箱庭の迷い人編ー11.二つの行方の真実
闇咲邸では……。
「おねーちゃん達、遅いね……」
レナは、レイナとユウリの帰りを待っていた。
一方で、ゆめとももかはハプニングもひと段落しくつろいでいる。
「ふぅ……なんて心地よいんだろ……。ここは自然が多くて魔法もありそうでいいね……まるでゲームの世界みたいめう……」
ゆめは、溶けるようにソファーにもたれていた。完全にくつろいでいる。
一方、ももかも田舎旅行気分である程度は楽しんでいたのではあるが。
「ゆめくつろぎすぎー……でもやっぱりスマホはずっと圏外ね。テレステもカミクエも出来ないしつまんない」
スマートフォンの電波が繋がらないことに対して若干イライラしていた。
スマートフォンをチラチラ見ては不満そうにしているももかの態度。それを見て、ゆめは呆れてため息をつく。
「お姉様さっきからそればっかり。私だってそれは思ってるけど」
ももかは、いちいちゆめがトゲを刺してくるように思い、反射的にまくし立てる。
「思ってるなら一緒じゃない。いちいち言うなしこのブス!そもそもライムも使えないし今りんたがどこで何してるか、そもそも生きてるのかも分からないじゃん」
ももかにまくし立てられているゆめ。
「りんた……」
その時、ゆめ自身に今蓄積されたイライラが吹き飛ばされる。代わりに、すっかりくつろぎに埋もれてしまっていた本来の目的を思い出した。
「こんな訳の分からない所で行方不明になった仲間を放っておけるの?異世界で旅行気分に浸ってさ。ゆめはいつも私にバカバカ言うけどあんたこそ真のバカじゃないの?」
「いつもワガママでちんぷんかんぷんなお姉様には言われたくない……」
ゆめは、いつものように反抗した。しかし、その口調は弱々しい。
「……全く。あんたらしくないわ」
ももかはそう言うと、リビングから出ようとしているレナを睨みつける。
そして、
「うわっ!」
ゆめの手と、
「ひぃ……」
少し離れたところにいたミライの手を引いて、リビングを出たレナの元へ向かった。
「ちょっと、レナ。」
「ももかちゃん?どうかしたの?」
レナは振り向くと、猫が甘えるような可愛らしい声で聞いた。
「何か隠してるでしょ。私たちに教えて」
ももかは、真顔でレナの顔を見つめている。
「何もないよ?ちょっとおねーちゃんを探してるだけだよ」
レナはそれに対し、何でもないような様子である。
しかしももかは、絶対にレナは何か隠し事をしていると信じてやまない。
「絶対何かあるね。教えなさいよ」
ももかは、口調を強めて説明を求める。
「何がって言われても……」
レナは少々困っている様子だ。
「話しなさいよ。どういう事?何かあるからそんな態度取ってるんでしょ?」
ももかは、すでに喧嘩とも取れる口調でレナに迫っている。
「そもそもりんたって誰?探し人?」
彼のことを知らないレナにとっては当然の答えだ。
しかし、今のももかにとっては隠し事をしているようにとれた。そして彼女のネジが外れる。
「私のりんたを返しなさいよ!どこにいるのよ、ねぇ。今すぐ教えなさいよ。今彼はどこで何してどうしているのよ。ちゃんと3食ご飯は食べれているのか、お風呂も毎日入れているのか、そして彼の好きなゲームや勉強がちゃんと出来ているのか。もしも劣悪な環境下で人身売買にでも売り出してたり、洗脳して闇組織の手下としてこき使っていたり、とにかく変な手出しをしていたら許さないからね!」
……それはもはや仲間愛が故の強さなのか、それとも単なる妄想なのかが分からないレベルだ。
ももかの圧倒的なまくし立てに、レナは余計な冷や汗をかいていた。
「……ももかちゃん?落ち着いて?」
それを見ていたゆめ。
「お姉様……こういう時にすごいね……」
ゆめは、さすがにそこまで言わなくても……と思いった。しかし、実はここまで行動ができるももかのことを見直した。
