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箱庭ぱらだいす! Hakoniwa Paradise -“Arcadia” of graffiti-  作者: Saku†Project -ParadoX-
番外編・special
40/41

【2017クリスマス】リリウムとユウリの、悪夢が蘇るクリスマス?!〜聖夜の夢の中へ〜(3) 《We wish you a merry christmas,and past nightmare?!》

一方で、“悪夢”達はというと。

きらびやかなデコレーションが施された、地上からではその全貌が分からないほど大きなツリー。そのツリーの、雲にまでかかりそうなほど高い頂上に飾られている星付近にいた。

白く冷たい雪はただひらひらと、地面へとゆっくり舞い降りている。

『これで計画は完成する……!』

サタンクロースは聖夜を抱えながら、自信げに不気味な笑みを浮かべていた。

少女もまた、不気味な笑みを抑えられずにいる。

『にひひ……クリスマス……滅亡するね……!』

『これを今から黒く染めてやるのさ、聖夜も手伝ってくれるよな』

聖夜は無気力なまま、サタンクロースに抱かれている。彼女は人形のようにただ、動くこともなく、目を開けたまま前を向いているばかりであった。

そんな彼女を見ると、サタンクロースはこう言った。

『そうか。なんとも言えないのか。まぁ、ここでもたもたしている暇は無い。リリィ、行くぞ』

『行くの』

サタンクロースと少女は、ツリーの頂上の星の部分に近づく。サタンクロースが星に触れると硬そうなそれが、触れたところから水面のように柔らかくなる。そして彼らは、星の中へと入っていった。

その背後を追うように、結晶のような六枚翼で宙に浮かぶユウリと、彼の背中にまたがっているリリウムが現れた。

二人は、“悪夢”達が入っていったツリーの頂上の星を見つめる。

「本当に大きなツリーなの……」

リリウムは、そのツリーの大きさにただ息をのむばかりだ。

「この中に奴らがいるのか……」

ユウリは早く“悪夢”にリベンジし、聖夜に“希望”を届けて事を終わらせたいと思っていた。

それはリリウムも同じだった。

「もたもたしていたらあいつらにやられるの。行くの!」

二人は、ツリーの頂上の星の前に移動した。しかし、それを触ってみるとカチコチと固く、表裏調べたがどこにも入れる余地がない。

「……どうするの」

リリウムは、少し不機嫌そうな顔になる。

「大丈夫。アレを使うから」

ユウリには、この状況を打破する方法がすぐに思い浮かんでいた。

それに対し、リリウムはきょとんとする。

「アレ?」

「うん。目を閉じてろ」

ユウリに言われるがまま、目を閉じるリリウム。

「開けていいよ」

そう間も経たずにユウリは言った。

リリウムは再び目を開く。すると、感嘆を上げて目を輝かせる。

「綺麗なの……」

二人は宇宙空間の中にいた。果てしない暗闇の中に無数の星が360度、ほんのりときらめいているのが見える。そのわずかな星の輝きは、今にも消えてしまいそうなほど儚いものであった。

それに見とれていたリリウムの視界に、ふと黒い渦が映る。

「あれは、ブラックホールなの……」

彼女の視線は、その深い深い闇に吸い込まれていく。

するとユウリの持っていた“希望”が、不透明なラッピング用紙に包まれているのにも関わらずに光り、ブラックホールに向かって光の筋を指す。

「あそこに何かあるのか?」

ユウリも、“希望”が指すブラックホールをじっと見つめる。

「とりあえず進めなの!時間がないの」

リリウムの合図で、二人は“希望”に導かれるがままブラックホールの中に入っていった。





ブラックホールの中。“希望”が指す通りに“悪夢”達はそこにいた。

そこは暗闇の宇宙の中に建つ、暗い教会の中だった。黒いろうそくの灯りだけが彼らを照らし、柱も、祭壇も、壁も黒い。それに映えるかのように祭壇の背後に飾られている十字架の半透明さ、真ん中にひかれた祭壇へと続くカーペットの真紅、ろうそくの火の紫だけがそこにある色彩だった。

