21.せっかくなんで混ぜてみよう、の巻
人口増加の対策をしてから半年がたった。
タイラー伯爵領の人口は増え続け、10,000人を超えていた。
「半年分の進捗まとめましたので、ご確認お願いいたします。」
サイラスが、気だるげな調子で報告書を広げた。
「区画整理は全区画の半分ほど進んでいます。道と住居区を優先して進めています」
「当初の予定通りだね。順調で何より」
「ハンバーグとソーセージは、タイラー領名物として定着しましたね」
ハンバーグを提供している領直営の食堂には連日長蛇の列ができている。
さらに、ソーセージは領内ではもちろん、他領からの発注も右肩上がりで増えている。
「ビールの方も一回目の仕込みが、ようやく終わったところです」
「いやー、出来上がるのが楽しみだね♪教育機関の関連はどんな感じかな?」
「そちらはまだ時間がかかりますね。教育の場の確保と、講師の確保どちらも進めてはいます」
「まあ、こればっかりは地道にやるしかないね」
とりあえずは、人口の増加対策に問題なくユウリは一安心だった。
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「もう1つ、ご相談があります」
サイラスが、報告書を閉じると改めた口調で言った。
「領主の館の移転を前倒しにして下さい」
「ああ、一応新規開拓区画に予定地は取ってあったよね?」
「ええ、現在の領主館は、領地の端に寄りすぎてます。新規開拓区域の予定地に移せば、領内の中心になり色々と効率的です。さらに今の館は手狭になってきており、多面的に考慮し前倒しの移転が望まれます」
「言われてみれば……廊下にまで書類の山が、はみ出してるもんな」
アレンが、苦笑しながら言った。
「わかったよ。移転を前倒ししよう」
「ありがとうございます。幸い、資金は余裕があります」
サイラスは、別の書類を差し出した。
タイラー領が直営する、ミスリル・魔晶石をはじめとする工業も順調、更に特産品として始めた食産業も右肩上がりで、順調に利益を増やしている。
それに加えて、農業の収穫高増大、人口増加による税収も増えタイラー領の運営資金は領主館を新築するのに十分な余裕があった。
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「それで、設計はやはりユウリ様がされるんですか?」
「伯爵家の館も兼ねるからね。頑張って設計するよ」
「もう、驚きもしませんけどね……どのような様式にされるんですか?」
「・・・まだ検討中だよ」
(前世の近代建築をそのままっていうのは無理があるからな・・・)
この世界には、この世界の長い歴史の中での建築様式がある。
石造りの重厚な壁、採光と防御を両立させた窓の配置、魔力灯の設置を前提とした構造――そういったものを無視して作ると違和感のあるものになってしまう。
(前世の近代建築も、今世の建築技術も『才無き万能』のおかげである程度分かる・・・この2つを混ぜたものが出来ないかな?)
ユウリは2つの様式の調和を意識しながら設計図を挽いてみることにした。
結果は、自身の想像を超えるものが仕上がった。
この世界特有の魔法による照明設備や、魔法陣による空調の仕組み、重厚な石造りの様式を残しつつ、合理的で機能性を追求した動線・部屋の配置がされた設計だった。
今世の様式美と、前世の機能美がかけ合わさった図面が出来上がった。
(うん、固定75点も混ぜ合わせて、伸びしろがないのを補えた感じだな・・・)
出来上がった図面をドーソン親方に見せてみると、しばらく絶句していた。
「坊ちゃん……これは、今までの図面の中でも一番突き抜けてますな」
「ドーソン親方にそんな褒めてもらえると、うれしいな」
「伝統を踏破しつつ、採光や動線、部屋の配置の仕方が、新しい発想です。それでいて、整然として美しい出来栄え・・・」
ドーソン親方は、感心して何度も図面を見返していた。
「これは……もしかしたら新しい建築様式の誕生に立ち会ってまったかな?」
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「ドーソン親方大絶賛でしたね」
「一応、頑張ってみたよ。確かに今までで一番手ごたえがあったかも」
「その『一応』そろそろやめませんか?」
「いやー、俺の出来るなんて、『一応』で十分だよ。今回はたまたまさ」
「謙遜も過ぎると嫌味ですよ。ユウリ様」
サイラスは、そんなやり取りを横目に建設予算と工程表をまとめ始めていた。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。
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