54.皇帝陛下からの褒賞、の巻
帝都につくと、正門でドレイク子爵とジョセフ男爵が出迎えてくれた。
「ドレイク殿、この度は子爵への陞爵、おめでとうございます」
「ありがとうございます。タイラー伯爵がすばらしい成果を出してくださったので、手配した私も過分な評価をいただきました」
「いえいえ、ドレイク殿のご自身の力量と成果が、正当に評価されたんですよ。ジョセフ殿、丁寧なダムの報告ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ適切なアドバイスをいただき感謝しております」
ひとしきり会話を交わした後で、ドレイク子爵の案内で宮廷の中へと案内された。
「2日後に褒賞授与の式典が執り行われます。それまで宮廷内の客室にお泊まり下さい」
宮廷の部屋は、どんな宿泊施設とも比較にならない豪奢さだった。
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豪奢な夕食を終えた後、3人は、宮廷のバルコニーで腹ごなしに散策しながら料理の感想を言い合った。
「いや~すごい夕食でしたね」
「ワイン赤も白美味しかったな~・・・ただ、ちょっとだけビール飲みたいと思ったよ」
「ユウリ様もですか・・・俺もです。宮廷の肉料理も最高の味でしたが、皆で食べたハンバーグには及ばない」
「サイラスは、本当にハンバーグ好きだよね。まあ慣れない宮廷で緊張してたのもあるのかな?」
「ターキーの丸焼きも見事な味付けでしたね。揚げたてのからあげと甲乙つけがたいくらい・・・」
3人で他愛のない話をしているところに近づく人影があった。
「よう・・・坊主、また会ったな」
それは以前舞踏会であった壮年の貴族だった。
「お久しぶりです。舞踏会の夜にお会いして以来ですね」
ユウリは、笑顔で挨拶をした。
傍らのアレンとサイラスは、なぜか分からないが一歩下がった。
「今話してた料理や酒は、坊主の領地に行けば味わえるのか?」
「ハンバーグとからあげは、材料さえあれば私が作れますので、ご要望とあればいつでも食べていただけますよ。ビールは、魔導冷蔵庫とセットで販売しておりますのでご注文をいただくようになります」
「ほう、ビールとやらはわざわざ魔道具で冷やして飲むのか・・美味いのか?」
「冷やしたビールは夏の暑い夜に飲むと最高ですよ」
「それと、、卿は料理をするのか?貴族の当主にしては珍しいな」
「私の子供のころは領地も豊かではありませんでしたので、たいていのことは自分でやっておりました。その癖が今でも残っております。この間も私の作った料理を、料理の主要メンバーに食べてもらったんですよ」
「……卿たち、面白い主を持ったな」
アレンとサイラスは、男に視線を向けられただけで、なぜか分からないが背筋が伸びた。
「じゃあ、またな。酒は近いうちに発注するので頼む。料理は機会があったら作ってくれ」
男はそう言うと、手をあげて去っていった。
「はぁー・・・・きっと名のある大貴族ですね。威に打たれるというのは、ああいうことなんだと初めて知りましたよ」
壮年の貴族が去った後、ため息をつきながらアレンが言った。
「……」
サイラスは、何も言わず男の去っていった方向を見つめていた。
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2日後、褒賞授与のため玉座の間の前室に案内された。
前室も十分に豪華なつくりで、3人は緊張しっぱなしだった。
式典が始まり扉が静かに開かれた。
ユウリたちは、宮廷書記官から教わった通りに、謁見の間を進み、玉座から離れた位置で膝をついた。
「タイラー伯爵一行、もうすこし余の近くに・・・」
玉座からの威厳ある声が、かけられユウリは立ち上がり前に進んだ。
玉座におわすザルツヴェーデ帝国皇帝の顔がはっきり見える位置まで来た時、3人は目を見張った。
玉座に腰掛けていたのは、バルコニーで2度会った壮年の貴族だった。
(・・・なるほど、そういうことか。どうりで力量が測れないはずだ)
バルコニーで相対したとき、全く相手の力量が分からなかったのも、帝国史上でも英明と名高い、オットー・フランツ・フォン・ラヴァン皇帝ともなれば当然と思った。
「ユウリ・フォン・タイラー伯爵、帝都治安維持機構の指南、および水資源確保に関わる設計、建設指揮、さらにその設備による帝都水不足の解消に伴う功績に対し、褒賞を与える」
皇帝の声が響き、謁見の間は静寂が支配した。
「一つ、ザルツヴェーデ帝国、侯爵の爵位を授ける」
伯爵から、侯爵への陞爵は隣国と戦争をしていた時代から実に200年ぶりのことだったため、謁見の間の臣下たちはどよめいた。
「二つ、タイラー領の東に位置する、帝国直轄領をタイラー侯爵に授ける」
謁見の間のどよめきは、さらに大きくなった。
(帝国直轄領……隣国に接するあの未開の土地か)
自領に隣接しているためユウリも多少の知識はあった。
広大ではあるものの未開の地だが、隣国と国境を接するため防衛上重要な土地でもある。
誰もが旨味の少ないわりに、厄介ごとの多い土地との認識がある。
玉座に控える貴族たちも、これは褒賞なのかとざわめいていた。
そんな中、オットー皇帝はいたずらっぽく笑いながら続けた。
「坊主なら、あの土地も何とかしそうだと思ってな。未開ということは何が眠っているは余にも分からん・・・坊主に任せたいのだが、どうだ?」
ユウリは、アレンとサイラスへ視線を向けたのち
「――褒賞、頂戴いたします」
と答えた。
「うむ、それと厄介な土地を任せる代わりに、坊主の領の税は5年間半額にしてやる。その分開発に専念してくれ。あと国境の警備も5年間は今のまま直轄軍が管理するからな。しっかり開発して、5年後にはたんまり税を納められるよう頑張るように」
(さすが英名と名高い皇帝陛下だ・・・アメと鞭の使い方がうまいな~)
「……ご配慮、感謝いたします。5年後、ご恩に報いられるよう精進いたします」
ユウリは、もう一度深く頭を下げた。
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その夜、ユウリは、随分と久しぶりに夢の中にいた。
銀髪の女神が、腕を組んで満足そうな笑みを浮かべている。
「よぉ、75点男・・・侯爵になったのね~」
「お久しぶりです。ええ、いただいたスキルのおかげですよ」
「それにしても厄介な土地を押し付けられたわね~・・・」
「皇帝陛下、さすがに人を使うのが上手いんですよ。それに全然力量が測れないし・・・」
「ああ、そりゃそうかもね・・・ザルツヴェーデ帝国の皇室には何人か転生者の血が入ってるからね~。大賢者とか剣聖とか・・・だからあんたの75点の眼力じゃあ見切れないのも当たり前よ♪」
「あ~、そうなんですね・・・さすが皇帝陛下、スケールが違う」
「まあ、あんたは出来ることをやりなさい・・・で、今のところあんたのスキル自分でどう評価してる?」
「小領主には得難いスキルだと思います。これから領地の規模が大きくなってどうなるかは分かりませんが・・・少なくとも俺にとってはいいスキルですよ」
「やっぱり、あんたにそのスキルが当たったのは正解ね!!スキルの検証今後もよろしくね♪」
女神はウインクをよこしながら、光の中へと消えていった。
――目を覚ましたユウリは、しばらく天井を見つめていた・・・自然と笑いがこみあげてくる。
「楽しませろ・・・か。女神さまのご所望なら、頑張るしかないね」
ユウリは、まだ見ぬ新たな領地に思いをはせながら呟いた。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。
とりあえず第一部終了です。引き続きよろしくお願いいたします。




