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箱庭ぱらだいす! Hakoniwa Paradise -“Arcadia” of graffiti-  作者: Saku†Project -ParadoX-
番外編・special
41/41

【2017クリスマス】リリウムとユウリの、悪夢が蘇るクリスマス?!〜聖夜の夢の中へ〜(4) 《We wish you a merry christmas,and past nightmare?!》

“希望”に導かれたリリウムとユウリは、再び暗い所へと出た。

そこは、聖夜の夢の中のような淀んだ色の空にぽつりぽつりと木が生えている。それは真っ黒に枯れ、所々脆く崩れており、それが灰となって地面に落ちていた。地面も割れ、所々水が染み出し、そこはグチュグチュの泥と化しているではないか。

そんな中でリリウムとユウリは、気味の悪さを感じながら辺りを見渡していた。“希望”は、そんな二人をホタルのように照らしながら状況を説明する。

『ここは、聖夜の心の世界です。“悪夢”に侵食されて、ずいぶんと酷いことになっていますね。このままでは危険……あそこにきっと彼女がいるはず。行きましょう』

“希望”は、ぽつんと一軒建っている黒い家に一筋の光を示した。

リリウムとユウリはお互いにうなづく。静寂の中二人は、にちゃにちゃと泥を踏む音を立てながら走る。

『気をつけてくださいね。何があるか分かりませんから』

“希望”は、二人についていく中で心配していた。しかしその心配も全くなく、無事家の前にたどり着く。

「ここか」

ドアにノックをするユウリ。

するとドアはドアノブに手をかけるまでもなく、ギィ……と、きしむ音を立てながら開く。

「このドアすぐ開いたの……」

リリウムはそれを不思議そうに眺めていた。

開いた扉の先は更に暗く、部屋の奥の暖炉の火が紫色にパチパチと燃えるだけである。

『さぁ、この先です。そこの階段を上ってください』

光の筋を描きながら、暗闇をランタンのように照らす“希望”。リリウムとユウリはその光を頼りに家の中に上がり、階段を上っていった。

二階に上がると“希望”は、その先のある部屋に光の筋を差す。二人はその部屋に向かい、扉をそっと開く。

床の上には聖夜が倒れている。周りにはベッドや勉強机、収納家具などがあった。

リリウムとユウリは、彼女に駆け寄ると身体にそっと手を置き、安否を確かめる。触れた体温は冷たく、まるで死体のようだ。

「死んでいるの……」

リリウムは、悲しさを露わにした。それは無言で語るユウリも同様だった。

その一方で、“希望”はそれらしく二人を励ます。

『今ならなんとか大丈夫でしょう。とにかく何かと時間がありません』

“希望”はそう言った後に、今度は彼女の耳元でささやき始める。

『聖夜、聖夜!』

「ん……」

聖夜が小さく唸り声をあげる。その声を聞いた皆は、とりあえず一安心する。

しかし“希望”は、そこで止まらずに話を続ける。

『よかったわ……ねぇ、起き上がってみて?』

聖夜は起き上がった。彼女は、白眼が黒い“悪夢”のような瞳でリリウムとユウリを少し見ると、すぐにそっぽを向いてベッドの布団の中に引きこもってしまう。

それでも“希望”は、聖夜に語りかける。

『二人は“悪夢”達に負けてもめげず、アナタのためにここまで来てくれたのよ』

聖夜は、無言で布団の中に引きこもったままだ。

「聖夜……!」

ユウリは、聖夜のもとへ行こうとする。

リリウムは、そんな彼の手を掴んで引き止めた。

「今りり達が下手に出ても、余計に心を閉ざすだけなの。だから、“希望”に任せるの」

ここは一歩下がって見守ることにした二人。

一方で“希望”自身も、しばらく聖夜のすぐ側で言葉を発さずに見守っていた。

すると。しばらくして、聖夜が細々と話し始める。

「私のことなんていいから、どこかに行ってくれない……。私はもう、何もかも壊れてしまった方が楽……」

その言葉を聞いた“希望”。その輝きは、言葉に科学反応を起こしたように急に強くなり始めた。

『何を言ってるの!何もかも壊れたらおしまいって訳ではないけれど、アナタの為にはならないわ。アナタは、本当は望んでいるはず。希望も楽しみも、何よりこの“悪夢”から解放されたいと』

