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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
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第四百十八話 あのねのね

今回は鬼ヶ島を登り切った後です。

 マッドマンを突破して山道を走ること3時間。ノエルはようやく目的の山の右目にたどり着けた。



「ぜぇぜぇ……やっと着いた」



 お日様が水平線に沈みかけている。あと少し遅かったら暗いなか、山を登ることになっていた。流石に暗いなかで細い道を登るのは危ないから、間に合ってよかった。ライトだと心もとないしね。



「魔装しても3時間かかるなんて。思ったよりも高い山だったなー」



 そんなことを考えつつ、山の右目の前に立つ。自然にできた穴じゃないっぽいかな。始まりの人が作ったのかも?

 穴の中に入ろうとすると、中からホウリお兄ちゃんが顔を出してきた。



「ホウリお兄ちゃん!?」

「よお。お疲れさん」



 微笑みつつ、ホウリお兄ちゃんが手招きしてくる。

 ノエルは手招きに応じて、穴の中に入った。穴の中は暗くて、壁に掛けられているランプの小さな明かりが、穴の中を照らしている。

 そんな穴の中でホウリお兄ちゃんが立っていた。ノエルは思わず、ホウリお兄ちゃんに抱き着く。抱き着かれたホウリお兄ちゃんはノエルの頭を優しくなでてくれる。



「改めて、お疲れさん。よくここまでたどり着けたな」

「えへへ、それほどでも……」



 照れながら頭をなでられていると、ふと壁の一部に穴が空いているのに気が付いた。



「なにあれ?」

「あれか?この鬼ヶ島に来た目的だ」

「もしかしてレッド・ブランド・ベリアル?」

「ああ」



 ホウリお兄ちゃんはノエルから離れて、壁に掛けられたランプを手に取る。



「見てみるか?」

「うん」



 ホウリお兄ちゃんが穴にランプを近づける。

 覗いてみると、穴の中はお椀のように窪んでいた。そして、上から雫が落ちていて、窪みに溜まっているみたい。

 そして、底には真っ赤な宝石が沈んでいた。大きさは小指くらいだ。



「これがレッド・ブランド・ベリアル?」

「ああ」



 ホウリお兄ちゃんが窪みに手を突っ込んでレッド・ブランド・ベリアルを摘み取る。



「これが鬼ヶ島のご褒美?特別な宝石なんだよね?どんな風に特別なの?」

「これはMPの流れを強制できる宝石だ」

「どういうこと?」

「試したほうが早いな」



 ホウリお兄ちゃんが魔石を取り出してレッド・ブランド・ベリアルをくっつける。



「レッド・ブランド・ベリアルを触ってみてくれ」



 ホウリお兄ちゃんに言われるがままレッド・ブランド・ベリアルに触れてみる。瞬間、何もしてないのにノエルのMPが一気に魔石に流れ込んだ。



「え?どうして?」

「これがレッド・ブランド・ベリアルの効果だ。MPが多いほうから少ないほうに流れていく」

「MP無限のノエルから、MPが0の魔石にMPが流れたってこと?」

「そういうこと。これを使えば、MP操作ができないやつでも魔石にMPを込められる」

「それは凄いけど、ここまで危険な目にあってまで必要なものかな?」



 一番弱い魔物がキングゴブリンっていうこの島で、ここまでたどり着くのは並大抵のことじゃない。そのご褒美としては、あまり良いものって感じはしない。



「それがそうでもない。使い方次第で凶悪な武器になる」

「どういう使い方なの?」

「武器にレッド・ブランド・ベリアルと魔石を付ける。レッド・ブランド・ベリアルを相手に付けると?」

「MPを奪える!」

「そういうこと。魔石に溜まったMPを魔道具で消費すれば、続けてMPを奪うことができる」

「それは確かに強いね」



 接近する必要はあるけど、MPを奪えるのは強い。MPが少なくなればスキルや魔法の発動を妨害できるし、0になれば体が重くなる。MPの管理っていうのはそれだけ重要なんだ。



「そう考えると、すごい宝石に見えてきたや」

「この宝石の凄さはそれだけじゃないぞ?」

「もっと凄いの?」

「なんとこの宝石は、フランのMPも奪える」

「え!?」



 フランお姉ちゃんのMPも奪える!?そんなすごい宝石なの!?



「な?この宝石を取りにきた理由が分かるだろ?」

「うん」



 ホウリお兄ちゃんがランプを壁にかけなおす。レッド・ブランド・ベリアルはホウリお兄ちゃんがアイテムボックスにしまった。



「目当ての物も手に入ったし帰りたいところだが、もう暗い。帰るのは明日の朝にしよう」

「うん。ところで、ノエルお腹空いたんだけど……」

「確かに夕飯の時間だな。飯にするか」

「やったー!」



 両手を挙げて喜んだ瞬間、ノエルのお腹が盛大に鳴り響いた。

 ホウリお兄ちゃんのことだし、美味しいご飯を持ってきているはず。あの携帯食料は美味しくないし、やっと別の物が食べられる。



「ほら、食料だ」

「ありが……と?」



 ノエルは目を丸くして食料を受け取る。ノエルの手の中にあるのは、この3日間でいっぱい食べた携帯食料だった。



「これって?」

「携帯食料だ。ノエルが持ってきたのと同じやつだな」

「ほかの食べ物は?」

「無い」

「甘いものとかも?」

「心苦しいが持ってきていない」



 ホウリお兄ちゃんが目を伏せつつ答える。



「えー!?せっかく美味しいものを食べられると思ったのに!?なんで!?」

「死ぬほど頑張った後の初めての食事だぞ?どうせなら、最高の食事にしたくないか?」

「え?どういうこと?」



 ホウリお兄ちゃんがニヤリと笑って口を開く。



「終わったらケイワイビーチに行くって言ったろ?豪華な食事でパーッと楽しみたくはないか?」

「それ良い!豪華で美味しいもの食べたい!」

「だろ?我慢すればするほど、美味いものを食ったときの感動は大きくなる。明日の昼飯は豪華にするから、今日は携帯食料で我慢してくれ」

「はーい!」



 ホウリお兄ちゃんから受け取った携帯食料の包みを剥いで、かぶりつく。



「うーん……美味しくない」

「普通の携帯食料よりはマシな味のはずなんだぞ?」

「だけど美味しくない」



 これも明日のお昼ご飯のため。我慢して食べよう。

 あれ?そういえばホウリお兄ちゃんってノエルと同じ携帯食料食べてるのかな?



