Another Viergeのキャンプ編ー3.バーチャル・サバイブ
《それから4人は、やみが描いた城の中で快適にくつろぎましたとさ。めでたし、めでたし……なんてね。
もーちょっと様子を見てみよう》
「こんなに快適なキャンプ初めてだわー」
ももかは、ソファーの上に寝そべっていた。その様は、まるでスライムがダレているようだ。
「さっきは行儀悪いとか言ってた癖に自分のことは棚にあげるんだね」
と、言ってるゆめであったが。彼女もまたソファーにもたれ、まるでダレたパン生地のようにリラックスしていた。
「ここはAnother Viergeの拠点。私たちの家みたいなものだから問題なーい」
ももかは、完全にリラックスモードであった。
すると、やみがやって来る。
「何自分たちだけぐだーってしてるの……?」
彼女はそう言うと、魔弾らしきビリビリしたものをゆめとももかに当てた。
すると二人は、豚になってしまう。
「ブヒッ!?」
二人は、お互いの姿を見て驚いた。
「おいしそうな雌豚どもー♪」
やみはそれを見ると、笑顔でヨダレを垂らし、巨大な包丁を構えている。
「ぎゃぁああああああああやみしゃんごめんなさぃいいいいいいいいいい!!ブヒー!!」
「食べないで!!ブヒブヒッ!!」
二匹の雌豚は恐怖におののき、お互いに身を寄せ合っていた。
それを見たやみは、にぱにぱと無邪気に笑っている。
「なーんてね」
やみはそう言うと、ゆめとももかの魔法を解く。禍々しさを放っていた巨大包丁も、空中へと消した。
「ふぅ……助かった……」
ゆめとももかは、安堵のため息をついた。身体はまだ、微かに震えている。
やみは、にこにこしながら本題に移る。
「にぱ。ごはんについてりんたと考えたんだけどね。ステキナペンで出してもよかったんだけど、やっぱり、せっかくキャンプだから、食材は自分たちで調達して作った方がいいかなって思って」
それを聞いた瞬間。ゆめとももかは、何が出るか分からないような暗い森をイメージする。
「やっぱりあの森へ出かけるの……?」
二人は、正直なところあの森に怖さを感じていたようだ。
そんな中、やみがこう続ける。
「ううん。違うのー。今回はゲームを用意したから、そこで取ってきてなの」
「ゲーム……?」
ゆめとももかは、きょとんとした。
「うんっ。二人のスマホに、アプリは入れてあるの」
やみに言われるがまま、圏外状態のスマートフォンを取り出す二人。
すると、二人のスマホには見知らぬアプリが入っていた。
「“サバイブクエスト”……これ?」
ゆめは、そのアプリを指さしてやみに画面を見せた。
「うん!」
やみは、にぱぁと笑顔で答えた。
「で、質問。ゲームの中で食材手に入れてもさ、どうやってこっちの世界に持ち帰るの?」
ももかは、ゆめ共々に感じていた疑問をぶつけた。
「そんなのここでは気にしちゃらめー。レッツゴー!」
やみは、そう言って二人のスマホ画面のアイコンをタッチした。
すると、スマホの画面が強烈な光を放つ。三人はそれに包まれ、意識が吸い取られる……。
「……ここ……どこめう?」
ゆめとももかが目覚めたのは、森の中にある池のほとり。普通の森のイメージとはずいぶんと違い、明るいどころか、まるで砂糖菓子で出来たようにカラフルだ。池の水も、ソーダで出来ているかのように所々からしゅわっと泡が立っている。
「なんかサバイバルとは違うイメージよね……ってゆめ?!」
「お姉様!?」
二人は、お互いの姿に驚いた。そして、お互いに自分の姿を池に映す。
「これが、私……」
