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50.3基のダムとハザードマップ、の巻

「やれやれ、またしばらくビール・ソーセージとお別れかよ……」

 帝都へと向かう馬車の中でザイードが、肩を落としてぼやいていた。

「おっ、そんなにソーセージが気に入ったか?うれしいね~」

「ユウリの旦那も罪なものを作ったよな~・・・あれとビールの組み合わせは最高だ」

「そんなに気に入ったくれてうれしいけど、ビールに合う料理はまだまだあるぞ……次は唐揚げ作ってみよかな~?」

「唐揚げ? それはなんだ? ソーセージより旨いのか?」

「鶏肉に下味と衣をつけて油で揚げるんだ・・・揚げたては最高にうまいぞ~!!そろそろ、直営の食堂にも新しい看板メニューが欲しいと言われてるし……帰ったらメニュー開発するかな。ザイード試食よろしくな!」

「おっし、楽しみもできたし護衛、頑張るぜ!・・・しかし、ユウリの旦那も人の使い方がうまくなったな~」

 ザイードは、そう言うと豪快に笑った。


 ________________________________________


 帝都へ着くと、ドレイク男爵が明るい表情で出迎えてくれた。

「タイラー伯爵お待ちしておりました。2基目のダムはすでに完成し、3基目の建設も順調に進んでおります」

「すごいスピードですね。ホーグさんとドーソン親方すごいな~」

「それと1基目のダムはすでに稼働しているのですが、帝都の水事情に改善の兆候がすでに見られています。乾季の市中の水量も、昨年にくらべればそこまでひっ迫しておりません。全てのダムが稼働した暁にはどこまで改善できるのか楽しみです」

「それは心強い報告ですね!」

「これまでのところ、ダムの建設によって生じた悪影響の報告は、一切上がっておりません。下流の水量の変化による生態系への影響や、周辺の地盤への負担もなさそうです」

「とりあえずは一安心といったところですね。引き続き、2基目、3基目の稼働後の様子も注意深く見ていきましょう」

 ドレイク男爵の報告後、ユウリは早速現場へ足を運ぶことにした。

 2基目のダムは1基目のダムより規模が大きい分、更に頑健なつくりとなっている。

 出来栄えも申し分なく、すぐに3基目の工事現場へと向かった

 3基目のダムの規模は、完成した2基とは比較にならないほど大きかった。

 崖の斜面に幾人もの魔法使いたちが、並び立ち一斉に詠唱をすると、地面が大きくうねり、みるみるうちに谷の斜面が掘り下げられ、基礎となる窪みが形成される。

 その形成された基礎に熟練の石工たちが、巨大な石材を次々と運び積み上げて、固定していく。

 石が積み上がったところで、魔法使いたちが積み上げられた石の隙間や継ぎ目を土魔法で補強していた。

 掘削・石積み・補強――3つの工程が流れとして繰り返されていくことで、まるで早送りの映像を見せられているような作業風景だった。

「おーう!タイラー伯爵!! どうだ、すげえ光景だろう?この規模の建築はそうそうお目にかかれるもんじゃないぞ。もしかしたら歴史に残っちまうかもな~」

「それならドーソン親方も歴に名を残すことになりますね」

「俺よりも、残るなら伯爵の名前だろうよ・・・大したもんだ」

 ドーソンは、そう言いながら誇らしげに巨大な建築現場を見渡した。

「伯爵が不在の間、ドーソン殿と色々話し合って随分工期が短縮したんですぞ」

「ホーグさん、まるで生き物が動いているようにスムーズな建築ですね。それなのにしっかりと出来上がっている・・・さすがです」

「なーに、早さだけでは意味がありませんからな。その辺はワシもドーソン殿も心得ております」

(これなら安心して任せられそうだ・・・さすがスペシャリストは違うな)


 ________________________________________


「タイラー伯爵、有事の際のマニュアルを作成いたしましたのでご確認いただけますか?」

 現場の視察を終えたところで、ダム管理責任者のジョセフ男爵が声をかけてきた。

 水位の目安・水門の開閉手順・緊急時の連絡系統――それぞれが体系立てて書き記されている。

「よくできてますね・・・ただ、これにもう一つ加えたいものがあります」

「加えたいものですか?」

「ええ、このマニュアルは非常によくできていますがあくまで有事が起きた際のものです。加えて欲しいのは有事が起きた際にどの地域にどの程度の被害が及ぶ可能性があるかを示した地図です」

 ユウリは、地図の上に迂回水路一帯を色分けして塗っていった。

「あくまで例ですが、緑が安全・黄色がやや危険・赤が危険といった具合です。これがあれば緊急放水が必要になった時、どこに注意を払うべきかすぐに分かります。それに、平時からこの地図を住民にも周知しておけば、いざという時指示しやすいでしょう」

「なるほど……さすが、タイラー伯爵。さっそく1基目・2基目のダムでも同様の地図を作成いたします」

「ありがとうございます。3基目が完成する頃には全てで統一したマニュアルとこの地図・・・ハザードマップが揃えるのが理想的ですね」

「承知いたしました・・・ハザードマップとはこの地図の呼び名ですか?」

「ええ・・・呼び名があったほうがいいでしょう?」

(つい、前世の呼び方で言っちゃったか・・・まあ呼び名はあったほうが便利なのはたしかだよね)

 

 こうして3基のダムでの統一マニュアルとハザードマップを作製することが決まった。


拙い文章、読んでいただきありがとうございます。


多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。

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