44再び帝都へ、の巻
タイラー領主館の執務室で、領運営の各責任者が集まった。
「というわけで、帝都に行くことになった。今回は長期になりそうなのでアレンとサイラスに留守の間、領の運営を任せる」
「承知しました」
「各責任者は、それぞれ領にとって最善と思う行動をとって欲しい。迷った場合は必ずアレンかサイラスに相談して欲しい。2人は迷ったら合議してくれ、2人の判断は俺の判断と思ってくれていい・・・なーに、何かあったら責任は俺がとるから大丈夫さ」
「ユウリ様の責任になるから困るんですよ・・・しかし最善を尽くします」
「治安維持については、ご安心ください・・・それで護衛は、どうします?」
アレンがユウリにそういった瞬間に声が上がった。
「坊や、俺が護衛としてついて行ってやるよ」
「おお、ザイード殿が同行してくださるのなら安心ですよ・・・ただユウリ様のことを人前で坊やと呼ばないでくださいね」
「気を付けるよ・・・それにしても、久しぶりの帝都楽しみだな」
ザイードは豪快に笑いながら言った。
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今回は長期に領を開けることになる為、ユウリは領内を任せる人々を個別に訪ねた。
最初に直轄工房のミアを訪ねた。
「ミア、帝都に行かないといけなくなったので、しばらく領を開けることになったんだ。工房のことよろしく頼むよ」
「お任せください。新しい合金の研究をしているところですのでご不在の間に頑張って進めておきます」
「おっ、頼もしいな。ただ、無理はしないでくれよ」
「大丈夫です。あ、・・・・・もし帝都で何か珍しい素材があれば入手してもらえませんか?」
「珍しい素材?というとどんなのが必要なのかな?」
「この辺りでは流通しないモンスターの素材とかがあれば・・・あとはユウリ様の感覚にお任せしますので、よろしくお願いいたします」
「ははは、それは責任重大だな。気にかけて見るようにするよ」
ミアは笑顔で一礼し、作業へと戻っていった。
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次に直轄醸造所に向かった。
「リディア、しばらく領をあけるけどよろしくね!
「帝都へ行くそうね・・・・華の帝都なら珍しいお酒もたくさんあるわよ。機会があったらしっかりと味見してきなさいな」
「いいのがあったら、土産にかってくるから」
「ふふ、楽しみにしてるわ。酒造の方は任せてね。委託栽培も至って順調だし、ワインはすぐ飲めるタイプとしっかり寝かせるタイプを作るようにしておくわね」
「頼りにしてるよ」
「もう少しで専用の麦とホップがこちらに来そうなのよね~待ちきれない!!ユウリ様が帰ってきたら最高のビール飲めるようにしておくわよ」
「それは楽しみ・・・ワインなんですぐ飲めるタイプと寝かせるタイプ両方作るんだい?」
「だって・・・人間の寿命って短いんですもの。こんないい環境用意してくれたユウリ様にはすこしでも多くわたしの造ったお酒を飲んでもらいたいのよ♡」
「気を使ってくれてありがとう。リディアの造ったワインをたくさん楽しめるように頑張って長生きするよ。」
ユウリが手をあげて去ると、リディアも手を振って送り出した。
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最後に教育所のイグナーツを訪ねた。
「イグナーツ、しばらく帝都に行くことになった。ここをよろしく頼むね」
「わかりました・・・・あなたが武道会で活躍したおかげで才能ある若い魔術師があつまってきたます。彼らの教育はお任せください。」
「俺の活躍より、イグナーツほどの魔術師が教育しているのが大きいと思うよ」
「私の影響など些末なことです。武道会であなたが見せた4属性の同時展開・・・あの噂を聞いただけで魔術師ならここに来たくなるでしょう。実際私がいい例です」
「多属性魔法の同時展開って、技術的には難しいことなんだな・・・」
「賢者や大賢者ならともかく、普通はなかなかできる魔術師はいませんよ。ただ、あなたの同時展開を見てから私もチャレンジしています。もう少しで何か掴めそうなんですよ・・・もう一度見せてはいただけないでしょうか?」
「もちろんOKだよ。なんなら今からでも・・・」
「いえ、私も帰られるまでに自分で何かをつかんで見せますので、帝都からおかえりになったら見せてください」
「わかった、楽しみにしてるよ」
ユウリは、イグナーツと再会と魔法の実演の約束をし、教育所を後にした。
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翌日、ユウリとザイードは馬車で帝都へと旅立った。
2日目・・・・
街道の脇から武装した一団が、飛び出してきた。
数にして7~8人ほど、ユウリ達の馬車を取り囲むように追いすがってきた。
「――止まれ! 積み荷と金を置いていきな!」
「ひ、ひぃっ……!」
雇いの御者が、震え上がりながら手綱を握りしめた。
「やれやれ、辺境の街道は相変わらず物騒だな」
そう呟いたザイードが御者台に姿を見せた
「伯爵はそのまま乗ってな。なーに、すぐ終わるから」
「えっ?――」
ユウリが声をかける間もなくザイードは、盗賊の乗る馬へ飛び移った。
馬を操る盗賊を仕留めると、そのまま馬上でシミターを閃かす。
ザイードが一閃するたびに盗賊は馬から落ちていった。
盗賊たちが全員戦闘不能になるまで、ものの数十秒だった。
「終わったぞ~」
地面には、呻き声を上げる盗賊たちが転がっている。
「さすが、ザイード……馬上でも無敵だな」
「これくらい、造作もねえよ。剣闘士の前は長く傭兵をやってたからな~」