「私はもういいの!!希望なんて、楽しみなんて、また崩れ去るはず。綺麗事ばかり言わないでよ……どうせ夢も現実も悪夢ばかり。大体、私の声を真似しないでよ……“悪夢”とあの二人の事だけでもう頭がごちゃごちゃなのに……。今日はもう最悪……』

ベッドの中から、聖夜のすすり泣く声が聞こえてくる。

“希望”は、そんな彼女に今度は優しく語り始めた。

『聖夜。本当のアナタは、段々と大人びてくる同じくらいの子たちよりもたくさん、まるで無垢な小さい子達のようなキラキラとした夢と希望を抱いていた。だからサタンクロースに連れ去られても、存在が今生きている場所から消えずに、こうしても生きていられた。アナタは“悪夢”に翻弄されているように見えて、本当は夢の中で戦っている。ここにいるリリウムとユウリの存在も、本当は“悪夢”さえもいつかいい夢になると信じ続けていることの裏返し───』

「だからそれが何!……私はこんなに苦しんでるのに」

聖夜はベッドから飛び起きた。その瞳からは黒い涙が流れ、肌を伝っては下へ落ちている。

そんな彼女の目の前に、“希望”はホタルのように優しい光を灯す。

『心の世界を枯らしてまで未だに苦しんでいるのは、アナタが本当はこうなることを望んでいないから。本当は囚われたくないのに、“悪夢”のトラウマに囚われているからね……』

“希望”は哀れそうに聖夜を見る。

聖夜もまた無気力に、真顔で前を見つめていた。

『でも、私がいるから大丈夫。聖夜。私は、アナタの“希望”……あなたの忘れたあなた自身だから』

すると“希望”は、聖夜そのものの姿に変化する。それは白いAラインのワンピースを着ており、瞳を黄金色に輝かせ、髪もオーラも白くキラキラと光をまとっている。長い髪はポニーテールにまとめ、背中には白い羽。それは闇に舞い降りた天使のようだ。

