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24.変換も時には大事、の巻

「帝都から書簡がとどいてますよ・・・しかもこの格式は、大分上の方からのようです」

 サイラスが、一通の書状を持ってきた。

 差出人は、宮廷書記官のドレイク男爵だった。

 タイラー領の治安維持組織の仕組みと評価方法について、帝都の衛兵本部で説明をして欲しいという依頼だった。

「この依頼どうしたらいいか、2人の意見を聞かせて欲しい。アレンはどう思う?」

「俺は、受けていいと思います。我領の治安維持が評価されたからの依頼でしょうしね」

「そうか・・・サイラスの意見は?」

「帝都

「帝都の内務省からの正式な依頼ですので、そもそも断れないと思います」

「まあ、そうだよね~・・・じゃあ、せいぜい恥をかかない様に準備をするか」


 ________________________________________


 こうして、説明に向けて3人で準備を始めた。

「とりあえず、帝都の治安維持組織の仕組みを把握しておきましょう」

 サイラスは、取り寄せた資料を机に広げた。

「帝都の衛兵組織は、階級ごとの縦割りが強く、評価は直属上司の裁量のウェイトが大きいようです。上司に嫌われてしますと昇進しにくいシステムですね」

「ああ~、あまりよくないシステムだね・・・もしかして、貴族同士の派閥争いとか絡んでる?」

「ええ、だからこそ我領のシステムを強引に持ち込んでも、うまくいかないでしょう。まずは、導入した場合のメリットとデメリットを洗い出して、説明できるようにしておくべきですね」

 メリットとしては、信賞必罰の徹底は士気の向上と不正の抑止、犯罪記録に基づいた人員配置は効率化をもたらし、複数評価者による公正な評価制度は、組織全体の透明性向上させ、能力ある者の登用につながると考えられる。

 デメリットとしては、既存の人間関係や既得権益との衝突が考えられるし、急激な変化は現場に混乱をもたらす可能性がある。

「タイラー領での治安組織システム導入前と導入後の治安データを提示しましょう」

 サイラスが、犯罪発生件数の推移・住民からの通報件数・衛兵の離職率の変化を細かくまとめた統計資料を広げた。

「導入前は、人口の増加とともに治安が悪化していましたが、導入後2年足らずで犯罪発生件数は、半分以下にまで減少しています」

「これは、分かりやすい成果だな」

「ええ、数字で示せば説得力も違います」


 ________________________________________


 ユウリは、資料に一通り目を通したアレンの反応が気になった。

「アレン、どうした?難しい顔してるけど」

「いえ、内容自体は、間違ってないと思うんです。ただ、『帝都の評価制度は、曖昧で、上官の裁量に依存しすぎている』とか、『縁故による人事は、士気の低下を招く』とか、角が立つ表現ではないかと思いまして・・・帝都の衛兵には帝都の治安を維持しているという、矜持があるでしょうから」

「……確かにそうも取れるな」

 資料を読み返してみるとサイラスらしい、簡潔で正確な物言いだ・・・間違ってはいない。

 しかし、聞き手によっては痛烈な批判として受け取られかねない表現ともいえる。

「サイラスのまとめた内容は正しい・・・でも、正論をぶつけると論理的に言い返せない分、腹が立つかもね」

(前世でも、散々経験したな・・・・内容が正しくても、相手の態度を硬化させるだけになる)

「『曖昧』じゃなくて、『改善の余地がある』、『依存しすぎている』じゃなくて、『体系化することで、更なる効果が見込める、。『士気の低下を招く』は……『士気の向上に繋がりにくい』に言い換えたらどうかな?」

 そう言いながら、次々と、言い回しを変えていった。

 指摘したい内容はなるべく変えず、角のたたない言い方を選んでいく。

「批判ではなく、提案として受け取ってもらえるような言い回しで、こちらの言いたいことはちゃんと言う、っと・・」

 書き換えられた資料をサイラスは、しばら読んでいた。

「……見事です。表現が、柔らかくなっているのに指摘している中身は、ほとんど変わっていない……これなら反発を招きにくいですね」

「サイラスに言わせると、こういう配慮は無駄に当たるのかもしれないけどね・・・」

「無駄なんてとんでもない・・一度反感を買うとかたくなに意見を聞いてもらえないことも多いですから。その説得にかける労力の方がよほど無駄です。俺がそういういいまわしをしていないのは単に苦手だらです」


 ________________________________________


「これで、下準備は大体できたね。帝都で、どんな反応が返ってくるか正直読めない部分もあるけど、やれることはやった」

「あとは、当日しっかり説明するだけですね」

 アレンがそう言うと、サイラスも小さく頷いた。



拙い文章、読んでいただきありがとうございます。


多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。


お手数とは存じますが、ご評価いただけると励みになりますので、よろしくお願いいたします。

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