最終話.あたし達ズッ友だよ――世界を越える永遠の約束(後)
泣いても笑っても、これがラスト
果たして、この物語の行く末は……
セーニャを見送った後、部屋に静けさが戻った。
優華はベッドの縁に座り込んで、もらったばかりの押し花をじっと見ていた。真理子は椅子に座り、妹へと向き合う。
「で、これからどうするのよ。原作とはもうずいぶんと違うけど、これ以上にないってぐらいのハッピーエンドの流れには乗ってるわけだけど」
「そりゃもちろん、最後まで見届けるんだよ!セーニャがちゃんと幸せになるのをさ!」
優華は当然のように言った。真理子は苦笑いする。
「まあ、そう言うと思ったわ。私もそれで構わないし」
「でしょでしょ? それにさ、セーニャはこれから女王様になるんだよ。すっごい大金持ちになるんだから、そんな人の元にいたらあれじゃない。あたし達はこれから先お金に困らない、セレブな生活が――」
ピロリロリロリーン!!
突然、頭の上からアラーム音が響いた。
「な、なに!?」
二人が見上げると――空中に、一つのスマートフォンが浮かんでいた。
「な、なにあれ……」
スマホがくるっと回る。それから、軽快な音楽と共に何者かが語り出した。
「この度は短期型異世界体験ツアーのご利用ありがとうございました。尺も迫っておりますので、今から現実へと帰還してもらいます。異論は認めません!」
「「はあ!?」」
ばちんっ!
スマホが強く光った。来た時と同じ、爆発したような閃光。
二人は思わず目を閉じた。
「ちょ、ちょっと待って!?あたしのセレブ生活がぁぁぁぁ!!!?」
妹の悲痛な叫び声が響く中、二人の意識が遠のき……
―――――
真理子が薄っすらと目を開ける。
そこは、家のリビングだった。
パソコンのモニター前には優華が居た。包帯だらけの白いワンピース姿ではない、姉おさがりのパーカーを着た優華は状況がわからず、ぽかんっと口を開けたまま固まっていた。
「……え?」
真理子は自分の今着ている服を見た。向こうでの庶民が着る平民着ではない。制服……目に見えて汚れきってない、きれいな制服だ。
さらに周囲を探る。
食卓の上には夕食。自分と部活のために帰宅が遅い真理子のために、優華が用意していた夕食が置かれていた。
外からは車の音が聞こえる。
「……うそでしょ?!」
帰宅時に食卓へと置いたスマホを起動させる。時刻は午後六時二分。帰宅した時間を逆算すれば……五分も経っていない。
「夢……だったの?」
「違うよ!夢じゃないよ!だって……」
正気を取り戻した優華が否定した。
その証拠として差し出した手のひらには――蒼く透き通る小さな花の押し花が、乗っていた。
「これが証拠だよ、夢じゃない証拠だよ!だってこれは……セーニャがくれたフォンティーヌの花だよ!」
優華は嬉しそうに叫んだ。
帰還直前にはセレブとか俗っぽい事言っていたのに、今はその事をすっかり忘れたかのようにはしゃいでる。
「まあ、優華らしいわね」
真理子は苦笑した。
(なんだかずっと、最後の最後まで私達をあの世界に転移させた“黒幕”の手のひらで踊らされてた気はするけど……もういいわ。夢だろうがなんだろうが、終わり良ければ全て良し。非日常な体験が出来て、無事に帰還もできた。その事実だけで十分!!)
そう結論付け、次にやる事としたらは……
「夕食……食べましょうか」
真理子は食卓におかれた、二人分のハンバーグセットに目を向ける。
その瞬間、優華の目がきらりと光る。
「そうそう、9日ぶりになっちゃうけど、まずはいただきますだよね!ちなみにね!!このハンバーグ、半分は豆腐で出来てるの。ヘルシーで何より安上り!!でも、そのままじゃ食べ応えないから代わりとしてソースを……」
ハンバーグに自作のソースをかけながら、ずらずらとうんちくをのべる優華。
ちなみにだが、伊豆木家の厨房は彼女の管轄下だ。
その理由は、あまり家に居ない母は惣菜派であり、姉の料理の腕前が壊滅的だから。
最初こそ姉の『次こそは』を信じても、日に日に上昇していくメシマズレベルに、楽観的な優華でさえも限界突破。
気が付いた時には、優華が料理を担当する事になってたそうだ。
正気に戻った際は「あたし何やってんの?」で担当を放り投げようとしたが、背後の姉が『妹が世間に誇れる趣味を持ってくれるなんて……』っと、ほろり涙流してたのをみたら躊躇してしまい……
当人も変態趣味に姉を巻き込んでる件で負い目があった事、家計が苦しい事、凝り性といった要素も加わり、今ではただ料理を作るだけではない。嘘偽りない趣味として、安くて美味くてボリュームたっぷりがモットーな節約創作料理を作るまでになってしまった。
そんな自信作を解説する優華に対し、家計を預かってる真理子はレシートをみてげんなりしていた。
(あぁ……この子、また予算オーバーしてる。本人はちょっとのつもりなんだろうけど、そのちょっとが積もりに積もると結構な金額になるわけだし、本来ならこうしたものは注意すべきなんだろうけど……あれだけ自信満々に解説してる優華にいえるわけないじゃない。当人は悪気が全くないだけに……)
「はぁ……なんでこう、帰ってきて早々に現実を見せられて頭を抱えさせられる羽目になるのよ」
「でも、真理子さんってその苦労を楽しんでますよね?」
「……そうね。優華のおかげで退屈しない、刺激的な毎日を過ごせてるし、もし優華が……妹が居ない生活だったら、刺激を求めて夜な夜な街を徘徊する不良になってたかも……
って優華?!てっきりセーニャと思ったじゃない!!?」
「へへーん。なんかね。花からセーニャの声が聞こえた気がしたから、ちょっと代弁してみたの」
優華が指差した先、そこには食卓に置かれた、蒼い透き通る花の押し花。
そこからかすかに……セーニャの笑い声が聞こえてくるような気がした。
「それに予算も大丈夫。今度の休みに子ども食堂を手伝う約束を取り付けてきたから、それで超過分は補えるはずだよね」
どや顔で語る優華に、真理子はなら問題なしっとばかりにグッと親指を立てる。
こうしていつも通りな夕食を食べた後、二人はセーニャがあれからどうなったかを調べるために原作を読んだ。
内容こそ変化してなかったが、挿絵に……最終話のハッピーエンドを締めくくる挿絵に一点……
ただ一点だけ、変化があったのを確認した。
その後は姉妹が介入した事で筋書が変わったセーニャの未来、どんな物語を紡いでいったかというIF話を寝る前まで続け……
翌日、姉妹は各々の学校へと登校するいつも通りの日常へと戻っていた。
それぞれの胸に……
夢の残り香を残しながら……
セーニャ……例え、もう二度と会えなくなっても……
あたし達ズッ友だよ
とぅ びー こんてにゅーど?
あ~うん……あらすじやタグに反して、なぜかさわやかなハッピーエンドで終わっちゃいました。
でもって、次回からは伏線やフラグ回収的な後日談や番外編となります。
俗にいう、もうちょっとだけ続くんじゃ_(:3 」∠)_




