36.対消滅魔法、の巻
準決勝ではもう一試合、ヴォルフガング・シュタインが出場する戦いが行われていた。
ユウリたちは観客席から敵前視察を行う。
結果は、あっけないほどの圧勝だった。
対戦相手が、間合いを詰めるより早くヴォルフガングの剣には雷魔法が纏われていた。
一閃、二閃――それだけで決着はついた・・・魔法と、剣技を高レベル融合された魔法剣士らしい戦いだった。
「うーん……化け物ですね。あの雷の魔法剣受け止めること自体が難しいですよ」
「ユウリ様、準優勝でも立派な成績です。ここまで勝ち進んだだけでもタイラー家の武は、十分示せたと思います」
2人の口ぶりには、既に諦めているような響きがあった。
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貴賓席で、ゲルハルト公爵が、隣に座るコルビン子爵に視線を向けた。
「コルビン卿、タイラー伯爵だが……卿に聞いていた話とは随分違うではないか」
公爵の声には、不機嫌の色が滲んでいる。
「武を軽んじる口先だけの若造――そんな奴は、決勝まで残ることは出来ない」
「そ、それは……」
「いずれ、説明してくれるのであろうな?」
その一言にコルビンの顔が、青ざめていった。
「も、もちろんでございます……」
コルビンは、震える声で答えるのが精一杯だった。
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決勝を前に宿に戻ったユウリたちは、食堂で食事をしていた。
「乾杯・・・・うまい!でも、早く我が家で乾杯したいものだね」
ユウリが、そうこぼすとアレンとサイラスも揃って頷いた。
「ソーセージが恋しいですね」
「いえ、ハンバーグこそ至高です」
3人とも緊張感の欠片もない様子で語り合っていたが、アレンが、真剣な表情に戻って言った。
「明日の決勝、正直どうやって戦います?ヴォルフガング・・・あれはちょっと桁違いですよ」
「ユウリ様、無理なら諦めることも選択肢の1つです。そもそもユウリ様は、領主であることが本分ですから。準優勝という結果は十分な結果と言えます」
2人の言葉にユウリは、直接答えず質問した。
「ちょっと気になることがあってさ」
「なんですか?気になることとは」
「ザイードに4属性の魔法を乱れ打ちしただろう? 囲むように発動したから、避けられた魔法同士がぶつかったんだ。ぶつかって消える瞬間、異質でかなり大きな衝撃波が出たんだけど……あれは何がおこったかわかるか?」
「ああ……それは、魔法の対消滅ですね。反対属性の魔法が、全く同じ威力でぶつかった際に生じる現象です。無の消滅属性魔法で当初発動した魔法の数倍の威力が出るそうですが、狙って発生させるのは、ほぼ不可能とされています」
「なんで狙って出せないんだ?天才魔術師でも無理なのかな?」
「魔術師には属性による得意不得意があります。どうしても得意魔法の出力の方が大きくなるんですよ。それを乗り越えて寸分違わぬ同威力にするのは超繊細な魔力コントロールが必要となります。歴史上この対消滅魔法を自在に操ったのは……古の大賢者サトルのみと言われています」
(サトル? 日本人みたいな名前だな……もしかして転生者か?)
「まあ、伝説の域を出ない話ですけどね」
「ふーん、そうかなかなか興味深い話だな・・・・でも、今は明日のことを考えないとな」
その夜は、それ以上対策を話し合うことなく過ぎていった。
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翌日決勝の朝が訪れた・・・
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。




