箱庭の迷い人編ー12.箱庭の迷い人『Another Vierge』
やみ、りんた、ゆめ、ももかの四人が仲間の再会に和んでいるところ。
レナとミライは、レイナとユウリの容態を心配するばかりであった。
「……だめ、まともにしゃべることも出来ないみたい……」
レナは、レイナに何度も話しかけたり身体を揺すったりしていたものの、レイナ自身は「ぅ……」と少し声を漏らすことはあっても、依然として魂が抜けたような状態のままだった。
「こっちも……」
ユウリの方も気力がほぼ吸い付くされ、ミライの呼びかけに少しは反応をするものの、とても話したり歩いたりすることはできない状態である。
「いったん二人を連れて帰ろう……?」
レナは、ふと前を見た。
すると、先ほどまで闇咲邸で一緒に過ごしていたゆめとももかが、やみとりんたと一緒にキャッキャ騒いでいるではないか。
レナは、レイナとユウリがこうなってしまった原因が分かると同時に、こう思う。
おねーちゃんとユウリは、きっとあいつら(やみとりんた)にやられてしまった。そしてゆめとももかは、スパイかはさておきあいつらのグルだったんだ。
レナは、姉たちの仇を打ちたいという気持ちが急にこみ上げてきた。
「レナ、行っちゃダメ……」
熱が高まるレナに、ミライがぼそっとそう言った。
「みーちゃん?……分かったわ」
レナは、今すぐにでも仇を打ちたい気持ちに狩られていた。しかし、ミライのあの一言で我に返ったのである。
それをよそに、あっちの面々は再会に喜んでいた。
「しかしみんな無事で良かっためう!」
ゆめは、仲間の集結にすっかり元気を取り戻していた。
「まぁ、何があって会えたかは知らないけどね。早く帰ってカミクエとかしたいわ」
ももかは、半ば嫌味のように言いながら内心では仲間が出会えて安心していた。
「にぱ。帰る場所……ないよ?」
やみが、さらりと現状を突きつける。
「帰れない……えぇ!?」
ももかは、信じられない!と、顔をくしゃっとさせる。
「どうやら俺たちは異世界に来てしまったみたいだな」
りんたは冷静にそう言った。内心、できれば帰りたいと願いながらも。
「帰れないなら……今夜も闇咲邸に泊めてもらえばいいじゃん!ね?」
ゆめは、期待を胸に後ろを向いた。
「!?」
ゆめは、思わず後ろに下がる。レナがゆめの背後で、四人に恨みがあるかのように睨んでいたのだ。
「よくも私のおねーちゃんとユウリをやったわね。そこの変態メガネとクトゥルフ」
冷たい口調で話すレナ。闇咲邸での優しい雰囲気は何処かへと消えていた。
「お前は……レイナに似てるけど妹か?いきなり変態メガネとは失敬な……ねぇ?」
りんたは、ゆめに向かってにっこりと笑った。
「えーと……それには色々と事情が……」
ゆめは、冷や汗をかきながら苦笑いする。
「あとでお仕置きな、ゆめゆめ」
りんたは、満円の笑みでそう言った。
「ごめんなさぃぃぃいいいいいいいい……!」
ゆめは、叫びながら全力でバックした。叫び声の大きさは、声が反射されエコーがかかる程だ。
「やれやれ……。で、何だ?お前もまた喧嘩売るつもりなのか?」
りんたは、レナに向かって自らのステキナペンを構える。
レナはそれを見ると、半分馬鹿にしたようにフフフと笑いを見せる。
「へぇ……どうせ手に入れたばっかりでしょ。それで倒せたなんて正直すごいね」
「まぁ、色々あってな」
「……今はやらないけどね」
レナは、くるっと後ろに向いて歩き出した。
「待てよ。逃げるつもりか?」
りんたはその態度にいらつきを覚え、後を追いかける。
レナは追いつかれないように早足で歩き、あらかじめ敷いておいていた魔法陣の中に立つ。レイナを両手で抱え、りんたの方を向くとレナは魔法陣を作動させた。
「とりあえずおねーちゃん達を連れて帰らなくちゃ。あなたとは後で遊んであげるから」
そうして、レナとミライ達は消えたのであった。
後には、箱庭の淵に四人……迷い子達が残されたのである。
「あいつ……何だあの態度は」
りんたは、レナ達が消えた後の線上をただ眺めていた。
「レナよ……。何か知らないけど裏切られたわ」
ももかも、イライラをあらわにしている。
「今夜の宿が無くなっためう……」
ゆめは、レナに裏切られたことよりも快適な宿を失ったことにがっかりしていた。
そうして三人が途方に暮れている中。
「にぱ……」
やみは、暖かい光が広がる空を眺めていた。
空に微かに浮かんでいるのは、少女のような形の巨大な人影。
《頑張って。僕はいつも見守ってるから》
やみの脳内に、そうささやく声が響く。
「にぱぁ……!」
それに応えるように彼女は、声を上げ、手を空に伸ばす。
ゆめはそれに気づき、声をかける。
「やみしゃん、急に興奮してどうしたの?」
「にぱにぱ!にぃーっ!」
やみは、とにかく興奮している模様。
「りんたー。やみしゃんが何か興奮してるよー」
りんたは、ゆめに呼びかけられてやみの様子に気づく。
「どうしたの」
「きゃあっ!にぱーっ!」
やみは、奇声をあげながら空を指さした。
りんたが空を見ると、優しい光が果てしなく広がっていた。
「さっきから見ていたけれど、不思議な色だな。それになんだか暖かい……」
その心地よさに、彼は思わずあくびをした。
「さて、今夜の宿はどうするか。ホテルなんて無さそうな雰囲気だよ?」
ゆめは、まだ寝る場所のことについて心配していた。実際、この辺りには自分たち以外の人気が全く無い。
「レナ達みたいに空間移動をすればいいじゃない。そしたら闇咲邸には戻れなくても、きっとどこか泊めてくれるんじゃない?教会とか」
ももかは、そう言うものの。
「お姉様は空間魔法なんて使えるの?」
ゆめは、ももかの突拍子もないような発言に対する信憑性を疑う。
「えーと……テレポーターがあれば?なければ課金アイテム……キャッシュみたいなのつぎ込めばいいのよ」
ももかは、半ば自信無さげに答えた。
「結局使えないめうね。今ゲームとか課金の話持ち込むとか馬鹿じゃん」
ゆめは、ももかを完全に白い目で見た。
「あれ、りんたは……」
そう言って辺りを見回す。すると、少し離れた所でやみとりんたが、ハンモックの上で寝ているではないか。ハンモックの側にはパラソルまでついており、絶え間なく降り注ぐ光の中で二人に寝る環境を整えていた。
「あいつら抜けがけしやがって……『Another Vierge』のメンツはどいつもこいつも馬鹿ばっかめう!」
ゆめは呆れた様子だった。
それに対して、ももかはため息をついて呟いた。
「お前もな」
「一番の馬鹿には言われたくないめうよ!」
ゆめは、顔をパンパンに膨らませてツッコんでいた。
こうして四人は見知らぬ世界で再会し、何が起こるかが分からない異世界ライフが始まるのであった。
《四人とも本当気ままで面白い。これからこの世界で、どのような運命を辿るかはお楽しみに。
ようこそ僕の箱庭世界へ……Another Vierge》