「怖い……」
ミライは、レナを圧倒しているももかを見ながら震えている。
「それより早く教えなさいよ」
ももかは、レナの両肩をガッシリと掴む。
「……ふふふ。分かったよ。ただし望む真実へとたどり着けるかは分からないからね?」
レナは、急に顔をにやつかせた。
するとももかは、急にめまいが起こり始めたのか視界が回る……。
一方、レイナやりんた達はというと。
「ぐ……んにゃ……!」
「う……」
まだ逆襲は続いていた。
レイナの側頭部には銃が突きつけられ、ユウリの体力がやみにより吸い取られ続けている。やられている二人とも、もう抵抗する気力は無くなっている様子だ。
「もう抵抗は出来んだろ」
りんたが、レイナに突きつけていた銃を下ろし、彼女自体も腕から離す。
レイナは、ほっとしたのか、精神的に骨抜きにされたのかはさておき。腕から離されるとそのまま地面に倒れこんだ。
一方で、やみはまだユウリの気力を吸い取っていた。ユウリは、もう声も出せないほど衰弱しきっている。
それを見たりんたは、すぐにやみに止めるように言う。
「やみたーん。これ以上吸い取ったら、さすがに死ぬと思うからやめてやれー」
「しんだら僕のロリポップぅ。にぱぁ」
やみは、止める気がない様子だ。
それを見たりんたは、やみの前にロリポップを差し出した。
「やみたん?やめないと、ロリポップはあげないぞ?」
「にぱぁ!ほしいの!可愛いにぱにぱ!」
やみはすぐに、ロリポップに釣られてユウリから離れる。そして、足がちゃんと生えてる白肌の、ゴスロリを着た少女の姿へと変わる。
「やれやれ……。大丈夫か?」
りんたは、やみにロリポップを渡すとユウリの安否をうかがう。
「ぅ……」
ユウリは、細々と小さく息をしていた。肌に触れると、体温もちゃんとある。
りんたは彼の生存が分かり、とりあえず一安心。
「死ななくてよかったな」
すると、向こうの方から。
「おねーちゃーん!ユウリー!!」
レナの高い声と共に、ミライ、ゆめ、ももかが一緒に歩いてきた。
「ぅー……」
「ぐっ……」
しかしレイナとユウリは、力が抜けていて答えることもままならない状態だ。
「おねーちゃん?」
「ユウリ……」
骨抜き状態のレイナにはレナが、ユウリにはミライがそばへ駆け寄る。
一方で、ゆめとももかも、やみとりんたの元へと走っていった。
「りんた!」
「やみしゃん!」
「お前ら!」
「にぱーっ!」
りんたとやみも、ゆめとももかの方へと駆け寄る。
「会いたかっためう……!」
「会いたかったよぉ……!」
ゆめとももかは二人一緒に、りんたの温かい身体にぎゅっと抱きついた。まるでパパに懐く双子のように。
「お前らもここに来てたのか……よしよし」
りんたも、ゆめとももかの頭を優しく撫でた。こちらもまた、幼い双子の少女をあやすパパのように。
それを隣で見ていたやみは、不機嫌そうにそちらを睨んでいた。
「にぱ……」
せっかく仲間に出会えたというのに、こちらは無視。その上りんたと二人だけいい思いして、僕はぼっち。やみの思いはいつの間にか怨念となり、視覚で見てとれるほど強いオーラになっていた。
「やみしゃん……後ろ」
いち早く気づいたゆめは、子供が怖いものに怯えているようだった。
りんたはそれに気づき、後ろを向く。
「にぱぁ……」
やみの周りは闇で包まれ、その周りの生は枯れていた。
「やみたん……」
りんたは、ゆめとももかを置いてすぐにやみの元へと向かい、そのまま抱きしめた。
「……にぱぁ」
すると、やみが発していた闇のオーラが一瞬で消えた。
「さすがりんた」
「やれやれ」
ゆめとももかは、やっぱり怒ったやみを止められるのはこいつだと感心した。と、同時に内心嫉妬乙とも思っていた。
「ふぅ……」
りんたも一安心の様子だ。
《しかしこれが、誤解と対立の原因になろうとは、まだ四人は知らなかった……》




