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6.消える命の灯!――最期に妹がみたもの、それは……(中)

拷問回です。

今回ばかりは、グロテスクを通り越したSAN値直葬クラスのやばい描写があるので、苦手な方は次へをクリックするのをお勧めします_(:3 」∠)_チュウコクハシタオ

 ブランシェール家の屋敷の地下の拷問室は、冷たく湿っていた。

 壁の燭台が、ゆらゆらと不気味な影を落としている。




挿絵(By みてみん)


 その中央の天井から垂らされた太い縄。

 先端には優華の頭上高くに掲げられている両手首と繋がっていた。

 つま先が、かろうじて地面に触れている。力を抜けばその瞬間に全身の体重が両手首にかかるため、常につま先立ちしていなければならないこの状況下に置かれてすでに数時間。身体のあちこちに走るミミズ腫れも合わさって、優華の体力と気力は限界に近かった。


 バルド・クレンヌは、優華の正面に立ち、皮製の鞭を手にしていた。顔の左側の刀傷が、ろうそくの灯りで赤黒く浮かび上がっている。


「さて……おチビちゃん。お仕置きはそろそろ終わりにして本題に入ろう。お姉ちゃんとメイドがどこに隠れてるかを教えてくれるよな? 素直に話せば、痛いのはこれで終わりだぜ」


 優華は顔を上げた。短い黒髪が汗で額に張り付いている。疲労と苦痛で息が荒いけど、その大きな茶色の瞳に輝きは失っていなかった。笑いながら、好奇心溢れるような口調で答える。


「……おにーさん。それ、尋問のテンプレすぎない? もっとこう、相手の恐怖をあおる感じのセリフないの? あたし、本物の拷問ってやつをたっぷり観察したいんだけど」


 バルドの灰色の目が、細くなった。


「……減らず口を」


 次の瞬間――


 ヒュッ!


 鞭が空気を裂き、優華に叩きつけられた。


「――っ!!」


 何度も受けてきた鋭い痛みが、胸を走り抜けた。何度も受けてきた皮膚が裂ける感覚に、優華は歯を食いしばって耐える。痛みで視界が白くにじむ。


 ヒュッ! バチィッ!


 二発目。三発目。


 命中した背中やふとももが、焼けるように熱い。鞭を受けた場所から、また血が滲んでいく。


「どうした? 観察するんじゃなかったのか?」


 バルドの声は、楽しそうですらあった。


「……ん、まあね。確かに、痛い。半端なく痛いよ。でもさ……」


 優華は、震える呼吸の合間を縫って、口元を歪めた。それは、笑みだった。


「あは……これ、本物じゃん? あたしがずっと憧れてた、小説の中の囚われヒロインみたいじゃん? ちょっと感動しちゃった……」


 バルドの顔から、笑みが消えた。


「……貴様、何を言ってるのかわかってるのか?」


「わかってるよ。夢が叶ったって言ってるんだ。ありがとね、おにーさん。でも、お姉ちゃんとセーニャがどこにいるかは、絶対に言わない。だってあたし、すでに覚悟完了してるから……」


 優華は、これが覚悟の証だっとばかりに唾を吐き捨てた。

 それはバルドの頬に、ぺたりと当たった。


「……この、クソガキが……そんなに吐きたいって言うなら、たっぷり吐かせてやろうじゃないか!」


 バルドは鞭の柄……ではなく拳で腹に一撃を加える。身体が大きく揺れ、吊るされた縄がギシギシと唸る。


「……が……っは!」


 目を見開く。息が止まる。胃がひっくり返るかのような衝撃。それは血反吐とともにぶちまけられた。


「げほっ……ごほっ……」


 息が吸えない苦しさから無意識化にもだえる。両手首の縄を激しく食い込ませながらもがく。

 自身の意思とは無関係に……


 そんな苦しみもがく優華を見つめるバルドは……いら立っていた。


(くそ!さっきからなんなんだ!)


 先ほどの一撃は、殺す気で放った一撃。

 拷問は生かさず殺さず。その基本を知らんっとばかりの一撃。柄の部分で腹に風穴を開ける一撃を放った……つもりなのに、実際は拳で殴っていた。しかも、内臓を潰すわけでもなく小娘をもだえさせる程度に抑えられた一撃。致死にはほど遠い。


 鞭打ちもそうだった。本来なら服が派手に破けるほどの一撃を放ちたいのに、実際は控え目にしか裂けない程度の一撃。そんな手加減を何者かの意思で、無理やり行わされてるのだ。

 なら、力を込める必要のない拷問具――熱している鉄の棒――を押し付けようとすれば。


『鞭と腹パンは認める。でも、熱した鉄の棒はシャレにならないから許可できないね』


 頭の中に響くその声が、鉄の棒を掴もうとする動作を止めさせた。意思とは無関係に止めさせられた。


(誰だなんだ……?さっきから……俺に命令する、“お前”は一体誰なんだ!!)


『知ってる?世の中、知らない方が幸せな事ってあるんだよ。それより、いくら苛々してるからって子供相手に八つ当たりなんてかっこ悪過ぎ。大人なんだから、もっと大人になりなよ。あーもしかして身体は大人、頭は子供系だったとしたら失礼』


 バルドの問いかけに“お前”は頭の中に直接響く声で応えてきた。だが、それは問いかけに応えてるようで応えてない、ほとんど喧嘩を吹っかけてるかのような物言いだ。

 苛立ちの限界を迎えたバルドはつい怒声を発した。


「ふざけんな!俺がイラついてるのは誰のせいだと思ってるんだ!なぜ、俺に干渉する!なぜ、俺を操ろうとする!!俺の意思は俺の物だ!!貴様なんかの自由にはさせ……!!!!?」


 自身の思考と行動を制御する干渉を気合でかき消しながら、熱した鉄の棒をひっつかむ。それを優華の頬に押し付けようとした……その瞬間、バルドの全身からどっと汗が噴き出た。





「そう……サツマちゃんの指示を無視するんだ。じゃぁ仕方ないね」


 何者かの声が、頭の中に直接ではなく、耳を通して聞こえてきた。

 拷問室には「ん~どうしたの~?」っと涙目ながらもやせ我慢するかのごとく首を傾げる優華以外、誰も居ないはず。なのに、背後に誰かが立っている気配を感じた。


 人間の枠を越えた超常的な“ナニカ”が、背後からこちらを見つめてるような気がした……



(この命を直接掴んでるかのような視線は、知っている……こいつは死神!

