22.ミア、工房長に就任する、の巻
ある日、ミアが珍しく領主館を訪ねてきた。
「ちょっと、見ていただきたいものがあります」
差し出されたのは、一本の、黒みがかった光沢を持つ金属の棒だった。
「これは……なんだい?ミスリルにしては光沢が違うよね・・・」
「鉄との合金ですが、今までのものとはちょっと違います」
そう言うとその金属の棒を、両手で曲げてみせた。
合金の棒は大きくしなったが、手を離すと何事もなかったかのように、元の形に戻った。
「すごい剛柔性だね・・・・信じられない」
「ミスリルと鉄の両方の性質を、うまく引き出せた合金です。剛と柔、両方を兼ね備えてます」
(これを、建築材の補強材として使えば……)
「これ、量産出来るのかい?」
「可能です。しかもミスリルの使用量はほんのちょっとなので安価にできます」
「ミア、すごいよ。この合金があれば新築する領主館の堅牢性が上がるし、コストのカットも出来る!」
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こうして、新しい領主館の建築にミアの開発した合金が組み込まれることになった。
「この合金、大規模な建築では重宝されそうだな・・・他でも需要がかなり出るんじゃないか?」
ドーソン親方が、合金の棒を見ながらつぶやいた。
「現状この合金を精製できるのは、うちの直轄工房だけだから需要があれば独占できそうだね」
「いやー、これは建築に革命が起きるかもしれないぞ・・・」
(また1つ、資金源が出来そうだな)
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この機会にユウリは,ミアを直轄工房の工房長に任命することにした。
「ミア、タイラー領直轄工房の工房長になってもらえないかな?」
「え……工房長私がですか?」
「技術は工房内で随一、今回の合金をはじめ貢献度も十分だ。他の鍛冶師たちも工房長はミア以外にはいないと言っているしね」
「そんな、私なんかが……」
「これはミアが実力と実績で勝ち取ったものだ。ぜひ受けて欲しい!」
実際、この数年でミアの鍛冶師としての実力は、近隣の領地や帝都にまで知れ渡っていた。
タイラー領の直轄工房に集まった鍛冶師たち誰もが、ミアの腕を認めている。
今回の工房長就任に、異を唱えるものは誰もいなかった。
「……分かりました。謹んでお受けします」
その表情には、喜びと新たな決意がにじんでいた。
「それと、工房長に就任したら、俸給も上がるから楽しみにしてね♪」
「え、私は、今での十分すぎるほど、いただいてます」
ミアが慌てて言うのを手で制した。
「アレンとサイラスも役職についた時に俸給を上げている。ミアは功績をあげたんだし、見合った俸給はちゃんともらってくれないと俺が困る」
「今回の合金は私だけでなく、工房のみんなで試行錯誤して作ったものです。私だけ俸給をあげていただくのは・・・」
「分かった。今回の合金はこれから建材としておそらくたくさん受注がくると思うんだ。その利益の一部を工房の設備と鍛冶師の俸給に還元しよう。これなら、いいかな?」
「ミア殿・・・上のものが貰わないと下の者が貰いにくですよ」
アレンが横からそっと、口添えしてくれた。
ミアは、ユウリとアレンを交互に見やって、頷いた。
「……ありがとうございます。これからも、精一杯務めさせていただきます」
「うん、期待してるよ」
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「それと、もう一つ、考えてることがあるんだ」
「新しい館が完成したら、その跡地を使って、工房を拡張しようと思ってるんだ」
「工房を、拡張……ですか?」
「うん、新しい合金の受注も見込めるから、ミスリルの精製、武器の作成、合金の精製とある程度分けた方が効率的だろう?」
「それは……すごく、ありがたい話です」
ミアは、目を輝かせながら頷いた。
「工房長として、存分に腕を振るってほしい」
「はいっ!!がんばります」
こうして、ミアはタイラー領直轄工房の工房長に就任した。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。




