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EP 9

リアンの本気、裏技グリッチ無双

「デハ、最後ノ勝負。種目ハ……対戦型総合アクション『大乱闘サバイバル』デス」

GMロボが展開した三台目の筐体。

それは、複数のキャラクターが入り乱れて戦い、場外に吹き飛ばした方が勝ちという、前世のリアンも何千時間とプレイした超有名ゲーム(に酷似したもの)だった。

「このゲーム……」

俺はコントローラーを握り、懐かしさに口元を歪めた。

「機械ノ演算能力(フレーム計算)ニ、人間ノ反射神経ガ勝テルハズガアリマセン。ワタシノ圧倒的ナ勝利デス」

GMロボが自信満々に宣言する。

確かに、相手は機械だ。1フレーム(60分の1秒)単位の完璧な操作と反応速度を持っている。正攻法で戦えば、人間は絶対に勝てない。

だが、ゲームの世界において『完璧』なのは機械の反応であって、プログラム自体ではない。

「……正攻法で戦うなんて、一言も言ってないぜ」

『3、2、1……GO!!』

電子音と共に、俺とGMロボのキャラクターがステージに降り立った。

GMロボの操作は、まさに機械そのものだった。一切の無駄がない動きで距離を詰め、絶対にかわされないタイミングでコンボ(連続攻撃)を叩き込んでくる。

「危ない、リアン! 避けろ!」

イグニスが叫ぶ。

だが、俺はコントローラーのスティックを素早くガチャガチャと動かし、特定のボタンを『タタタンッ』と変則的なリズムで入力した。

その瞬間。

俺のキャラクターが、攻撃を受ける寸前に『カクッ』と不自然な挙動を見せ、ロボの攻撃をすり抜けたのだ。

「ナッ!? 今ノ回避ハ、システム上不可能ナハズ……!」

GMロボの音声が揺らいだ。

「『無敵フレーム(攻撃をすり抜ける時間)』の延長バグだよ。特定のモーションをキャンセルし続けることで、キャラの当たり判定を消滅させられるんだ」

「バ、バグ利用!? ソレハ反則デス!」

「反則じゃない。『仕様』だ」

俺はニヤリと笑った。

前世、このゲームをやり込んでいた廃人オタクたちは、開発者すら想定していなかった操作法を次々と発見し、それを『技術』に昇華させていた。

「さあ、ここからが本番だ。……ずっと俺のターンだぜ」

俺はロボのキャラクターを画面の端(壁際)に追い詰めた。

そして、弱パンチ、キャンセル、弱パンチ、キャンセル……。

ただひたすら、同じ単調な攻撃を1フレームの狂いもなく入力し続ける。

パンッ、パンッ、パンッ、パンッ!

「グガッ! ガッ! 動ケ、動ケマセンッ!!」

GMロボのキャラクターが、壁際で硬直したまま一方的に殴られ続ける。

「出たわね! ゲーマーの風上にも置けない卑劣な戦法……『無限ハメ(壁ハメ)』よ!」

キュララが実況する。

イグニスとクラウスは、あまりの地味でえげつない戦法にドン引きしている。

「卑怯だと? 勝った奴が正義だろ」

俺は涼しい顔でボタンを連打し続けた。

コンピューターは『最適な回避行動』を計算しようとするが、この無限ハメはシステム上の隙間を突いているため、抜け出す答えが存在しない。

計算に計算を重ねた結果、GMロボのCPUはついに処理落ちを起こし始めた。

「ワ、ワタシノ……演算ガ……追イツカナイ……。コンナ、非論理的ナ攻撃……計算外デスゥゥゥ!!」

ドバァァァンッ!!

俺の最後の一撃が入り、GMロボのキャラクターが場外へと吹き飛んだ。

『GAME SET!』

「……勝者、リアンだ」

俺はコントローラーから手を離し、肩をすくめた。

「ピガッ……ガガガッ……。敗北、シマシタ。ワタシノ……完全敗北、デス……」

GMロボの頭部からプシューッと煙が吹き出し、その巨体がガクンと膝をついた。

圧倒的な演算能力も、廃人ゲーマーの『執念のグリッチ(バグ技)』の前には無力だったのだ。

「やったぁぁぁ! リアンの勝ちだぁぁ!」

「さすがですわリアン様! これで、私たちが動力にされずに済みますのね!」

仲間たちが歓喜の声を上げる。

だが、一番の報酬はここからだった。

『……挑戦者ノ勝利ヲ承認。最深部ノロックヲ、解除シマス』

GMロボの機能停止と共に、メイドカフェの奥にあった、最も分厚い金庫の扉がゆっくりと開き始めたのだ。

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