「なるほど、だからあらゆる状況で対応できるんだな・・・それより伯爵って呼びにくそうだし気軽に読んでくれて構わないぞ」
「ん? そうか、助かるよ・・・じゃあ、ユウリの旦那でどうだ?」
「いいよ、なんだかんだ言って気を使ってくれるんだな。前は坊やだったのに・・・」
「まあ、一応使えてる身だしな~。よろしく頼むぜ、ユウリの旦那!」
ザイードは、豪快に笑いながら言うと何事もなかったかのように、馬車の中へと戻っていった。
その後は何事もなく、3日後一行は、帝都へ到着した。
「タイラー伯爵、お待ちしておりました」
帝都の城壁門前で出迎えたのは、ドレイク男爵だった。
そのまま、用意された宿泊先へと案内された。
「これは……随分豪華ですね」
「今回は陛下の肝いり事業ですので・・・どうぞごゆっくりおくつろぎ下さい」
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翌日、ユウリはザイードと帝都内の水路などを見て回ることにした。
街中を通る水路は、しっかりと整備されており問題は見当たらなかった。
4箇所の水源は、離れた場所にあるので日にちを分けて視察することにした。
地図で見た通り4箇所のうち3箇所は、地形的貯水施設を築くのに適しているようだった。
「ドレイク殿、貯水施設を建設後は管理の為と防衛のために専任の部署が必要になりますが、そのあたりは大丈夫ですか?」
「すでに計画に織り込み済みです。統括管理者の選定も進めています。今優先すべきは、乾季の恒久的な水不足解消です」
「さすがドレイク殿、これで私は貯水施設の建設に専念できます」
貯水施設建設可能な3か所の水源を確認した後、ユウリは宿に籠り設計図の作成に取り掛かった。
それぞれの地形に合わせた設計が必要なため、一日中宿にこもることも珍しくない日々が続いた。
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10日ほどそんな日々が続いたある日、
「ユウリの旦那、根詰めすぎるのも良くねえぞ。ちょっと散歩にでも行こうや」
ザイードは、そう言うとユウリを大衆食堂や、露店が並ぶ通りへと引っ張っていった。
「ここの串焼きうまいんだよ。昔、帝都に来た時によく食ってたんだ!」
ザイードは、豪快に、串焼きを、頬張りながら、そう言った。
「ザイード、帝都には、よく来てたのか?」
「まあな~・・・傭兵としてあちこち渡り歩いてた時期があってよ~。帝都でも随分世話になったな~・・・おっ、あそこの大道芸見ていかないか~」
「ジャグリングか~・・・いいね、見に行こう!」
2人は、人だかりのできた広場の一角へと向かった。
大道芸人が、3本・4本と短剣を次々と投げ上げては受け止めていく。
「よし、旦那もやってみろ。どうせ、出来るんだろ?飛び入り大歓迎だとよ」
ザイードに背中を押される形でユウリは、ジャグリングに飛び入りすることになった。
芸人もさすがに戸惑っていたが、ユウリが危なげなく2本の短剣をジャグリングしていき、次第に4本・5本と短剣を増やしていくと血が騒いできたようで
「――こいつは、面白い!」
と目を輝かせながらジャグリングに交じってきた。
「兄さん、一丁、2人でやってみようや!!」
2人は、互いに短剣を投げ渡し、受け取り合いながら即興の連携を繰り広げる。
息の合った掛け合いに観衆は、たちまち大盛り上がりだった。
「やるね~、ユウリの旦那!俺も混ぜてくれ!」
ザイードも興が乗ったのか、ユウリと芸人の輪に入ってきた。
芸人の投げる短剣を愛用のシミターの腹で軽やかに弾き返し、ユウリへと返していく。
3人での即興のジャグリングの妙技に広場は、さらに大きな熱気に包まれた。
最後にザイードが全ての短剣を上空へ弾き飛ばし、弾き飛ばされた短剣がきれいに並んで地面に突き刺さってジャグリングの共演を終えた。
3人が観客に頭を下げると、割れんばかりの拍手鳴り響いた。
「はは、はーっはっは! ほんとに、オメーは、なんでも、できるんだな!」
「いやー、あなたがたなら今日からこれで飯が食えますよ!」
芸人がユウリ達に笑いかけながら言った。
2人は芸人と別れて散策に戻った。
「こういうのも、たまには悪くないな~・・・連れ出してくれて、ありがとう」
「だろう? 根を詰めるだけじゃ体に悪い。人生楽しまないと損だぜ」
ザイードは、そう言って豪快に笑った。
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2週間後、3か所の貯水施設の設計図が完成した。
「これは……」
図面に目を通した帝都の建築家たちは、あまりの精緻な出来に絶句した。
「地形や地質に合わせて堰の設計がされいる・・・水量や流水の勢いを踏まえた上で、放流路の設計まで違うとは……」
設計者たちは興味津々の態で、設計図を見比べていた。
「正直、これほどの設計を形に出来る職人は、帝都にもおりますまい・・・・」
「そうですか・・・それならタイラー領から、施工できそうな職人を呼んでも構いませんか?」
「タイラー領には、これを形に出来る職人がいらっしゃると?」
「いままで、私の図面を形にしてきた職人なので多分大丈夫だと思います・・・その職人たちと協力して事業にあたっていただけますか?」
「もちろんですとも・・・こんなすごい設計を形にする事業ぜひ参加したいです・・・・勉強させていただきます」
設計師たちの了解を得て、タイラー領からドーソン親方達を招聘することとなった。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
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