4.決死の脱出劇!――妹の目指す先は大泥棒(中)
これは突っ込みシーンなのか、それともサービスシーンなのか……
どっちに該当するのだろうか?
AIは何も応えてくれません(´・ω・`)書BOO
「ちょーギブギブギブ!!お姉ちゃん、あれはちょっとした冗談だから!ちゃんとしっかりした案あるから、止めて止めて止めてぇぇぇ!!」
「うっさい!言いたくなる気持ちはわかるけど、時と場合ってものを考えろや!この愚妹がぁぁぁぁぁぁ!!」
地下牢に優華の悲鳴が響いていた。
真理子はこんな時にボケをかました優華に容赦ない突っ込み。
今まで縛られてたから出来なかった突っ込み。うつ伏せになった優華の背に座り込み、クロスさせた足を思いっきり反らせる、サソリ固めを決めていた。
これだとスカートが役立たずとなる優華は当然ながら、真理子も位置次第だとみえてしまう。
みえなくとも、二人ともふとももはしっかりさらけ出すという、ある意味ではこちらの方が需要の高い、姉妹揃ってのサービスカット。通称『姉妹丼』が披露された。
セーニャはそんな姉妹丼を止めさせるべく真理子にすがりつく。
「やめてください!こんなに騒がれると、牢番が来てしまいますって!」
「そ、そうそう!セーニャの言う通りだって!これ以上やられるとあたしもっと騒いじゃう!そしたら、今度は厳重に縛られちゃうよ!具体的にいうと、逆海老縛りとかされちゃうよ!それでもいいの!?あたしはバッチコーイなんだけどねー!」
(この子はどこまでブレないっていうの!!)
でも、このまま技をかけ続けたら本当に牢番が様子を見に来て……逆海老縛りされる未来がやってくる。
そんな未来はごめん被るので、真理子はセーニャから宥められるがままに技を解いた。
優華は技の影響でしばらくうつ伏せのまま、パンチラしたままぐったりとしていたが、やがて何事もなかったかのごとく立ち上がる。
「はーなんか久々に受けたな。お姉ちゃんのプロレス技」
実際は一週間ぶりでそこまで久々ではない。しかし、異世界に移転してからの二日間が濃厚すぎるので、彼女にとっての一週間前は十分に久々なのだろう。
優華は遠い昔のような現代日本での日常を思い出しつつも、今はそれどころじゃないっと振り払い、仕切り直すかのごとくこほんっと一つ咳をつく。
「じゃぁ、改めてあたしの考えてる『プランB』だけど……それはね」
優華は唐突に自分のパーカーを脱いだ。
(またボケかっ!?)
真理子はツッコミたい衝動を、さすがに二連続のボケはしないだろうっと思い直す事でぐっとその衝動を押さえて成り行きを見守る。
そんな優華は寒さで少し身震いしながらも、パーカーの裏地を真理子とセーニャに見せる。そこには小さな隠しポケットが縫い付けられていた。
「え……それ、何が入ってるんです……?」
セーニャがそっと覗き込むと、優華はそのポケットから細長い金属片を二つ取り出した。先端が微妙に曲がっていて、素人目にはただの針金切れのようにしか見えない。
「ふふん、これはね、あたしがネットで調べて自作した鍵開けツールだよ!南京錠も自転車の鍵もポストの鍵も、これでいっぱい開けてきたんだから!」
再度、(彼女にとっての)遠い昔の日常を思い浮かべていく優華に真理子は頭を抱えた。こめかみがズキズキと痛む。
「ちょっと待って。あんた、そんなものを作って、日常的に鍵を開けてたってこと!?あんたは本当に何を目指してるっていうのよ!」
「もちろん捕らわれのお姫様。だって、こういう技術持ってる捕らわれヒロインをちらほらみかけるから、どうせならっと思って―――」
「どうせならっで、そんな泥棒技術を身に着けるな!っていうか、現実でやるな!警察のお世話になった事はないわよね?!」
凄まれる姉の迫力に、慌てて否定する妹。
「さすがにないって!お姉ちゃんも知ってるでしょ!あたし、そういう手が後ろに回るシチュエーションは好みじゃないって事!」
「だったらいいけど……あーもう!お姉ちゃんは妹の行く末が心配でならないわ!素材はいいのに、なんでこんな『残念な美少女』へと続く道を突っ走っていくのよ……」
真理子の悲痛な訴えが地下牢に響き渡る。セーニャは呆気にとられたように二人を見ていたが、すぐに小さく笑い声を漏らした。
「真理子さんは、なんだかんだ言いつつも、優華さんのことが好きなんですよね。大切に思っているのが伝わります」
「なっ……別にそういうわけじゃ……」
真理子は顔を赤らめて口ごもった。優華はそんな姉を見てニコニコしながら、鉄格子へと歩み寄る。
さすがに地下牢の扉なんて初めてだが、だめなら『プランA』にすればいいっと思いながら、小さな手で器用に二本のツールを鍵穴に差し込む。カチカチと金属が擦れる音が不規則に響く。
(ふむふむ……これは南京錠と大体同じ作りっぽいね。なら、まずこの一つのピンを押し上げる。次のピンはちょっと奥にあるから、ツールを斜めにして……)
