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42.委託栽培開始、の巻

 コルビン子爵と委託栽培の契約をしてから程なくしてユウリは、護衛のアレンと酒造責任者のリディアを伴い委託栽培の予定地を視察することになった。

「子爵みずから案内していただき恐縮です」

「い、いや……こちらが世話になる身だから当然だよ」

 案内をしているコルビン子爵からは、かつての刺々しい態度は消えていた。

 案内された土地は、水はけのよい緩やかな丘陵地帯だった。

 良好な日当たりと風通しが期待でき、遠方に山々が連なり寒暖差も期待でき委託する作物の栽培に適しているようだ。

「うーん……ここは、いいわね!気候も・土壌ともに素晴らしいわ。麦芽用の大麦とホップに申し分ない環境よ。それに――この寒暖差の望める地形、ワイン用の葡萄栽培に最高の条件だわ」

「うちの領地でもこれだけ最適なところはないかな~」

「さっそくだけど、ビール用の麦とホップは、この品種をお願いね。葡萄は、赤も白も両方作りたいわね。この土地で出来たブドウならどちらも辛口のいいワインが仕上りそう♪」

「赤ならカベルネ・ソーヴィニヨンとかどうだい?」

「ユウリ様、いいところをついてくるわね~・・・でも、ここの気候ならピノ・ノワールの方が、向いてる気がするわ。冷涼な気候だと繊細な香りが引き立つのよね~♡」

「なるほどピノ・ノワールか・・・じゃあ白は、ソーヴィニヨン・ブランなんてどうだ?」

「これまたいいセンスね~。この寒暖差ならキレのいい辛口の白に仕上がりそう・・・・あとはリースリングもいけそうかしら」

「いいね~両方試してみよう」

「ユウリ様もリディアさんも、素人に分かるように説明してくださいよ。魔術の呪文にしか聞こえません」

 タイラー家の主従のやりとりにコルビン子爵と子爵家執事のセドリックは、口をあんぐりと開けて固まっていた。

「タイラー家は随分フランクな主従関係なのだな・・・」

「帝国でも珍しい形ですね・・・旦那様」

「当家もあのような形の方がよいか?セドリック」

「いえ、今まで通りでお願いいたします。おそらく皆調子がくるってしまいますので・・・」

 ヒソヒソと話し合う子爵家主従にユウリが話しかける。

「それではコルビン子爵、今挙げた品種で栽培をお願いできますでしょうか」

「ああ、もちろんだ。品種と作付面積については書類で正式に頼めるかな?間違いがあってはいかんからな」

「すぐに用意させますね。それと栽培の管理なんですが・・・うちの者を数名、常駐させてもよろしいでしょうか?」

「もちろん構わんよ。栽培に関しても指示を出してもらった方が助かる」


 ________________________________________


「子爵、少々伺いたいのですがこの辺りの治水状況は、どうなっていますか?」

「その件はワシより執事のセドリックから答えさせよう」

「僭越ながら、お答えいたします。この一帯7~8年に一度の頻度で川の氾濫による水害が起きております。水害の頻度としては低いのですが、発生した際の作物への被害はそれなりに出ております」

「なるほど・・・・」

(念のため整備したほうがいいかな・・・・)

 特産品による財源は出来るだけ安定したほうが望ましい。

 冷害や暑熱などの避けられない要素はともかく、整備で避けられる要素は排除するべきだ。

「コルビン子爵、この委託栽培地周辺の治水工事を当方で行わせていただけませんでしょうか?当然費用は持たせて抱きますので・・・」

「費用を全て持ってくれるのか?そ、それは……願ってもない話だが……本当によろしいのか?」

「数年おきに被害が出るとなると酒造に影響が出ますので。特産品としてやっていくには出来れば不安要素は取り除いておきたいのです。それにもし効果があって、子爵領の他の地域で工事をされたいといった治水事業の新規需要につながるかもしれませんしね!」

「感謝する。こちらとしてはありがたい話だ。効果を見てからにはなるが治水工事の発注検討させてもらう」

「業務提携先ですので、その際は勉強させていただきますね♪」

 ユウリは、ウインクしながら茶目っ気たっぷりに言った。


 ________________________________________


 こうしてコルビン子爵領での委託栽培は、動き出した。

「まさかコルビン様と懇意になるとは思いもよりませんでした・・・」

「いままではマイナスの方向に縁があったのが、プラスに転じただけさ・・・もともと隣同士の領地なんだから縁が深くてあたりまえだよ、アレン」

「ユウリ様は大物かもね~・・・間抜けだけの可能性もあるけど」

「リディアさん、後半部分はせめてユウリ様に聞こえないように言ってください。一応我領の領主様ですから」

「アレン、その方が失礼だと思うよ・・・まあ、俺は気にしないけどね」

 コルビン領ではちょっとお目にかかれない主従のやり取りをしながら、3人は栽培予定地を後にした。



拙い文章、読んでいただきありがとうございます。


多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。


なるべく2日に1回は更新いたしますので、お見捨てなきようお願いいたします。

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