「ねえ、ホウリお兄ちゃんもコレ食べてるの?」

「俺は別の物を食ってる」



 そう言ってホウリお兄ちゃんが紙袋を取り出す。そこから手のひらサイズの白い球体を取り出した。小麦粉を練ったものみたいに見える。



「これは兵糧丸。1つ50000キロカロリーの食料だ」

「50000!?それって人間が食べていいものなの!?」

「俺以外の奴が食ったら毒になりかねないな」

「わーお」



 ホウリお兄ちゃんが兵糧丸を口に放り込む。



「美味しいの?」

「不味いぞ?そっちの携帯食料のほうが何倍も美味い」

「不味いんだ」



 ちょっと貰おうと思ったけど、やめとこう。



「それよりも、この島での出来事について話してくれよ。5日の予定だったが、3日でたどり着くなんて、やるじゃないか」

「えへへ……でしょ?」

「この島はどうだった?」

「マッドマンが一番強かったかな。結局倒せなかったし」

「どうやって山道まで来れたんだ?」

「えっとね」



 マッドマンとの戦いをホウリお兄ちゃんに話す。



「結局は水でドロドロにして、上を飛び越したんだけどね」

「良い手だな。マッドマンを突破する正解の一つと言ってもいいだろう」

「本当は倒したかったんだけどなぁ」



 携帯食料を齧りつつ呟く。



「今のノエルには難しいだろうな。やるとしてもかなり時間がかかる」

「そう?上手くコアに当たれば倒せたと思うんだけどなぁ。100%の魔装だったら攻撃は通ったんだし」

「ん?あのマッドマンは本体じゃないぞ?」

「え?」



 本体じゃない?あんなに強くて苦労したのに?どういうこと?



「ちょっと良く分かんない」

「ノエルは山道をふさいでいた奴がマッドマンと思っているんだろうが、厳密には違う。あの地面全部がマッドマンだ」

「あれ全部が?」

「ああ。形はマッドマンっぽくは無いが、体のすべてを変質させることで、侵入者を阻んでくる」

「じゃあ、マッドマンに見えたのには、コアは無かったってこと?」

「その通り。コアは地面の下、ノエルの魔装だと地面を破壊するよりも再生する速度のほうが早い」

「力押しはダメってことね。水浸しって一番いい方法だったね」

「だな」



 そう言いつつ、ホウリお兄ちゃんが2つ目の兵糧丸を口に入れる。合計10万キロカロリーだよね?食べて大丈夫なのかな?



「あれ?そういえば、ホウリお兄ちゃんはマッドマンをどうやって突破したの?」

「あのマッドマンはMPを感知するからな。体内のMPを0にして、回復する前にそばを通り抜ければ突破できる」

「へぇ。そんな簡単な方法があるんだ。」

「簡単に聞こえるかもしれないが、マッドマンは微量のMPも感知してくる。俺の場合、MPを0にしても10秒くらいでマッドマンに感知されるまでに回復する。つまり、10秒でマッドマンを突破しないといけないわけだ」

「それは大変だね?」



 MPが0になると体にうまく力が入らない。その状態で10秒で突破するのはとっても大変だ。まあ、ホウリお兄ちゃんなら簡単か。



「マッドマンは始まりの人達が作った最高傑作らしいからな。そう簡単には突破はできないだろうな」

「始まりの人達って魔物も作れるんだ。今の技術よりもすごいね?」

「あいつらは(カス)と通信できるからな。魔物ができる仕組みとかは、今の科学者よりも理解しているだろうな」

「だとしても強すぎない?正面突破はフランお姉ちゃんくらいしかできないでしょ?」

「ロットもいけるだろうな。まあ、常人には無理だろうな」



 ロットお兄ちゃんくらいにパワフルじゃないといけないんだ。それは無理かな。



「マッドゴーレムに関してはこんなものだな」

「聞けば聞くほど強さが際立ってくるね。このコップが無かったら勝てる気がしないよ」



 突破できたのは運が良かったって感じだ。あのマッドゴーレムに実力で勝てるまで強くならないと。

 ノエルが拳を握って決意を固めている様子を、ホウリお兄ちゃんは微笑ましそうに見てくる。



「他にこの島でどういう敵と戦ったんだ?」

「初めはねキングゴブリンと戦ったんだ。頑張って鎧どおしの練習してたんだよ?」

「へぇ、勝てたのか?」

「もちろん!鎧どおしも上手くなったんだよ?連発しても10回に1回は成功するようになったんだ」

「かなり進歩したな。前は20回に1回くらいの成功率だったろ?」

「えへへ。あとね、マシンガンビーとも戦って───」



 そのあと、ノエルは島での出来事をホウリお兄ちゃんに疲れて眠るまで一生懸命に話した。

今回で鬼ヶ島はおしまいです。ほかに考えてた魔物は別でお披露目ですかね。


次回はケイワイビーチです。前みたいにガラガラってわけではないです。

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