 かつての戦場で何度も遭遇した死神の……いや、似てるけど違う!死神は……これほどまでにおぞましくねぇ!

 死神が淡々と任務をこなす『プロの仕事人』だとすると、こいつの仕事ぶりは……子供だ!!

 感情むき出しで、自分の気分一つで命令や規則を平然と破る……『気まぐれな子供』!!

 死神が誰であろうと平等な『死』という慈悲を与えてくれる存在なら……こいつは……気分次第で『死』という慈悲を与えるか決める……その正体は――!!)




 バルドは思い至った。


 先ほどからバルドに干渉していた“ナニカ”。


 今現在、後ろからバルドを見つめている“ナニカ”。


 それは、関わったらロクでもない未来が確定する、決して関わってはならない禁忌の存在――



















 “悪魔”
















 バルドは振り返る。

 生存本能が『振り返るな!』っと全力で訴えてるにも関わらず、バルドは振り返ってしまった。



 そこに顕現けんげんして居たのは――




 一見すれば、ただの小娘。

 ボサボサの短い紫の髪、袖が手の先からだらんっと垂れ、裾を引きずる程にサイズがあってない血汚れた白衣を着た……


 “悪魔”の象徴ともいえる、背中に漆黒の翼を生やした小娘だった。


 そんな小娘改め“悪魔”が、じっと藍の瞳でバルドを見つめていた。


 どこまでも深く、どこまでも暗い、“深淵”と称してもよい一対の藍い瞳でみつめながら……







(動け!やらなきゃ……やられるぞ!)


 死線を何度も潜り抜けてきた傭兵としての本能が、バルドの意思とは無関係に地面を蹴らせた。


「うぁぁぁぁ!!」


 大きな体が、一直線に“悪魔”へと突っ込む。

 熱した鉄棒を持った手で一直線に振りかぶる。


 それは、優華がバルドに挑みかかった図の焼き増し。

 決して勝てない相手に勝負を挑む構図であった。


 バルドはそんな優華に、あえて一撃を受ける『酔狂』を選んだ。

 目の前の“悪魔”によって、『迎撃』の意思を、無理やり『酔狂』に書き換えられた。



 なら、“悪魔”が選ぶのは当然……




 ガシッ!



 背中に生えている漆黒の翼を自身の影へと溶け込まながらバルド目掛けて這い寄らせ、その影からぬるぬるとした漆黒の手を無数にニョキニョキっと伸ばし、全身を絡みつかせながら掴みとる。


 他者には『酔狂』を強要するのに、自分は『迎撃』という、ダブルスタンダードともいうべき選択を取った。


『汚いな、さすが“悪魔”汚い』なんて、どこかからののしる声が聞こえても、“悪魔”にはわざわざ『酔狂』を選ぶ理由も必要性もない。


 外野の声も体面も気にせず、自分が取りたいと思った選択肢を躊躇なく選ぶ。

 その自分本位の思考こそが、“悪魔”の“悪魔”たる所以であり、関わりたくない一番の理由である。


 そんな自分勝手極まりない“悪魔”は身動きが取れないバルドへと見せつけるかのように両手を掲げた。袖に隠れていた両手が姿を現わす。

 普通の人間と何ら変わりもないその手にはメスが……見るも悍ましい、禍々しい気配をぷんぷんと漂わせたメスが何本も掴まれていた。


「――――――!!!?」


 バルドは必死に身をよじる。塞がれた口で声なき悲鳴をあげる。

 迫りくる“悪魔”から逃れようと……絶対の“恐怖”から逃れようと必死にもがく……

 その様は、蜘蛛の巣にからめとられた“虫”。巣の持ち主に梱包された“虫”そのものであった。


 そんな“虫”を見ながら、“悪魔”は笑う。



 人間の幼子のように……



 無邪気で……



 純粋で……



 穢れを知らない……



 それ故の、強い、強い、幼子特有の 残 虐 性 が宿った笑みを浮かべながら……






















 宣言した。






















 “君のような、言う事聞かない駒は……”

























 イ チ ド バ ラ シ テ ツ ク リ ナ オ サ ナ イ ト ネ















挿絵(By みてみん)































「……クソッ」


 一瞬……あくまで作中では一瞬の間の後、バルドは熱した鉄棒ではなく、鞭を放り投げ、優華へ一瞥すると同時に拷問室を後にする。


 優華は、一人……そう、一人残された。
















 ………モニターに誰も居ませんよ?















 おまけの没絵


挿絵(By みてみん)


 AIさん、『両手吊り』をどんな解釈したらこんな『吊り緊縛』のイラストになっちゃうのよ(´Д`;)ワケガワカラナイオ

拷問する方が一番悲惨な目に合うって……


わけがわからないよww

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― 新着の感想 ―
吊るされた状況。ムチ打ち。定番ですけど、女の子なんだからその反抗はしない方が。それをしたせいで、片目を潰された子が居るんだから。口枷を強制的に着けさせられた子もいるし。 本格的な事は出来ない。その事…
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