出そうとするが、何も思い出せない。しかし記憶が無くなった訳ではない。


彼らは仲間だったガイルのことを何も知らなかった――。

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