Another Viergeのキャンプ編ー1.これからどうするの?
《突然、箱庭の淵に置いてけぼりにされたAnother Viergeの四人。
さて、これからどうなるのやら……ちょっと見てみよう》
「これからどうするのさ。こんな何もないところで」
ももかは、不機嫌そうに言った。
今立っている崖と、崖を降りた先には緑が生い茂っている。森からは鳥や木々の音が鳴るばかりで、近くに人の住んでいそうな気配がない。
「決まっているよね。これはサバイバルめう!」
ゆめは、語尾を上げて言った。頭上には、『サバイバル』の五文字がポップアップで出てくる勢い……もはや出てきている。
ゆめの声は、森の木々に響いてエコーがかかっていた。森の木々に止まっていた鳥たちは音を立て、影を見せながら飛び立っていく。
「へー。じゃあ私はここで待ってるから、ゆめは食料と水の調達よろしくね」
ももかは、さらりとそう言って受け流した。
「誰がそんな腐れ野郎の為に食料と水なんか調達してくるか!お前は熊の餌にでも狼の餌にでもなってろ!!」
ゆめは、ももかの他人まかせな態度に早口でぎゃーぎゃー怒って言い返す。
すると、ももかもそれに乗っかり言い争いへと発展する。
「何よ、年下のガキにそんな口聞かれたくないわ。ゆめは野獣なんだし、狩りもちょちょいのちょいで済ませられるでしょ」
「お姉様ももう成人済ならもっとまともな考え出せないの?馬鹿なの?あ、元々お馬鹿さんでちゅねー。この⑨が」
「ならそっちがまともだって証明は出来るの?大人だからこうであるべきとか決めつけるなや。私だって自由に生きたいの」
「りんたの方がまだまともだよ!」
「そういえば、りんたは……」
ゆめとももかは、口がピタリと止まりハンモックの方を向いた。
一方のりんたは、すーすーと寝息を立てながら気持ちよさそうに寝ている。
「よくこんな中寝れるよね……」
二人は、お互いの顔を向き合わせながら同時につぶやいた。
ゆめは、寝ている彼にそっと近づく。
「つんつん……」
頰をつついてみたが、全くといっていいほど起きる気配がない。
「完全に熟睡モードめう」
ゆめは、やれやれと首を左右に振った。
すると、ももかが服の袖をまくった。
「私に任せて!…………りんたぁああ!!起きろぉぉぉおおお!!」
ももかの大声と同時に、りんたの頰に強烈ビンタが繰り出される。軽快にパーンと、肌を叩く音が鳴ったのでかなり痛いことだろう。
「うるさいにぱぁぁぁあああ!!!!」
ゆめとももかは、突然足をすくわれて転ぶ。
目の前には、下半身がスライムのように溶けたやみがむっつり顔をしていた。呪うような眼差しでこちらを見つめてくる。
「やみしゃん……?」
「なんなの……!」
ゆめとももかは、やみが怒っている所よりも溶けていることに対して動揺している。いくらなんでも彼女が実際に目の前で溶けることなんて、頭になかったからだ。
「お前ら僕が怖いのー?ふざけてんじゃねーの。人がすーすーにぱにぱ寝ている横で喧嘩するわ黙って見てりゃりんたに手出しするわ……このザコ人間共が。にぱにぱしてやろーか?」
やみは、闇を発しながら雰囲気に似つかわしくない暴言をさらっと吐いた。溶けたところからは触手が数本、ももかとゆめの方を向いて鋭くとがっている。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!!」
ゆめは、呪文のように謝罪を繰り返しながら土下座を何回もしている。
ももかは、化け物を目の前にして表情を歪めていた。気持ち悪いと言おうとするがままに。
「にぃ……っ!」
それでも触手は、表面から粘液を垂らしながらゆめとももかに近づく。
「やみしゃん……」
ゆめは、子犬のように瞳をウルウルとさせ、アヒルのように口をすぼめている。
「ゆめこんな時にキモい。あと……やみ?今すぐその触手を置いて?」