「これが……私?」

まばゆく輝く自分の姿。聖夜はいつの間にか涙をぴたりと止めていた。彼女の侵食されていた心は、全身で光の暖かみを感じとる。

それと同時に窓からは、真っ暗だった空にところどころから光が差し込み始めた。その光はわずかながらも、部屋の中にも入ってきて辺りをほんのりと照らす。

その様子を感じ取った“希望”。彼女は優しく微笑み、聖夜を包み込むように抱きしめる。

聖夜もまた、その温もりを受け入れる。目をそっと閉じ、“希望”をゆっくりと抱きしめ返した。

すると“希望”は、聖夜の手の中からすうっと抜け、光はそのまま胸の中に入り込んで一体化した。

今度は聖夜自身が輝き始め、“悪夢”によって淀んでいた目が浄化される。

そして、彼女自身がまばゆい輝きを発する“希望”そのものとなった。

「すごいの……」

その輝きに目を奪われるリリウム。

「受け入れたんだね、聖夜」

リリウムの隣でユウリも、にこにこと微笑んでいた。

「なんだか知らないけど、とても心の中から満ちあふれてる気分」

聖夜は頰を紅く染め、胸に手を当てている。その出で立ちは先ほどまでとは変わり、内側から強い生命力が溢れているようだ。

それと比例して周りもだんだん明るくなり、真っ黒だった風景は鮮やかな色彩を帯びる。冷えた空気もまた、明るくなると同時に適度に暖かくなっていった。

『……これで済むと思うな……』

突然、空間の中に響く不気味な声。

同時に聖夜、リリウム、ユウリの三人を闇が包みこんだ。

「なんだ?!」

ユウリはとっさに、リリウムと聖夜の手を掴む。

『……お前ら……許さない……許さない……』

暗闇の中から、彼らを包み込むほどの黒い大蛇が現れた。大蛇はその大口を開け、彼らに襲いかかってくる。

「きゃぁああああ!!」

その恐怖と迫力に叫び声を上げるリリウムと聖夜。

ユウリはとっさに二人を連れて、大蛇の死角に回る。そして背後から大蛇に飛び蹴りを繰り出した。

大蛇はそれにひるむも、再び彼らを食おうとこちら側を向いて襲いかかる。

ユウリは先ほどと同様に女子二名を連れ、瞬間移動をする。

しかし、大蛇は次から次へと彼らに襲いかかろうとした。

「しつこいな!」

ユウリは魔法で、大蛇の周りに立方体を作る。

大蛇はそこから出ようとするが、立方体の線を境に見えない壁に阻まれて外に出られない。それは外に出てやろうと、頭をひたすらぶつけていた。

「危なかったの……」

リリウムはため息をつく。

「私も怖かった……」

聖夜も度肝を抜かれて、少し泣きそうになっていた。

それを気にかけるユウリ。

「大丈夫?」

彼は、弱気になっている聖夜の肩を優しくなで始めた。

そんな時だった。

ガラスが割れるような音がして、大蛇が飛び出してきたのだ。そして再び、こちら側に襲いかかる。

ユウリは再び女子たちの手を引き、大蛇を回避する。が。

今度はその回避した先から、また大蛇が現れてこちらに襲いかかる。

「……!!」

ユウリたちは慌ててまた回避するも、そのまた別のところにもちょうど大蛇がいた。大蛇はちょうどユウリの頭上から、リリウムと聖夜を分断するようにして彼を食べてしまう。

残された二人に降りかかるのは、紅くも黒い雨。それが二人の肌に冷たく触れていく。

リリウムと聖夜が無意識に頭上を見上げると、大蛇が血液まじりのよだれを垂らしながら、口をモグモグと動かしていた。

「ユウリが……食われたの……」

リリウムは身体中の力が抜け、その場に座りこむ。

「そんなの……あり……?」

聖夜もただ、呆然と立ちつくすばかりだ。

そこへとても低く、おぞましい声が響きわたる。

『どうだ、信じ始めていた存在が死ぬのは。聖夜。お前は復活してから、そのままユウリとか言う奴に救われると内心思っていただろ。だが、彼はお前の救われたい心が創り出した“偽物”でしか過ぎない。お前は“希望”を与えられていい気になっていただろうが、その光も虚しく、ろくに使うことが出来ず、再び闇に包まれる運命なのだ。さぁ、聖夜よ。諦め、再び我らに身を委ねるがよい』

その声が話し終えると、聖夜の足元が急にぐにょぐにょと動き始めた。

「きゃっ!!」

聖夜は泥にはまったかのように、足元からゆっくりと、ゆっくりと地面の中に引きずりこまれ始める。彼女はもがくも、引きずりこむ力が強く、とてもじゃないけど自力では出られそうにない。

「聖夜!!」

リリウムは聖夜の身体を掴み、なんとか引っ張り出そうとする。しかし少女と言える女性の力では足りないのか、それとも引きずりこむ力が強すぎるのか、びくともしないどころか、聖夜が余計引きずりこまれるばかりだ。

「もう……私はいいよ」

聖夜は、満天の笑顔でリリウムにそう言った。この時の彼女は胸上まで地中に埋まっており、それがただの泥だとしても脱出するのは容易ではない。

一方でリリウムは、ぽろぽろと涙を流していた。そんな彼女にとって聖夜の笑顔は、余計に虚しさを引き立てて傷つけていくばかりだ。

「そんな事言わないでなの……。りりは、聖夜が元気になってくれただけでも嬉しいのに……」

「もう、いいよ。私はこんな中で、リリウムとユウリに出会えて嬉しかった。それに今は、どんな事があってもこの温もりで戦っていけそうな気がするから。私は、この“悪夢”から一生出られないとしても、これからは一人で戦っていける。私に与えられた“希望”の力。こんな私にとっては最高のプレゼントだよ……」

嬉しそうに語る聖夜。しかしその瞳はうるみ、涙が一粒、今にも落ちそうに目に浮かんでいた。

それを見たリリウム。彼女の心の中の糸が一本、ぷつりと切れる。

「そんなのダメなの!!聖夜は一人じゃないの!!ここにはりりだってユウリだっているし、聖夜の生きている世界げんじつにも聖夜を想い、支えてくれている人はたくさんいるの!!りりが言えた口じゃないけど、今、聖夜が引きこもっていても優しくしてくれるパパとママはいるし、親戚や近所の人、今まで出会ってきた友達もきっと聖夜のことを想ってくれているの!!だからそんな事言っちゃダメなの!!独りよがりで嘘の“希望”を抱いてても、それは違う。いつかはきっと薄れてしまうの!!だから聖夜……一緒にりりと……、ユウリと……、みんなと一緒に戦うのーーーっ!!」

