番外1.牢番は永遠に覚めない悪夢をみる(ざまぁ回)
SAN値直葬再び?
ぐったりとした小娘の目は空洞だった。
目が虚ろではなく、空洞だった。
光も、希望も、願いも、あらゆる概念、全てを飲み込む闇窖のような……空洞だった。
「―――――――――!!!?」
驚きのあまり、俺は声にならない悲鳴をあげながら距離を取ろうとした。闇窖に飲み込まれまいっと、掴んでいた左手で頭をぶん投げようとしたが、その前に髪の毛が左手に絡みついてきた。
ぬるぬるとした、生暖かい感触に再度悲鳴をあげる。
その間にも小娘の身体が溶けていった。
ドロドロとした黒い液体のような、得体のしれない“ナニカ”へと変化させながら、俺に絡みついてくる。
「な、何しやがる……離せ!!」
必死で抵抗するが、このドロドロとした得体のしれない“ナニカ”は離れない。“ナニカ”から触手のような手が生えだし、その手が俺を逃がさないっとばかりに身体へと巻き付いてからがしっと掴む。
次々と生えては巻き付いて掴む手により、俺は一切身動きが取れないがんじがらめの状態にされた。
「な、なんだ……なんなんだよこれは!」
「なんだかんだと言われたら、答えてあげるのが世の情けってね」
いつのまにか、アイアンメイデンの上に“小娘”が座っていた。
ボサボサの短い紫の髪、袖が手の先からだらんっと垂らす程にサイズがあってない血濡れた白衣を着た小娘が、じっと藍の瞳で俺を見つめていた。
(お前は誰だ!?)
そう叫びたかったのに、口が……いや、身体が動かなかった。
金縛りに受けたかの如く……時間が止まってしまったかのごとく、動かなかった。
「君には、二つの結末が用意されていた」
“小娘”はアイアンメイデンからぴょんっと飛び降り、俺の目の前までやってきたと思うとビシッと指を一つ立てた。
「一つ目は、これから武装蜂起してくる領民達を相手に最期まで戦う未来。領民達からボコボコにされるけど、今日中に死ねる分まだマシな結末」
こいつは一体何を言ってるんだ?
そんな俺の疑問に応える事なく、次は指を二本立てる。
「二つ目は、敵前逃亡。隊長の命令を無視して屋敷から逃げる。領民達に殺される未来からは逃れられるけど、この先待ってるのはお尋ね者な賞金首。人の目に怯えながらの惨めな逃亡生活の末、最期は隊長に捕まってぶった切られる。どれぐらい楽に逝かしてくれるかは、隊長のさじ加減一つであるけど……あの隊長さんが命令違反で敵前逃亡という三度目の失態をやらかした君を、そう簡単に逝かしてくれるわけないよね~~?」
にやにやと笑ってくる“小娘”の言葉通りだった。
あの加虐趣味を持つ隊長が俺を楽に逝かしてくれるわけがない。
捕虜相手にこれでもかと痛めつけて……それこそ、何度も殺してくれって嘆願して、ようやくトドメを刺す。それが俺の隊長だ。
「とまぁ、この辺りは元から用意されてた筋書。どのような死に方をしようとも、死ねば夢から覚めて自動的に現実の身体へと帰還できるように手配はしてた。
君は現実だと女子供相手に散々いたぶって〇〇してきたのに全く反省しない性的犯罪者だけど、この因果応報とも言える夢体験で少しでも反省ができるようにっと、わざわざ慈愛の女神カプリス様の名の元でエキストラ出演してもらったんだ。……でもね。こんな結果になって、実に残念だってサツマちゃんは思うよ」
一体こいつは何の話をしているんだ?
