49.腕利きの錬金術師来る、の巻
「腕利きの錬金術師に心当たりがあるとは言ったものの……なかなか骨が折れましたよ」
イグナーツの話によれば魔術の師匠の伝手を使い、腕利きの錬金術師を探したものの本人にたどり着くまで、かなりの仲介が必要だったようだ。
しかも、目当ての人物は引く手数多の忙しい身、立ち上げたばかりの工房に来てもらうよう依頼するために現在の研究の概要を送るなど、かなりの手間がかかった。
「幸いなことにリン殿の理論にかなり興味をもったらしく、来ていただけることになりました」
「ありがとう、イグナーツ。これで研究が前に進むよ」
「いえ……魔法で行き詰っていた私に、新しい可能性を示してくださった恩返しですよ」
いつもポーカーフェイスなイグナーツにしては珍しく、照れ臭そうに笑った。
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こうしてイグナーツの苦労の甲斐あって招聘されることになった、腕利きの錬金術師はヴァーツラフ・ノヴァークという名前の壮年の男性だった。
「初めまして、ノヴァークさん。領主のユウリ・フォン・タイラー伯爵です。この度は招聘に応じていただき、ありがとうございます」
ユウリの挨拶にノヴァークも丁寧に頭を下げたが、挨拶もそこそこに――
「こちらこそ宜しくお願い致します――で、さっそく例の理論の詳細を伺いたいのですが!!」
「こちらがエーテルライト理論の発案者の錬金術師のリンです。リン、ノヴァークさんに理論の詳細してくれるかな」
(ちょっとマッドサイエンティスト入ってるな・・・)
「あ……こちらです」
「見せていただく、それと伯爵、私のことは呼び捨てでけっこうです」
リンが差し出した理論書をノヴァークは、受け取ると、すぐに読み出しだ。
「なるほど・・・これは興味深い。我ら錬金術師の究極の目標たる賢者の石、不死と黄金をもたらす万能の触媒と言われていますが、錬成に成功したものはおりません。この理論はあえて希少金属の触媒という点に絞って実現しようとしているところが、非常に独創的でかつ現実的です・・・面白い!!」
「そう言っていただけると……!」
「ただし、この理論を実際の形にするのは非常に難しいと思います。正直私が今まで取り組んだどの錬成よりも難問でしょうな・・・」
「・・・だからこそ取り組む価値があるのでは?」
「伯爵はよく錬金術の習性をご存じで・・・これほどの難解な問題に取り組める機会は、そうそうありませんからな。よろこんで取り組ませていただきます!」
こうしてリンとノヴァークは、共同でエーテライトの研究をすることになった。
(理論はリンが得意で、錬成はノヴァークのほうが得意・・・どちらもそれぞれの分野で俺よりは上だからいいコンビになりそうだな)
「伯爵、前もって言っておきますが限定的とはいえこの研究は、錬金術の究極の目標である賢者の石の力を再現しようという試みです。エーテルライトの完成まではかなりの時間を要する思います。その点についてはご了承いただけますでしょうか?」
「すぐに結果が出る様な簡単なことではないのは分かってますよ」
「……そう、言っていただけると心強い!」
「ただ、錬金術工房を維持するにもそれなりの資金が必要になりますので、出来れば財源になりそうな研究も並行してもらえれば助かります」
「それは確かに……そういえば最近こちらの領地で魔導冷蔵庫なるものを販売されているとお聞きしておりますが、そちらの冷却ユニットのコスト削減などはいかがかな?」
「おおー!それはありがたいですね。いま受注が止まらない状態ですので」
「おそらく私とリン殿で再精査すれば、簡略化と効率化出来るのではないかと思います。多分コストは半分程度に出来ると思いますよ。本命の研究の合間に進めますよ」
腕利きの錬金術師は力強く請け負った
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それから2ヶ月後、錬金術工房は、リンとノヴァークにより研究を着実に前進させているようだった。
「エーテルライトの力を細分化してオリハルコン精製専用、ヒヒイロカネ精製専用などとしたほうが、実現が早いのではないかと、リン殿と話し合ってるところです」
「そのあたりは、任せるよ。ノヴァークとリンの思うようにやってくれ」
「伯爵の元だと研究がやりやすくて助かるよ。あと魔導冷蔵庫の冷却ユニットだが、簡略化と効率化に成功したよ。コスト75%カットといったところか・・・」
「おおっ!!すごいな~、あれは俺が作ったんだけど、無駄がかなりあったんだな~」
「伯爵の設計は十分なものでしたよ。私とリン殿だからこそできた簡略化と効率化だとおもっていただければ」
「これで当分、錬金術工房の経費は賄えるよ。ありがとう」
「なーに、我々の研究の為でもあるんです」
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そんな折に帝都から2基目のダムが完成したので確認をしてもらいたいという内容の手紙が届いた。
「もう2基目が完成か~、早いな。ザイード悪いけどまた帝都へ同行頼むよ」
「おう!訓練所で衛兵たちを一通り訓練してやったのでいつでもいいぞ!!」」
ザイードは訓練所で、一度に10人相手に訓練を付けていたようだ。
結局、ザイードに一太刀入れた衛兵は、いなかった。
「またしばらく留守にするけど、アレン・サイラス頼むよ」
「ご安心ください。ユウリ様は帝都での事業に専念下さい」
「財政的にも、魔導冷蔵庫の改良のおかげで当分右肩上がりが続きそうですのでご安心を」
こうしてユウリは、再びザイードを伴い帝都へと向かうことになった。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
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