リリウムは彼女の“悪夢”の中で、腹の底から聖夜に向かって心の内を精いっぱい叫んだ。

聖夜はもうとっくに首まで沈み、それは輪郭に差し掛かっている。

「本当にありがとう……リリウム。私は、もう大丈夫だからね……」

優しく微笑みを見せたまま彼女は、“悪夢”の沼の中に沈んでいった。

「聖夜ぁぁあああああああああああ」

一人になったリリウムは闇の中で、最大限の力を込めて泣き叫ぶ。

そこへ大蛇が大口を開けてやって来る。それは、リリウムを無残にも一口でガブリと食らっていってしまった。






















































少女は飛び起きた。

目の前には彼女の父と母、白衣を着た医師や看護師と思わしき人が立っている。

「え……?」

彼女はおかしいと思い、辺りを見回す。

そこは確かに病院の中。彼女は病院の白いベッドの中だ。

「聖夜ぁーっ!死んだかと思ったよ……」

彼女……聖夜の父が彼女に抱きつき、すすり泣き始める。

「お父さん?!一体どうしたの!?」

聖夜は驚いたまま、父を見つめている。

母もその後ろでハンカチを手にし、声を上げながら涙を流す。

「聖夜……あなた、新年から死ぬ所だったのよ……。先生も、さっきご臨終って……」

「私、死ぬ所だったの……」

聖夜は、その言葉にただ呆然としていた。

そこへ医師が、淡々と話し始める。

「聖夜様……あなたは奇跡の人です。突然、原因不明の昏睡状態に陥り、脈は徐々に低下。最善の手立ては打ったのですが、何をしても効かず、先ほど脈が止まり、ご臨終とさせて頂いたところでした……」

「私……本当に死ぬ所だったんだ……」

聖夜はもしあのまま死んでいたら、あの夢の続きはどうなっていたのだろうと思いを巡らせる。けれど今こうして生き、再び父と母に出会えた事に関しても彼女は嬉しく思えていた。

「そうそう……これ、サンタさんからのプレゼントだよぉ……」

娘に抱きつく父がどこに忍ばせていたのか。彼は、包み紙にくるまれた小さな箱を聖夜に渡す。

聖夜はあの時のトラウマから、包み紙を開けれずにいた。しかし、父の熱い視線に応え、包み紙を破る。

それは、外観通りの小さな箱だった。聖夜はそれを、恐る恐るゆっくりと開く。

そこに、“悪夢”なんてものはなかった。それは金色に輝く、星型の小さなペンダントだった。

「ありがとう……!」

聖夜は、“悪夢”なんかではないサンタクロースからのプレゼント、そして世界に楽しいクリスマスが戻っていたことの喜びで満ちる。

更にそこへ母が、聖夜の前に二枚のはがきを持ってきた。

「そういえば……優莉ちゃんと凛々夢ちゃんから……年賀状が届いてたわよ……。せめて最期に、聖夜が仲良かった子たちからのメッセージを読ませてあげたかったから……」

聖夜は母から年賀状を受け取り、それを読み始めた。


『Happy New いやぁぁぁあああ☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆


せーちゃん、あけおめ!!長い間会っていないけど、せーちゃんは元気にしてるかな?ゆーりはいつも元気だよー。この前は、テニスの大会で優勝しちゃった(*´∇`*)せーちゃんは今、どうしてるか分からないけど、きっと自分なりに頑張ってるって信じてるよ!!またいつか遊ぼっ☆


せーちゃんをいつも信じて!小鳥遊 優梨』



『あけましておめでとうございます


聖夜ちゃん、いかがお過ごしでしょうか。私は優梨ちゃんと一緒の学校で、彼女をいつも応援しつつ聖夜ちゃんのことを二人でいつも気にかけています。同じ学年になれなかった事はとても残念だけど、聖夜ちゃんは聖夜ちゃんなりのペースがあるし、無理せず、ゆっくりと過ごしてください。

また機会があれば会いたいな。


2018年元日 黒須 凛々夢』



聖夜はそれを読むと、今までの感情がこみ上げてくる。はがきを抱えて彼女は泣き出し、そして、こうつぶやいた。


「優梨……凛々夢……。ありがとう」

それは聖夜の親友だったのか。異世界からの来訪者だったのか、はては彼女自身の意識が創り出したものなのか。

これはただの夢物語なのだが、彼女にとっては現実。

聖夜の戦いはこれで終わらず、これからも続くのかもしれない。

とりあえずおめでとうクリスマス、おめでとう新年。





リリウムとユウリの、悪夢が蘇るクリスマス?!〜聖夜の夢の中へ〜

《We wish you a merry Christmas,and happy new year!!》


おしまい。

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