全く理解できないながらも、俺を馬鹿にしてる事はわかる。
残念って言いながらも、そのにやけてる口元が、全く残念と思ってない事を語ってやがった。
憤ってる中、“小娘”が三本の指を立たせた。
「そんなわけで、君には本来だと用意されてない三つ目の結末が今出来た。その内容だけど……」
“小娘”が唐突にジャキンっと両手からメスを何本も……
見るも悍ましい、禍々しい気配をぷんぷんと漂わせたメスを何本も取り出した。
「――――――!!!?」
驚愕のあまりに目を見開いた俺に向かって、“小娘”は続きを語った。
「それは……自身の失態を年端もない少女に全部押し付けるだけでなく、さらに拷問を加えて憂さ晴らしするという、ド外道にも程がある選択肢を取った事で慈愛の女神カプリス様から見放される結末。
だからね……許可が下りたんだよ」
(一体何の許可が下りたというんだ!?)
問いの答え。
それは“小娘”の笑みが……
人間の幼子のように……
無邪気で……
純粋で……
穢れを知らない……
それ故の、強い、強い、幼子特有の 残 虐 性 を宿した笑みが全てを物語っていた。
(やめろ……!やめてくれ……!NOOOOOOOO!!)
俺は必死に身をよじった。何も発する事が出来ない口から悲鳴をあげる。
目の前の“小娘”から逃れようと……絶対の“恐怖”から逃れようと必死にもがいた。
だが、無理だった。今の俺は、蜘蛛の巣にからめとられた“虫”だった。巣の持ち主に梱包された“虫”そのものだった。
そんな“虫”となった俺に、“小娘”は笑いながら……
告げた。
“今からド外道の君に相応しい姿へと”
ツ ク リ カ エ テ ア ゲ ル カ ラ ネ
―——
あれから、どれだけ時間が経過したかわからない。
今、俺が何をしてるのかもわからない。
なんで生きてるのかもわからない。
わかる事といえば……
俺は見世物にされている事ぐらいだった。
手足がなくなった俺を、周囲は生きた達磨と称して笑っていた。
抗議を言うための口は縫いつけられてるため、言葉は一切発せられない。
こんな身体になっても、身体は正直に空腹を訴えて来る。
放っておけば、尋常でない程の飢餓感が俺に襲い掛かる。
(食いたい……早く……食い物……よこせ)
空腹で意識が混濁してきて、ようやく口にできるのは液体だった。
縫いつけられてる口の間に流し込まれる緑の液体はまずい。とてつもなくまずい。死線をさ迷うほどのまずさであっても、背に腹は代えられないっとばかりに飲み込む。
これで空腹が和らいで一安心……ではない。
腹に入れたら、次は出さないといけない。
だというのに、俺は出せない。
ゴロゴロと腹が景気よく騒がせてるというのに、出口が栓で防がれてるので出せない。
出せない苦痛でよじる……その様を周囲が笑う。
(くそ……出せ……出させろ!!)
出したくとも出せない、この苦痛を感じながら……
苦痛が解放されるのは一週間後。
出した後は、一週間ずっと飲まず食わずで放置され……
一週間後に食い物(液体)が流し込まれた瞬間、腹痛からのもよおし。
一週間後に解放され、それから一週間放置……
そんなループが続く中、俺は神に願う。
俺を助けろっと……
そんな元牢番の願いは……
神に届かなかった。
少なくとも、その末路は因果応報によるざまぁである事に……
自分自身で気付かない限りは、神による救いの手は差し出されないであろう……
彼は今日も見世物にされる。
彼が自身の罪に気付き、真に反省する日が来るまで……
永遠に覚めない悪夢のループを続けるのであった。
おまけのサービスカット?
どうやら、この子も妹ちゃん同様に本性を出さなければ美少女に入る部類のようである……?
こんなんでも、やっぱりクズぷちっでとんでもないざまぁな目にあったあのクズよりマシなんだよねぇ……
まぁ、あれはいろいろなお偉いさんの神様の許可をもらってようやく出来たざまぁ劇なんで……
まだまだ若い慈愛の女神様だけの許可だと、この程度が限界なんでしょうヾ(:3ノシヾ)ノシソレデモジュウブンヒドイケドキニシタラマケデス