ももかは、冷静に振る舞っているつもりだった。しかし彼女は、ガタガタと震えながらゆめに抱きついている状態だ。
「にぱぁ……!」
触手はそれでも伸び、ゆめとももかを取り囲んだ。
「ひぃっ……!」
そのままぐるぐると巻きついている触手に、二人は畏怖ばかり感じる。
それでも触手は伸びていく。ゆめとももかを、二人まとめてミイラにするかのように巻きついていっている。
すぐに触手は、二人の全身を囲んでいくこととなった。
「りんた……助け……」
ゆめが、なんとか触手の隙間から助けを呼ぶ。
その時だった。
銃声が響き、触手が撃ち落とされる。
ゆめとももかを囲っていた触手は緩み、ボタっと地面に落ちた。
二人は、すぐに触手の中から脱出する。
「やっためう!出られためう!」
ゆめは、歓喜のセリフを口にした。
「全く……俺が寝てる間に物騒なこと起こしてるんじゃねーよ」
りんたはあきれながら、銃を腰についたホルスターにしまった。
「さすがりんた……!」
ももかは安心感からか、ふらっとりんたに抱きつく。
「あ、ずるいめう!」
ゆめも、「お姉様に渡すもんか」とりんたに抱きついた。
「二人とも大丈夫か……?よしよし」
りんたは、幼い子供をあやすように二人の頭をなでた。
「ぐぎぃ……」
やみは、そのすぐ側で唸っていた。
触手をまた伸ばしては、それを三人の側に忍ばせる……。
ゆめは、やみから発せられている邪念を感知した。
「なんかまた嫌な予感がするめうよ……?」
「ん?」
りんたは、すぐにやみの方を向くと触手を撃ち落とした。
やみは、撃ち落とされた触手の先を一瞬だけ見つめた後、りんたを睨みつける。
「何か文句あるか?」
りんたは、その倍は軽くいく威力で睨み返した。
「ぐぎぃ……!」
やみは、威嚇しながらこう続けた。
「悪いのはこいつら……!僕とりんたが寝てる間に騒いでたの……!ももかに至ってはお前の頰にビンタしてたんだぞぉ……!」
それを聞いたりんたは、すぐにももかの頭に銃を突きつける。
「そうかお前らか」
笑顔でこっちを向いて言う彼に、ゆめとももかは冷や汗を流した。
「あ、あいむふれんどりー……」
二人は、震えながら手を頭の高さに上げる。
「お前ら後でお仕置きな」
りんたは、ニッコリとしながらそう言い放った。二人を引き離すと、やみの前に向かった。
「ぐぎぃ……」
やみはまだ、軽く威嚇しているようだ。
りんたは、そんなやみの頭をなでながら言う
「ごめんな。でもあまりやり過ぎるなよ?なんだか分からんが、俺はやみたんがこの世界で何かしでかすかも知れない予感がする。あと、あまりあの姿を俺以外に見せるなよ?何があるか分からん」
「にぃ……」
やみは、なでられたのか落ちつく。鋭く向けていた触手もいつの間にか鎮まり、彼女はちゃんと足のついた一人の女の子へと戻っていた。
「分かってくれたみたいだな」
りんたは、優しい眼差しでやみの顔を見つめた。
「にぱっ」
やみもそう答えながら、ご機嫌な笑顔を返す。
「よかった」
それを見たりんたは安心したようだ。そして彼は立ち上がり、メンバーをすぐ側へ集める。
「さて、これからどうするか。見りゃ分かるだろ。……みんなで協力して、レッツ・サバイブ!!分かってるな?」
りんたは、皆の顔を伺った。
「それ、さっき私が言っためう……りんた寝てたし分かんないか」
ゆめは、セリフを取られたことに少し不満は抱いていた。しかし、状況が状況だけに分かっている様子だ。
「にーぱ!」
ご機嫌になったやみも立ち上がり、元気に返事をする。
「しょうがないわね」
ももかは先ほどの態度とは一転、あっさりと承認していた。
「私の時は、『食料と水の調達よろしくねー』なんて言っていたくせに……」
ゆめは、不満をあらわにしていた。先ほど自分が言った時とは違う、協力的な姿勢のももかに対して。
「ゆめゆめどうした?」
それは、しっかりとりんたに見られていた模様。
「あぁ、いつものことだし……」
ゆめは、苦笑いで済ませるしかなかった。




