29.招待の思惑を考察する、の巻
「今回の武道大会招待について、少し気になることがあるのですが」
サイラスが、慎重に言い出した。
「気になること・・・なんだい?」
「ゲルハルト公爵の武道大会は、名のある騎士や戦士、魔法使いが毎回参加する由緒ある催しです。これまで招待の対象は武で名を上げた者や、武門の家柄に限られてきました。タイラー伯爵家は家格こそ古いものの、最近復興してきたとはいえ没落しかけていたことを考ええると招待状が届くこと自体かなり不自然です」
「確かに、なんで俺なんだろうとは思ったけど……」
「しかも、招待の文面ですが丁寧に整えられている割に、こちらの武の実績には、触れられていません。普通こういう招待は、多少なりとも相手の武勇を評価する一文が添えられるものなんですが・・・」
サイラスの説明は、事実と我領と取り巻く状況をもとに考察し、組み立てられている。
「これはあくまで推測ですが、タイラー領の急成長を快く思わない何者かが、ゲルハルト公爵にそそのかしたのではないでしょうか。ゲルハルト公爵は、武を重んじる気風の強い方だと聞きますから『タイラー家の新当主は武を軽んじる若造です」とでも吹き込めば、そそのかされても不思議ではありません」
「でもそんなに恨まれるようなことしたっけ・・・なにか裏付けがあるのか?」
「ユウリ様、新たな治水技術の確立、ミスリルでの成功、魔晶石の採掘、人口3倍増、どれか1つでも妬みを買うには十分です。現状あくまで推測にすぎませんが、それなりに可能性が高いと思っております」
そうは言いながらも、サイラスの口ぶりにはある程度の確信が見られた。
「我領の発展を面白く思わない領主は、いくつか心当たらがあります。特に自業自得とはいえ策を弄して煮え湯を飲まされた方とか・・・」
「……コルビン子爵か」
「可能性としては十分に考えられるかと」
「つまり、ユウリ様を武道会に参加させて、恥をかかせるのが目的と考えられる訳だ・・・陰湿なやり方だな」
アレンが顔をしかめて吐き捨てるように言う。
「そういう悪意が、背景にあると考えた方が色々と辻褄が合います。そういう前提で対策を立てるべきです」
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ユウリは、招待状から悪意の存在の可能性を推察するサイラス分析力に感心した。
「その推測通りだったとして、どうすればいいかな?」
「断るのは下策ですね・・・なに、簡単な話です。その者の思惑通りに事が運べばないように――ユウリ様、武道大会でいい成績を収めてください」
サイラスは、珍しく真剣な眼差しでユウリを見ながら言った。
「ここで悪意を挫いておけば、当分我領に手出ししようとは思わないでしょうから」
「うーん・・・俺の実力で何とかする方法を考えてみるよ」
「俺は伝手で出場する選手の情報を集めてみますよ」
「頼むよ、アレン」
(相手によってどう対応するか、だな・・・なんでも一応出来るのはきっと役立つはずだ・・)
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その夜、久しぶりに夢の中で女神に会った。
いつもの白く滲んだ空間に銀髪の女神が、人の悪そうな笑顔を浮かべてこちらを見ていた。
「よぉ、75点男」
「お久しぶりです」
「最近ずっと順調だったもんね~……ここのところ壁らしい壁にぶつかるところ見てなかったから、ちょっと退屈だったのよね~」
「今回はいい退屈しのぎになれそうですね・・・」
「そうね、あんたは何をやっても超二流ってのが持ち味だからね。一流の戦士たちを相手にどこまで通用するか見ものだわ~……超レアスキル『才無き万能』が、外れなのか外れじゃないのか判断の材料になりそうで楽しみ♪」
「そうなんですよ・・・結局は、何でもできるって所を有効に使って勝機を見出すしかないんですよね~」
「まあ、せいぜい楽しませてちょうだい♡」
その言葉とともに女神は、いつものように消えていった。
――目を覚ましたユウリは、しばらく天井を見つめたまま、小さく、苦笑した。
「楽しませてくれ、か・・・転生させてもらった手前、頑張るとしますか!」
ちょっと、やる気が出たユウリだった。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
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