第5話 意外といい奴?
なんだアイツー!!
俺は理玖と六原を見ながらヤキモキしていた。
近い! 近いぞお前ら!
六原って奴、初対面のくせにやたらと理玖に馴れ馴れしくない?
いくら自分のタブレットないからって顔寄せ過ぎだろ。
陽キャなのか。コミュお化け?
あ、なんか喋ってる。
理玖がちょっと俺を見た!
困る様なこと言われてねえだろうな……
気になって授業に集中出来ない。
なんだろうこの焦りの様な気持ちは。
ダルい物理の授業がいつもの何倍もの時間に思える。
ようやく1限が終わって、短い休み時間になった。
移動教室もないから早速理玖の側に行く。
隣の六原目当てなのか、数人が寄って来た。
「俺は太田だ。よろしくな。
あのさ、六原って芸能人だよね?
去年エトフリのドラマ『それでも彼女は迫って来る』の主人公の親友役やってなかった?ジェンダーレス男子って設定で」
取り巻きの一人が言った。
「うん、よく知ってるね」
彼が笑顔で返す。天使の様な微笑みだ……
「姉貴がリビングで観てたんだよ。マジか、本人じゃん」
「すっげ。実物めっちゃ美人だな」
「なんでまたこんな地方の学校に?東京にいたんじゃないの」
みんなが口々に言う。
「あー……一応芸能界は休業してるんだよね。ちょっと思う所があって……」
六原は少し困った顔になって返した。
「ふうん。それにしても、ホント姫顔してるよな。
白藤とは違う系統の綺麗さっていうか……なあ、黒崎」
急に俺に振るな。
「あ、ああ……」
「あ、コイツは黒崎湊。白藤のツレ」
太田が六原に雑に俺を紹介する。
「白藤君の?」
「そ。幼馴染らしい」
「そうなんだ、よろしくね」
六原が俺を向いて言った。
「……よろしく」
俺も短く返す。
その間に話題が『姫』に移っていた。
「白藤が『姫』だから六原は『伊織』って名前だし『織姫』はどう?」
「おー、いいね『織姫』」
「姫が二人とか、すげーなこのクラス」
「ははは」
皆が笑い合う。
お前達も距離近いわ!
転校生に気を遣ってるのは分かるけど……勝手に姫扱いして嫌じゃないんだろうか。
まあ、理玖の事も勝手に言ってるか。
そう思って彼を見た。
さっきから黙って、どうしたのかな。
転校生が隣で緊張したのか。案外人見知りな所もあるしな……
その内チャイムが鳴って、各自が自分の席に戻った。
そして午前中の授業が終わり、昼休みになった。
理玖が六原を伴って俺の席まで来る。
「今日は三人で昼を食べよう。
後、六原が学校の中を案内して欲しいんだってさ。
湊も一緒に行けるかな?」
「あ、うん、いいよ」
突然の申し出に俺は戸惑いながらも返事をした。
今日は教室で、椅子を持って来て三人で食べる事にした。
周りの奴らも俺達を気にしながら、それぞれが飯を食っている。
六原が大きな弁当箱を取り出して言った。
「高校通うのに実家から離れて祖父母の家に暮らしてるんだけど、婆ちゃんが張り切ってこんな弁当作ってさ……
職員室でついでに割り箸もらって来たから、良かったら少し食べてくれないかな」
そう言って照れながら箸を渡して来た。
折角だから、俺も理玖もおかずを少し貰った。
……美味い。こんな家庭の味そのものの弁当、久しぶりだなあ。
六原は飯を食いながらやや緊張した様子で語る。
小さい頃から親の勧めで劇団に入っていた事。
子役の時は、小学校を休んで地方公演に回っていた事。
中学では仕事で修学旅行にも行けなかった話……
「親のエゴで芸能界に入らされたから、普通の友達は作る機会がなくって……
大人ばかりに囲まれてて、人当たりだけはこんな感じなんだけどね。
学校に行っても女子に煩く纏わり付かれたりしてさ……
だから男子校で普通の学校生活を送ってみたいんだよね、僕」
そう言って不器用にまた微笑んだ。
その顔はどこか寂しそうで、確かに女子が騒ぎそうな美貌だった。
まあ、早速『織姫』なんて名付けてキャーキャー言ってる男子もいるけどな。
……あれ?
六原って案外飾らないし苦労性だし、いい奴なんじゃないか?