優華の目つきが変わった。いつもの無邪気な少女の顔ではなく、職人のような集中力が宿っている。真理子は普段なかなかみせてくれない妹の真剣な表情を、黙ったまま見守っていた。
カチッ。
小気味よい音がして、優華は試しにっと扉を軽く押す。扉はギギギッと蝶番からさびた音を響かせながら開いたのだ。
「成功したよ、お姉ちゃん!」
優華は振り返って、無邪気な笑顔を見せた。まさか本当に開けてしまうとは思わなかった。思いたくなかった真理子は深いため息をついてから、諦めたように微笑んだ。
「……あんたのそういうところ、ホントに怖いわ。でも、今は感謝するしかないか」
「そうだ、お姉ちゃん。次からはどや顔で『こんなこともあろうかと』するためにナイフ……いや、十徳ナイフをパーカーの裏に仕込んでおくからね」
「……もう好きにしなさい」
真理子はもはやツッコむ気力も失せていた。
―——
三人は開かれた扉から地下牢の外へと忍び足で出る。暗い通路を近場から拝借してきた手燭の灯を頼りに進み、同じ階層にある古びた倉庫を目指す。小説の描写によれば、そこに秘密の抜け道の入口があるはずだった。
※ 手燭 ろうそくを灯す燭台に取っ手を付け、持ち運べるようにした明かり
倉庫にはホコリが積もり、使い古しの樽や木箱が乱雑に積まれている。優華は第十三話、十六歳となったセーニャが仲間と共にブランシェール家の屋敷へと潜入していく際の描写を思い出しながら、壁に沿って歩いた。
「……あった。ここだよ」
彼女が指さしたのは、大きな棚の裏側に隠された小さな木の扉だった。一見すると壁の一部にしか見えない。蝶番にはサビが浮き、長い間使われていないことがわかる。
扉を開けると、中から冷たく湿った空気が流れ出てきた。先は深い闇に包まれていて、ろうそくの灯すら吸い込まれそうだった。
「…………」
セーニャが息を呑み、一歩後ずさる。真理子もごくりと唾を飲み込む。
「大丈夫。あたしが先頭を行くから」
優華は怖気ずくことなく『闇』が支配する狭い通路へと入り、安全を確認した後にそっとセーニャへと手を差し伸べる。
「セーニャ、怖いよね。でも、ここを通れば外に出られるんだ。あたしを信じて」
「わかりました。優華さんを……信じます」
セーニャは震える手で優華の手を握る。真理子も優華に向かって、殿は任せておきなさいっと伝えた。
―——
通路は地下牢以上の冷たい空気が漂っていた。
湿った地面からはぬるりとした感触が靴底に伝わってくる。壁に手をつくと、ひんやりとした石の感触。天井は低く、大人なら頭をぶつけそうだ。
先頭の優華が持つ、頼りないろうそくの灯りを目印として前へ前へと進む三人。
「この先、分かれ道があるはず。右手に進むのが正解」
優華は小説の記述をたどるように道を選んでいく。原作の描写と逆の手順であることが、かえって暗記した道順の確認になってるようだ。
「ま、また分かれ道……どこへ進めば……?」
セーニャの声が震える。暗闇の中で迷子になる恐怖が、彼女の心を締め付けているようだった。
「大丈夫、左だよ。あたしがセーニャに感情移入せず読んでなければ怪しかったけど……全部覚えてるから安心して」
優華は振り返らずに答えた。その声には絶対の自信が込められている。
真理子はセーニャ越しでの妹の後ろ姿を見つめながら、複雑な心境を抱えていた。
(あんた、いくら感情移入しながら読んでても、普通はこんな事まで覚えないものよ……)
妹のどこかズレた記憶力にまた頭痛がぶり返してきたと思ったら、優華が急に立ち止まった。
「見て、はしごだよ!」
通路の終点には、石壁に埋め込まれた古い木製のはしごがあった。上を見上げると、小さな光が漏れている。月明かりだ。
優華が先に登り、(小学生にとっては)重い蓋をよいしょっと押し上げる。
ザアアアア……。
森の匂いが、地下通路に流れ込んできた。夜空には無数の星々が輝き、月が銀色の光を降り注いでいる。樹々の間を抜ける風が、三人の髪を優しく揺らした。
序盤はオオボケしてた妹ちゃんだけど、後半は大真面目なヒーローとなってました。
妹ちゃんは普段こそあれでも、決めるところはきっちり決めてくれるのです。
まぁ、お姉ちゃんとしては、普段からこうしてほしいって思ってそうだよねぇ……
というより、妹はやれば出来る子と知ってるだけに、ストレスがマッハなのかも_(:3 」∠)_マジデイグスリアゲタクナッテキタ
ちなみにだけど、その頃の牢番は同僚から(がめてきたものを)わけてもらったワインをしこたま飲んでる酔っ払い。
子供3人で襲っても純分勝てる程度の弱体化食らってる状態だったりします。
まぁ~優華が鍵開けしちゃったのは黒幕さん驚いたけど、ずるしてるわけでないから『( ΦωΦ)σ ヨシ!』にしたそうだw