『ナイトメア様、例の娘を連れてきました』

サタンクロースは、少女と共に跪いていた。その視線の先には十代前半くらいであろう、黒紫色の道化師風の服を着た少女が大きな十字架の前で、小さいながらにも貫禄を見せつけていた。

「きゃははっ。これで子供達の夢がひとつ、終わるわね〜」

ナイトメアは片手を輪郭に添えて、考え事でもするような仕草で高らかに笑っていた。

『この子がそうです。名前は聖夜といいます』

サタンクロースは、お姫様抱っこで聖夜を抱えナイトメアに差し出す。聖夜は修道士風の黒いワンピースに着替えさせられており、ぴたりとも動かない。

「あー……そこの祭壇に置いといてよ。私、持てないから」

サタンクロースは立ち上がり、祭壇の上に聖夜を寝かせた。置かれたそれは目を開いたまま、祭壇からはみ出した腕や脚を力なくぶらんとさせて横たわる。

そしてサタンクロースは、ナイトメアの前に戻る。

ナイトメアは、それと入れ替わるように聖夜に近づく。聖夜の周りをぐるぐると何周か歩くと彼女の輪郭に指を沿わせ、あごをあげると自分自身の顔を近づけた。

「本当アンタってブス。名前も男の子みたいで紛らわしいし、なんだか響きがムカつく。けれど一回ここから逃げ出したとはいえ、三年もの間、つまらない現実よりずーっと素敵な夢の相手をしてくれたんだよね?きゃははっ。それは少しくらい感謝してやってもいいわ」

ナイトメアのつぶやきは冷たく、鋭く、そして悪意にまみれたものだった。しかし聖夜は涙も口の一つも動かさず、受け入れるかのように無反応なままだ。

そんな聖夜を見てナイトメアは、気味がいい様子でふっと笑った。そして十字架を背景に、祭壇と聖夜の前で手を真上に振り上げる。

「さぁ、行くわよ!」

ナイトメアの掛け声に、サタンクロースと少女も立ち上がった。

その時だった。

「見つけたの!!」

「今すぐその子を離しなさいっ!!」

礼拝堂の入り口の扉が勢いよく開き、光の輝きを纏ったリリウムとユウリが現れる。

「私の手下の……コピー!?」

二人を見るや唖然とするナイトメア。

「オリジナルだ」

ユウリも即レスで答えた。

「そっちこそりり達の真似して悪い事して!風評被害なの。許さないの!」

一方のリリウムは、偽物扱いされたことに対し指差しで“悪夢”達を批判する。

ナイトメアも黙ってはいない。

「いい?私の可愛い手下達は私にとって本物よ。そしてここは、子供達の夢の核の部分。子供達は、もう私達のことを少なからず本物って思ってるわ。だからアンタ達は、これから“悪夢”のコピーとして、濡れ衣を被せられて幻惑の中で過ごすの」

「なんでそんな事が言えるの!」

あまりにもおかしな理屈に、リリウムは感情が高ぶる。

「それは、この絵に描いてあるからよ!」

ナイトメアは何もない手元から、手品のように一枚の紙を出現させる。そしてその紙に指示を送るかのように、リリウムとユウリの方へ手のひらを向ける。

すると、その紙は指示を受け入れるかのように二人の元へ飛んでいく。

それを受け取ったのはリリウムだった。ユウリにも見えるように寄せ、二人でその絵を見ると……

「これって、りり達……」

「何だよこれは……」

そこに描かれていたのは、“悪夢”───リリウムとユウリそのものだった。ユウリがサタンクロースに扮し、彼の抱えた袋の中からリリウムがひょっこりと顔を抱えている。クリスマスとは思えぬ暗い背景に、悲しい赤が飛び交う絵。それは、クリスマスが嫌いで描いてるのか、果ては単なる悪戯なのか、作者の意図や心情が謎に感じられる。

