25.帝都でのプレゼン、の巻
帝都の一室、宮廷の会議場には錚々たる顔ぶれが揃っていた。
治安を統括する部署の高官たち、衛兵組織の幹部、そして、宮廷書記官ドレイクの姿もある。
招かれたユウリは、アレン、サイラスを伴い、その場に立っていた。
「タイラー伯爵、此度はご足労いただき感謝いたします」
議長役を務める初老の高官が、そう挨拶を述べた。
だが、その言葉とは裏腹に居並ぶ面々の視線は、好奇と警戒が入り混じっていた。
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「それでは、我領の治安組織構造と評価方法についてご説明させていただきます」
3人で用意した資料を基に、タイラー領での治安維持組織の構造、犯罪記録に基づいた人員配置、そして複数評価者による、公正な評価制度について説明した。
「――このように、評価する側にも緊張感が働く仕組みを設けることで、公正な人事が実現できております」
説明が進むにつれ会議場の空気は、静まり返っていった。
「お話は、よく分かりました。なるほど、伯爵の領地での治安維持に効果があったことは確かなようだ・・・」
沈黙を破ったのは、衛兵組織の幹部――ハドリー伯爵だった。
「しかしそれは、辺境の小さな領地だからこそ、うまくいった話ではありませんかな。大規模の組織にそのまま当てはめるのは、些か、無理があるように思いますがいかがでしょうか?」
ハドリーの口調には、拒絶の色が滲んでいた。
(既得権益者からの反発か・・・予想通りだな)
「ご指摘、ごもっともです」
ユウリは、あえて、正面から、反論しなかった。
「実際、大規模な組織になればなるほど、抱える事情も複雑さも違ってくるでしょう。ハドリー伯爵がおっしゃる通り、そのまま当てはめるのは無理だと思います。・・・だから、限定的に試験運用をしてみるのはいかがでしょうか?」
「……どういうことですかな?」
「帝都のうち1区画だけで、試験的にこの仕組みを導入してみて、効果を評価してみてはどうでしょう?」
ユウリの提案に会議場が、どよめいた。
「一区画に試験的運用であれば、既存の組織を、大きく揺るがすこともありません。結果が伴わなければ、その時点で元に戻せば大きな問題にはならないでしょう」
「確かに、それであれば大きな混乱は避けられましょうな・・・」
「試験導入する区画の選定や運用については、我領の中書令が、検証しております」
「区画の選定基準や導入後の評価指標については、こちらにまとめてあります。」
サイラスが、淡々説明する。
「最終的な候補区域の決定は、幹部の方々でお願いします」
そういって、ユウリはプレゼンを終えた。
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「一区画のみの試験導入・・・それであれば、我々としても前向きに検討いたします」
議長役の高官が、そう総括すると、居並ぶ面々からも渋々ながらの了承の声が上がった。
ハドリー伯爵だけは、腕を組んだまま渋い表情を崩さなかったが、表立って反対することはなかった。
「本日は、貴重なお話ありがとうございました」
会議の終わり、ドレイク男爵が声をかけてきた。
「一区画からの試験導入、という落とし所お見事でした。あれなら、反発を最小限に抑えながら導入できます」
「いえ、お役にたててなによりです」
(前世での、頭の固いお偉いがた相手のプレゼンの経験が役にたったな・・・)
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会議場を後にした帰り道、アレンが大きく息を吐いた。
「いやー、正直もっと噛みつかれるんじゃないかと、ヒヤヒヤしました」
「噛みつかれることを想定して落としどころを設定しておいて正解だったねっ、サイラス♪」
「想定した通りに事が運びましたね。あのあとほぼ反対意見もでませんでしたし・・・ユウリ様、なかなかの策士ですね」
こうして、タイラー領の治安維持の仕組みは、帝都の一区画において試験的に導入されることになった。
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