話よりも量が気になって仕方ない
「アラン」
実践授業が終わり、演習場から出ようとすれば、後ろから呼び止められた。
「なに?」
先程捕縛されたクラスメイトのところでドン引きされていたはずの彼女がそこにはいて、指先を合わせてもじもじしている。
彼女にしては珍しい行動だ。
突進していった感じからも次の授業前くらいまで質問攻めにしててもおかしくないのに。
「あのね、お昼、一緒でもいい?」
これまた珍しい問いにぼくは一瞬言葉に詰まった。
だって、これまでそんな誘いを受けたことない。一体どうしたっていうんだろうと彼女を見れば、興味のある対象を見つけた時と同じように瞳を輝かせていた。
何で?!
興味惹くようなことしてないはずなんだけど?!
理由は解らないけど、ぼくは昼食を一緒にとることになった。学園の食堂はカフェテリアなので、男女で食事をとったところで、婚約者がいなければ大騒ぎされることもないし。
残りの授業は若干うわの空だったけど、仕方ない。
「で、何で一緒にお昼しようと思ったの?」
本日のオススメ定食を手に、開口一番そう尋ねた。彼女の手にはオススメ定食ではなく、幾つかの料理が載っている。
「まだ答えてもらってないから」
あれは答えないんだって態度で示してたんだけど、伝わってなかった。そりゃ、興味のある対象を見つけた時と同じように瞳も輝くよね。
「踏み込むライン越えてるよ」
「なぜ」
「なぜも何もさ、ぼくたち思春期だよ?」
「だから?」
伝わらなさすぎて、あやうく小鉢を落とすところだった。はっと我に返って小鉢を支え直す。
食事の手は止とまってないけど、答えるまで帰すつもりはないと言わんばかりの目力に、がたりと椅子ごと後退しかけた。
「いやさ、ああゆう、個人的すぎる羞恥を伴う質問はさ、するべきじゃないよ」
「学園じゃなかったら良い?」
「ダメでしょーよ」
何でそんなに興味惹かれてるんだろう。というか、毎回色んな人たちに怒られたり、ドン引きされているというのに、何故止めないのか。
いや〜、長い付き合いだけど、ぼくにもさっぱり理解できないよね。
それよりもボリュームのあるサンドウィッチやポテトフライが彼女に吸い込まれるようになくなっていく不思議。
食べ方が汚いことはなく、気づいたら消えている感じで、でも細い身体のどこに消えたんだって量を食べている。ボリュームのあるサンドウィッチだって、トレイに幾つか積まれてたし、ポテトフライだって山盛りだった。
ポテトフライって芋なわけで、それだけでだいぶお腹に溜まりそうなのに、それも山盛り、サンドウィッチも肉が挟まったものやフライが挟まったものばかり。
一応、付け合わせ程度のサラダもあるけど、成長期であるぼくやクラスメイトの男子より食べてるんじゃないかな。
「前から言ってるけど、性的なことは特に人前でする話じゃないから」
「知らなければ、間違ってても気づかない」
「いや、それはそうだけど」
確かにと頷いてしまってから、こうやってドツボに嵌っちゃうんだと反省する。そう理屈は解らないでもない。
けど、常識的なヤツだよ。
う〜んと唸るぼくを置いて、彼女はカウンターへ向かった。食べ終わったから食器を片しに行ったんだなって思いつつ、ここからどう逃げようかと考えてたら。
目の前に大きなパフェと、パンケーキと、何だろう。プチフール的なやつかな。甘いの詳しくないから解らないけど。
まぁ、そんな甘いものがドーンと。
ドーンと。
え。さっきめちゃ盛りのポテトフライと、積まれたサンドウィッチ食べてなかったっけ。
もう彼女の話なんて半分も耳に入ってこなかった。