二人はそれを見ると、どことない気味の悪さにどっと襲われた。ユウリに至っては、その画風を身近などこかで見たことのあるようなある気がして、それが気持ち悪くて仕方がないようだ。

二人の歪んだ顔を見てナイトメアは、これまた気味が良さそうに笑う。

「きゃははっ。二人ともいい感じ!私にはよくわからないけど、もしかして、二人はこの絵を描いた人を知っているとか?」

「そんなの……りりにも分かんないの!」

リリウムは、馬鹿じゃない?と呆れたような目でナイトメアを見る。

「……いたとしても知りたくない!」

ユウリも、動かされる本心を抑えて強く言い返す。

しかしナイトメアは、その微妙な違いに気づいてクスクスと笑う。

「そう。でも本心はどうなのかな……」

ナイトメアは、ぱちんと指を鳴らした。

すると星形の輪がユウリを囲む。

ユウリは輪の外へと瞬間移動し、それを回避する。

「ちっ」

ナイトメアは、同じようにいくつもの星形の輪でユウリを捕捉しようとする。彼もまた、同じように回避行動を繰り返していく。

乱れ打たれたそのうちの一つが、ふとリリウムを捕捉する。

「うぐっ……!」

激しい締め付けに悶えるリリウム。その締め付け方は尋常じゃなく、まるで彼女を捻り潰すかの勢いだ。

「リリィ!」

ユウリがふと、そちらに気を取られたその時だった。

「ぐふっ!」

彼もまた、輪に捕捉されて締め上げられた。それと同時に、ずっと持っていた“希望”も地面に落ちる。

それを見たナイトメアは、嘲笑する。

「余計な気遣いをするからこうなるのよ!!既に分かっていると思うけど、これは、どんな手を使って避けようと思ってもまとわりつくわよ」

「そんな訳ある……かっ……」

ユウリは締め付けられるそれから脱出しようとするも、うまく力が入らない。

「きゃははっ。言うまでもなく見てて笑える。処分は頼んだわよ、手下達!」

そう言って、身動きの取れないリリウムとユウリを指差すナイトメア。

サタンクロースと少女は一瞬で、不自由な彼らの元へ向かう。お互いにそっくりの存在を抱えると、彼らの耳元でニタァと笑う。

『お前らはもう逃げられない』

『りり達を、偽物って言って邪魔したことを後悔させてやるの』

サタンクロースと少女は、それぞれお互いに似た存在の耳元でそう囁く。そして前に気絶した時と同じ、黒い稲光をちらちらと発し始めた。

リリウムとユウリは、お互いにもうどうにもならないとも感じていた。

その時だった。



『諦めちゃダメ!私も手伝ってあげる!!』



床に落ちた“希望”が、まばゆい光を発して膨らみ、包装紙ごとビンがパリンと割れる。肥大化したそれは、リリウムやユウリ、“悪夢”達を包み込む。

『うわぁああああああ!!やめろ……っ!!』

“悪夢”のサタンクロースと少女はあまりに強い光に耐えられず、どろどろと溶けて空間上から消えてしまう。

それと同時に、リリウムとユウリを捕捉する輪もスッと消え去った。

すぐ側で見ていたナイトメアも、その眩しさから祭壇の影に隠れる。

「何なのよ!この光!嫌ぁぁあああ!!」

隠れても見えてしまうその光に頭を抱え、嘆くナイトメア。

一方でリリウムとユウリは、自然に活力がみなぎっていく。

『さぁ、行きましょう。彼女の心の中へ』

“希望”は、二人がどこかで聞き覚えのあるような優しい声でそう言うと二人を重力で引っ張っていく。

その光は、リリウムとユウリを取り込んだまま、聖夜の胸の中へ吸い込まれるようにして入っていった。

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