45.貯水施設その名は“ダム”、の巻
タイラー領からドーソン親方が、帝都に到着した。
「ユウリ様のおかげで帝都まで来ることになるとはね~」
帝都の街並みを見回すドーソンを、さっそく帝都の技術者たちに引き合わせることにした。
「これまで俺が設計した図面を形にしてくれている、タイラー領のドーソン親方です」
「お初にお目にかかります。帝都で設計士をやっております、ヴィクター・ホーグと申します」
ドーソン親方と帝都側の施工責任者は、最初互いに遠慮した様子を見せていたが、技術的なことを話し始めると、すぐに打ち解けていった。
「伯爵の設計した堰の傾斜ですが、あれは水の勢いを集中させない工夫ですな?」
「そうなんですよ、ああするだけで堰にかかる負担が随分減るみたいなんですよ。実際数年前に造った堰も簡単な補修だけで済んでるくらいですから」
「なるほど、興味深い……帝都では、大規模工事の工期短縮に土魔法を使う工法が開発されましてな・・・」
「土魔法で工期短縮ですと?今回の工事で活躍しそうですな!!」
「地盤の掘削・盛土を土魔法で進めるんです。人力だけなら何ヶ月もかかる作業を大幅に、短縮できますぞ」
専門家同士の談義は果てしなく続きそうだった。
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「なるべく早めに着工いただけると、ありがたいのですが」
ドレイク男爵から要望があり、着工は一週間後となった。
着工が始まるにあたり、ユウリは1つの提案をした。
「できれば貯水施設の管理を担当する責任者の方に着工から立ち会っていただきたいのですが、いかがでしょうか?」
「それはどういった意図がおありで?」
「貯水施設の構造から理解しておくことで、有事の際に適切な行動がとれると思うんです」
「ふむ、なるほど……承知しました。では着任する予定のハイド男爵に来るように伝えましょう。年は若いのですが帝都東区の治安維持責任者として実績のある方です。衛兵隊でも将来を嘱望されていたのですが、本人の志願で治水事業の管理責任を担当してもらうことになりました」
「へえ~、志願されるとは熱意のある方なんですね。あと貯水施設の名称ですが“ダム”と呼称していただけますか?」
「はて・・・どういった意味があるのですか?」
「本で読んだ異国の貯水施設を表す言葉です。短いですし意味を知らないものにはなんのことか理解できないのでいいんじゃないかと・・・」
「確かに、私の方で許可を取っておきます・・・では!」
こうして貯水施設の名称は、“ダム”に決まった。
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「この度“ダム”の管理責任者を拝命いたしました、ジョセフ・フォン・ハイドと申します。よろしく、お願いいたします!」
管理者として志願したハイド男爵は、20歳くらいの真面目そうな青年だった。
「帝都の治安維持改革は、タイラー伯爵のご提案があればこそ実行することができました。あの改革のおかげでどれほどの衛兵が働きやすくなったことか・・・誠にありがとうございました」
「いえいえい、お役に立てた様で何よりです。ダムの管理よろしくお願いいたします」
「着工からしっかり見届けさせていただきます」
未来のダムの管理者は、最敬礼で答えた。
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こうして一箇所目のダムの建設が始まった。
土魔法を用いた工期短縮の工法により当初の予定よりも、はるかに早く完成する見通しだ。
ユウリは工事の進捗状況を確認する合間を縫って、タイラー領の留守を任せている部下たちにお土産を選ぶため帝都の街へと繰り出した。
「アレンには実用的なナイフがいいかな・・・・サイラスはお茶好きだから珍しい茶葉を・・・・ミアには帝都の宝飾細工がいいかな?・・・リディアは珍しい酒がいいだろう・・・イグナーツは専門書かな~・・・そうだラドフォードにも何かって帰ろう・・・」
ザイードは、あれこれ土産を選んでいるユウリの様子を面白そうに眺めていた。
「旦那もこまめだな~、仕事で来てるんだから土産なんてなくてもいいだろうに・・・」
「いやー、領のこと任せっきりだからね~・・・せめてものお礼ってことで」
無事土産も選び終え、宿に帰る途中鍛冶工房の前で騒ぎを聞きつけた。
「頼む! 資金を出してくれんか!」
「うるさい、帰れ帰れ!そんな怪しい話に乗る気はない!」
工房の主人らしき男が、異国の衣装に身を纏った胡散臭い風体の男を追い払っていた。
「新しい素材の開発資金だと言ってるだろう! これが成功すればこの工房は帝都一の工房になれるぞ」
「錬金術師のたわ言なぞ聞く暇はない!」
錬金術師と言われた男は、けんもほろろに追い払われ、とぼとぼと歩き始めた。
その時、その男の目がユウリをとらえた。
「おお……! そこの、あなた!只者ではないとお見受けする!」
男は、目を輝かせながらユウリの方へと詰め寄ってきた。
「耳寄りな話がありましてな……!」
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
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