EP 10
戦利品はカップ麺、そして地上へ
「な、なんだここは……! 宝の山だぜ!」
開かれた最深部の隠し扉。
その奥の宝物庫に足を踏み入れたイグニスが、感嘆の声を上げた。
剣や鎧といった武具ではない。
そこにあったのは、段ボールに詰められた大量の『古代の保存食』、そして未開封の『レトロゲーム機』や『カセット』の山だった。
「ああっ! 見てくださいリアン様! 全部『神麺』ですわ! 醤油味だけでなく、シーフード味やカレー味までありますのぉぉ!」
リーザが段ボールの山にダイブし、頬ずりをして喜んでいる。
「これ、全部持って帰っていいのよね!? 配信のプレゼント企画にすれば、登録者が爆増するわ!」
キュララもドローンを飛ばし、戦利品の撮影に余念がない。
「……ふむ。古代人は、このような箱庭の中で時間を消費していたのか。だが、あのメイドロボたちの『奉仕の心』だけは、我が騎士団にも取り入れるべきかもしれないな」
クラウスは一人、メイドカフェの制服(予備)を大事そうに畳んでカバンにしまっていた。完全にこじらせている。
「よし、お宝は全部回収だ。イグニス、持てるだけ持て」
「おう! 俺様に任せな!」
俺たちは大量のカップ麺とゲーム機を担ぎ上げ、ダンジョンに設置されていた『帰還用転送魔法陣』の上に立った。
「……まあ、たまにはこういうダンジョン攻略も悪くないか」
俺は笑い、転送陣を起動させた。
光が俺たちを包み込み、電子音とネオンの迷宮から、元の地上へと帰還した。
◇
数日後。
キュララのT-Tubeチャンネルにアップされた動画は、とんでもないことになっていた。
『古代ダンジョンがゲーセンだった件』
『ドラゴン族のパンチで測定器破壊www』
『王女が床でメダル拾い(涙)』
『最強のロボをハメ技でボコる主人公』
ツッコミどころしかないカオスな内容は、瞬く間に学園中、いや国中に拡散され、再生数は過去最高を記録。キュララは超人気インフルエンサーの地位を不動のものとした。
リーザは持ち帰ったカップ麺を自室に溜め込み、毎晩お湯を沸かしては幸せそうにジャンクな味を堪能している。
そしてクラウスは……。
「……クラウス君。君の部屋から『メイド服』が出てきたそうだけど、どういうことかしら?」
「ひっ!? り、理事長!? なぜそれを……!」
「ふふふ。騎士団のホープの新たな性癖……これは良い『交渉材料』になりそうね♡」
「違います! これは純粋な騎士道精神の探求でしてぇぇぇ!!」
哀れな優等生は、リベラ理事長に完璧な弱みを握られ、さらなる下僕としてこき使われる運命となった。
◇
「ふぅ……」
休日の午後。
俺は1-Aの教室の片隅で、一人静かにヤカンでお湯を沸かしていた。
目の前には、ダンジョンから持ち帰った『神麺・カレー味』。
蓋を半分開け、熱湯を注ぎ、三分待つ。
「……いただきます」
ズルズルッ。
スパイスの香りと、ジャンクな旨味が口いっぱいに広がる。
三ツ星シェフとして、こだわり抜いた料理もいい。
だが、たまにはこういう「何の手間もかかっていない」出来合いの味を楽しむのも、悪くない。
「さて、次はどんな美味いもの(トラブル)が待ってることやら」
俺はスープを飲み干し、窓の外の青空を見上げた。
問題児だらけのクラスメイト。
金にがめつい理事長。
そして、この世界にはまだまだ未知の食材が眠っている。
元三ツ星シェフの異世界裏稼業。
俺たちの宴は、これからも続いていく。