ゆめは髪が腰上まで伸び、ピンクのリボンやフリル、キャンディがたくさんついたワンピースを着ている。衣装はお揃いの大きなリボンに、足先までぬかりなく統一されている。それに赤い柄にリボン、真っ赤なハートがあしらわれたラブリーな装飾の巨大包丁を持った魔法少女になっていた。
ももかはというと。ピンクのツインテールにピンクの瞳。衣装はというと、淡いピンクの魔女帽やワンピース、ブーツにはクリームのような白いフリルや、マカロンがあしらわれていた。杖にもやはり、淡い色のマカロンがあしらわれていた。
お互いの姿に驚きつつ、自分の姿に見とれつつ眺めていると。
「やっと来たのか」
二人の目の前に、ビターなチョコレートカラーのコートを着たイケメンが、釣り竿を持って現れた。黒い髪に黒いツノ、羽にしっぽ。それはまるで、竜を擬人化したようである。
「かっこいい……」
二人は、そのイケメンに一目惚れする。
「言っとくが俺だ。り、ん、た、だ、よ」
その言葉と声をはっきりと聞いた瞬間。ゆめとももかの乙女心はバラバラと音を立てながら崩れる。地獄の沼に落ちたかのように幻滅する二人。そのまま体も地面へと崩れていった。
「俺がこの姿だとそんなにいけないのかよ……」
りんたもまた、バベルの塔のように崩れてしまった二人に呆れ、ため息をつく。
「これはひどいの……」
彼の近くでひらひらと舞う黒い蝶……妖精は
幼い声で、沈没状態のゆめとももかを眺めていた。
「ま、手紙でも置いておくの」
妖精は、二人の前に手紙を置く。
「やみたん、行こっか」
「うん」
そしてやみとりんたは、その場を離れるのであった。
しばらくして。
ゆめとももかは、再び目覚める。するとすぐに、お互いの顔を見合わせた。
「りんたがアレとかないわ……」
二人は声を合わせて言う。彼女らにとって、まるで塔に住んでいそうな竜の姿をした彼は、一大ニュースになるほど衝撃的なものだったようだ。
「で、これは?」
ももかは、手紙を見つけた。さっそく封を開けて中身を読む。
『ピンクの雌豚ちゃんたちへ
お前らがりんたの姿見ただけであんなことになるから
もう放置してやったの♡
軽く説明するからよく読むの。
ここはスイートの森。
今から二人には豪華な晩ご飯をゲットするためにミッションに挑戦してもらうの。
これが無ければみんな帰れないしご飯もないからね。
二人には、これからノエルの塔に向かってもらうの。
そこにいる強敵を倒して、今日のメインディッシュを手に入れてきて欲しいな。
動いたりアクションを起こしたりするのはお前らなら言わずとも出来るはずなの。
あ、一つだけ注意があるの。
いくら美味しそうだからって、そこらのものを食べちゃらめ!絶対だよ……
………やみより』
「ふーん。こんなことやらせるからには、オシャレな高級フレンチでもあるのでしょうね」
ももかは、面倒臭さを全開で言いながら手紙を畳んだ。一方、心の中ではメインディッシュに淡い期待を寄せている。
「そういえば、ゆめは?」
ももかは、辺りを見渡した。
すると、ゆめが木の前で何か怪しげにガサゴソとしている。
「おーい、バカゆめー。何してんのー」
ももかはゆめを呼んだ。
しかし、ゆめは応える気配がなく木の前でガサゴソし続けている。
「ゆーめー……?」
ももかは、ゆめの前に向かう。そして、ゆめの背後から顔を覗きこむと……。
「ブヒッ?」
こちらを向いたのは豚の頭。ももかを見ながらブヒブヒと鳴いて、チョコレートを口の周りにつけながらくちゃくちゃと音を立てて食べている。
「あ、そういうことね。ブタゆめ」
ももかは、ゲテモノが現れたかのようにゆめを奇異の目で見た。彼女は、ゆめが一体何をしでかしたのかすぐに察した。
《次回。お菓子の国で、魔法使いと子豚が一匹大冒険。続く!》




