33.二回戦VS爆炎の魔術師イグナーツ、の巻
一回戦を終えたユウリは、次の対戦相手になるであろう――イグナーツ・ブランドの戦いぶりを見ることにした。
対戦相手は、両手にダガーを持つ接近戦を得意とする冒険者で、しきりにイグナーツとの間合いを詰めようとしていた。
しかし、イグナーツの繰り出す炎の魔法が、次々と襲い掛かり接近を許さない。
地面を焼き焦がし、大気を揺らめかせるほどの、凄まじい威力・・・「爆炎の魔術師」という二つ名に偽りはなかった。
「……すさまじい威力ですね」
「あの魔法使い相手にアレンならどう戦う?」
そう尋ねるとアレンは、腕を組み考え込んだ。
「うーん……あの火魔法の威力は驚異ですね。でも、魔法の発動も相当早いですが、やはり若干のタイムラグはあります。俺なら高速のフェイントをかけて、距離を詰めるかな~・・・間合いを詰めきってしまえば、俺の方に分があるはずですから」
アレンの分析は非常に的確だった。
(アレンならその戦法で勝機があるだろうが、俺には無理だな・・・)
アレンの反応速度は、ユウリのそれをはるかに超えている。
フェイントを織り交ぜながら一気に間合いを詰めるという芸当はユウリの身体能力では無理だ。
(かといって、俺の水魔法ではとうていあの爆炎には対抗できない・・・)
器用貧乏のユウリは1つの能力でイグナーツに対抗するのは無理がある。
何を組み合わせて勝機をつかむか・・・ユウリはその糸口を必死に探っていた。
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午後になり、二回戦が始まる時間になった。
闘技場の中央に現れたイグナーツは、中肉中背の若い男性で、その顔には表情がなく、何を考えているのか読み取れない。
「……よろしく」
イグナーツは、そう一言だけ告げるとわずかに顎を引いた。
どうやら、試合前の挨拶の様だった。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ユウリも剣を掲げ、騎士の礼を返したあとすぐに、試合の開始が告げられた。
開始直後、イグナーツの手のひらに特大サイズのファイアーボールが瞬時に形成され、すぐにユウリに向かって放たれる。
「――速い!」
ユウリは剣でファイアーボールを打ち払おうとした。
「いくらミスリルの剣でも、ムダだ・・・」
イグナーツが呟いた・・・しかし、彼の放ったファイアーボールをユウリは何とか弾き飛ばしていた。
(なんとかなったか・・・・)
そう、ユウリはただ剣で防いだのではない・・・おのが剣に氷魔法を纏わせて打ち払ったのだ。
「魔法剣が使えるのか!?」
観客席からどよめきが上がった。
「ほう、魔法剣とはやるな・・・・だが、どこまで持つかな?」
そう呟くと、ファイアーボールをユウリめがけて放ってくる。
ユウリは、次々と飛んでくるファイアーボールを走りながら、打ち払った。
イグナーツは、ファイアーボールを放ち続けた。
ユウリが防戦一方になったと見えた時、イグナーツは眉間にしわを寄せた。
目標の姿が少しずつぶれていき、次第に複数に見えるようになっていった。
その動きは、ユウリのイメージでは忍びの体術――緩急をつけたステップで相手を撹乱する動きだ。
自らの魔法の爆炎が作り出す陽炎と相まってイグナーツは狙いを定めることが出来ない。
(ならば――やりかたを変えるまで)
イグナーツが魔法を行使すべく詠唱を始めた・・・狙いが絞れないため広範囲を焼き尽くすつもりだ。
詠唱が終わり、イグナーツを中心に炎の壁が闘技場全体を包み込んでいく。
(待ってました・・・凝縮されたファイアーボールは切り裂けなかった。でも範囲の広がった炎なら多分――)
魔法が放たれた瞬間に、ユウリはイグナーツへまっすぐに突っ込んでいった・・・氷の魔法剣で炎の壁と切り裂きながら。
爆炎の壁が、切り裂かれ、次の瞬間にそこを駆け抜けたユウリの姿は、イグナーツの目の前にあった。
「――なにっ!?」
イグナーツが反応する前にユウリの剣先が、その首筋に突きつけられていた。
「……参った。私の負けだ」
「――勝者、タイラー伯爵!」
審判の声と共に、観客席から大歓声が湧き上がった。
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「弓騎士セシルのつぎは、イグナーツにまで勝利するとは、こんなはずでは・・・・」
貴族席の片隅でコルビンは青い顔で呟いたが、その声は誰にも届かなかった。
こうして、初出場のタイラー伯爵は、優勝候補2人を破って、準決勝へと駒を進めた。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。




