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34/56

34.準決勝の相手ザイードの強さ、の巻

「ユウリ様、大丈夫ですか?!今の戦い、見事でした」

「痛いけどなんとか大丈夫。しかしイグナーツの一回戦を見てたのが、大きかったな」

 ユウリは、さすがに無傷とはいかず、火傷の痛みに顔をしかめながら答えた。

「ファイアーボールの威力より広範囲の魔法の方が、炎の密度が薄いのが事前にわかってなかったら、怖くて飛び込めなかったよ」

「まあ事務仕事でも準備で結果の7割が決まると言いますからね。ユウリ様は、その手間を惜しまなかったから勝利をつかむことが出来たんですよ」

 サイラスは、言いながらユウリの腕のやけどを見て眉をひそめた。

「とりあえず治療をしてもらいましょう」


 ________________________________________


 大会運営の医務室で、治癒魔法のつかえる神官から治療を受けることになった。

「これはなかなかの火傷ですね……でも、一回戦でザイード殿と戦った方に比べると軽傷ですな」

 神官は手早く治癒魔法をかけてくれた。

「これで大丈夫です。明日には後も完全になくなりますよ」

「ありがとうございます。しかし大会用に神官様が控えてらっしゃるとはさすがゲルハルト公爵ですね」

「ゲルハルト公爵には多大なご助力をいただいてます、これぐらいの便宜は図りますとも」

(俺も、ちょっとくらいは教会との関係を築いた方がいいのかな・・・今度サイラスに聞いてみよう)


 ________________________________________


 治療を終えたその足で――ザイード・アル=ファーリスの試合を観戦することにした。

 彼の戦い方は、変幻自在で手にしたシミターを目にもとまらぬ速さで繰り出したかと思えば、蹴りや肘うちなどの格闘術を織り交ぜてくる。

 そのため間合いもめまぐるしく変わり、相手の槍使いは防戦一方になっている。

「槍使いも決して弱いわけではないですよ。さらに武器の相性からいえば有利なはずなのに・・・」

 アレンがザイードの戦い方に感心しながら言った。

 対戦相手は、なんとかしようと槍を繰り出していたがザイードの防御は鉄壁だった。

 どのようなフェイントをかけようが、全てシミターで払われた。

 槍使いは最後の手段と必殺の突きを放ったが、その突きを待っていたかのように紙一重でかわし、槍使いの懐に入りこみ手刀を相手の聞き手に落とした。

 相手が片手を槍から話したところで、シミターを巻き付けるように放ち槍を弾き飛ばした。

 返す刀で、寸止めの一撃を喉元に突きつける・・・鮮やかな決着だった。

「……強いですね。技の引き出しが桁違いです……剣術・体術どちらも実戦で鍛え上げられた凄まじい技量です」

「剣闘士チャンピオン、伊達じゃないな・・・」

「でも、あの人の強さの本質は技術的なところではないと思います」

 アレンは、腕を組みながら続けた。

「彼の強さの本質は、相手の目線・体さばき・剣の構え……そういう些細な動きから相手の次の動きを予測できるところだと思います。だから、どんな攻撃が来ても対応できる。それどころか相手の攻撃が来る前に先手が打てる・・・だから本来不利なはずの槍相手にあんなにも鮮やかに勝てたんですよ」

「百戦錬磨の彼だからこその能力という訳か・・・」

「ええ、あれは才能とかそういう次元の話じゃなく……積み重ねた経験値で相手の次の動きをよそくしているって感じですね」

(まともに戦って勝てる相手じゃないな。なんとかその予測を裏切ることが出来れば・・・)


 ________________________________________

 準決勝を翌日に控えた夜、3人は、宿で食事を取りながら作戦を練ることにした。

「今まで、食事なんて栄養の補給としか思っていませんでしたが・・・」

 サイラスが、出された肉料理を食べながら言った。

「ハンバーグとビールって、やっぱり格別の美味さですよね・・・」

「おっ、うれしいことを言ってくれるね。余裕が出来たら新しいメニューを作っちゃおうかな・・・」

「それはそうとユウリ様、ザイードの実力は並大抵じゃありませんよ」

「うーん、アレンならどう戦う?」

 ユウリは、腕を組みながら、考え込んだ。

「今の俺では勝てるイメージがないですね・・・経験値が違いすぎます」

「そうか……俺なら数合打ち合って負けだろうね。魔法や体術も彼相手じゃ効果ないだろうし」

 アレンの言う通りザイードの強みが、経験に基づいた予測の技術にあるのだとすれば、かなり厄介だった。

 イグナーツの時のような撹乱も、通用しないだろう。

「経験に基づく予測か・・・一つだけ使えそうな技が思い浮かんだんだけど、アレンあとでちょっと付き合ってよ」

 料理を頬張りながらアレンに言った。

「どういった技なんですか?どんな技でもあの予測能力を崩せるとは思えませんが・・・」

「まあ、通じなければあきらめるしかないな・・・そもそも俺の方がかなり格下なんだし。でもかけてみる価値はあるかな~」

 歴戦の強者に挑む準備は、夜遅くまで行われた。



拙い文章、読んでいただきありがとうございます。


多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。

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