31.優遇された組み合わせ、の巻
武道大会当日、ゲルハルト公爵領の闘技場には大勢の人々が、詰めかけていた。
石造りの巨大な闘技場は、帝都を除けば最大の規模を誇り、中央の闘技場を幾重にも取り囲む観客席は、既に熱気が満ちている。
貴賓席には、東地区一帯から観戦にきている貴族の姿も見受けられた。
「タイラー伯爵、武道大会への参加歓迎する」
そういって貴賓席でユウリを出迎えたのは、ゲルハルト公爵その人であった。
公爵本人も武人であり、壮年を過ぎた年齢だが、その立ち姿には隙が無い
「この度は私のような若輩者をご招待いただきまして、恐悦至極です」
公爵は、挨拶するユウリを値踏みするように見た。
「宮廷で噂を聞いておるぞ。知恵と才覚で自領を驚くほど豊かにした若き当主だとな」
「過分なお言葉、恐縮です」
「たしかに貴族として自領を豊かにすることは必要だ。しかし我ザルツヴェーデ帝国は武によって版図を拡大してきた経緯がある――タイラー伯爵家の武を示されよ」
ゲルハルト公爵の一言に、控えの間の空気が張り詰めた。
「……全力を尽くします」
公爵は、しばらくユウリの顔をじっと見つめていたが、小さく笑って踵を返した。
「せいぜい、励むことだ」
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開会の直後、大きな掲示板に大会の組み合わせが張り出された。
「……ユウリ様の、初戦の相手。帝都の弓騎士、セシル・ウィンダムですね」
初戦の相手は、大会でも有力視されている弓騎士セシルだった。
更に、その先もし勝ち上がっていくとすると――二回戦で、爆炎の魔術師イグナーツ・ブランド、順当に勝ち進めば準決勝で異国の剣闘士チャンピオン、ザイード・アル=ファーリス、決勝で、公爵家筆頭騎士、ヴォルフガング・シュタインとあたることが予想される。
「ユウリ様が優勝するには、優勝候補を全員倒さないといけない組み合わせですね・・・」
サイラスが、対戦表を指でなぞりながら呟いた。
「随分、優遇された組み合わせですね・・・露骨だな」
アレンが、皮肉を込めて吐き捨てた。
「まちがっても、ユウリ様が優勝しない組み合わせを組んだようですね」
(意図的と見ていいだろうな・・・
やはり、サイラスの推測通りこの大会そのものに、何らかの意図が働いているのだとすれば、この組み合わせも、その延長線上にあるということだろう。
「これって、ひどくない?」
「ある意味、勝ち抜けば優勝候補全員と戦える夢のような組み合わせです」
アレンが皮肉を飛ばす。
「アレンなら、どれくらいまで行けそうだい?」
「うーん・・・うまくいけば準決勝までいけるかな?1回戦で負ける可能性もありますけど」
「1回戦くらい有力候補じゃなくてもいいじゃないか・・・なあ?」
「・・・ユウリ様に恥をかかせるのが目的なら、1回戦でひどく負ければ一番いいと思ってるんじゃないですか?」
「まあ、深刻になってもしょうがない・・・やるだけ、やってみるか」
そう言うと、闘技場の中央――選手たちが姿を現し始めている舞台に視線を向けた。
「とりあえず、セシルの資料をもう一度確認しておこうか。サイラス用意を頼む」
「分かりました。すぐに出せるように有力候補の資料は別にしてますから」
「もう一度弓騎士相手の戦略をおさらいしましょうか」
3人は、勝利をあきらめる気は全くなかった。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
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