第四百十七話 水の無い所でこのレベルの水遁を
今回でボス戦は終わりです。
そのあと、ノエルがいろんなことを試してみた。
【木を沢山投げつけてみよう】
マッドマンは土の色が変わっている地面より、外側には攻撃してこない。つまり、土から外側からであれば、安全に攻撃ができるということ。
そう考えたノエルは、森の中から木を引っこ抜いてマッドマンにたくさん投げつけてみた。これで
何十本の木がマッドマンに命中した。けど、マッドマンが固すぎて全く効いている様子もなくて、投げつけた木は、全て土の外に投げ出された。
→失敗
【ほかの魔物を囮にしよう】
ほかの魔物を土の上におびき出して、マッドマンが魔物に攻撃している間に、横を通り抜けよう作戦。
だけど、周りに魔物が全くいない。もしかしたら、この島の魔物は、マッドマンがとっても強いことを知っているのかも。だから、危険な山道付近には近づかない。
思えば、山道付近で魔物に出会わなかったのも、偶然じゃなかったのかも?とにかく、魔物がいないなら囮作戦はできないか。
→失敗
【土を全て掘り起こしちゃおう】
木をぶつけるときに、マッドマンの体が欠けた。欠けた体は、地面の土が独りでに浮かび上がって、くっつくことで補強されてた。つまり、マッドマンはダメージが自然に回復するってこと。厄介だって思うけど、逆に考えると周りの土を掘り起こしちゃえば、マッドマンの力が減るんじゃないか。そう思ったノエルは周りにある土を全部掘り返そうとした。
結果、掘り返したところから、元の場所に戻って行ったんだけど。
→失敗
「ダメだー!」
数々の作戦が失敗したノエルは大の字になって地面に寝転がった。何をしてもマッドマンを突破できない。
ノエルは太陽に手をかざして考え続ける。あのマッドマンはノエルじゃ接近戦でも遠距離戦でも倒せない。走って突破しようにも、マッドマンのほうが早い。
「からめ手も効かないし、どうしよ?」
こういうときは状況を整理してみよう。
山は表面が脆いから、外から登ろうとすると掴んだところが剥がれる。外から登れない以上、山道から登るしかない。
「となると、山道をふさいでいるマッドマンを何とかしないと」
マッドマン、人型の泥人形の魔物。足は地面とくっ付いていて動けないけど、泥を飛ばして攻撃してくる。
地面の土の色が変わっている所に踏み込むと感知してきて攻撃してくる。体は硬くて、気をぶつけたくらいじゃ破壊できない。100%の魔装だと破壊できるけど、コアを破壊しないと再生するし、確実に反撃をもらう。100%の魔装でも即死しかねないほどの攻撃力を、避けきれない速度で放ってくる。
コアの場所を見抜けていない状況で、もう一回戦うのはリスクが高い。次は完全に死ぬかもしれない。魔装中にセイントヒールは使えないから、即死すると治せない。直接の戦闘は最終手段にしたい。
「整理すればするほど、勝てるビジョンが見えない……」
こういうときは気分転換したいけど、ここには何もないし。美味しいご飯でも食べたいけど、携帯食料しか持っていな───
「あ、そうだ」
とっておきを思い出して、ノエルはポケットを探る。
「あった」
ポケットから出てきたのは金色の包みに入ったキャンディーだった。ホウリお兄ちゃんに渡された、ディフェンドの特製キャンディーだ。
「疲れた時には甘いもの、だよね」
ホウリお兄ちゃんに毎日のように言われていることだ。
「いただきまーす」
包みを剥がしてキャンディーを口に入れる。濃厚なキャラメルの味が口いっぱいに広がる。
「うーん、やっぱり美味し~」
数日ぶりのまともな甘さが体中に染み渡る。疲れも溶けていくみたいだ。
脳に糖分がいきわたって、のどが渇いていることを感じた。どうやら、いっぱい汗をかいていたみたい。
「水飲もうっと」
コップを取り出してMPを込める。コップの中にどんどんと水が湧いてきて、溢れそうになった瞬間にMPを止める。
「おっとっと……」
ギリギリを狙ったつもりだけど、ちょっと水がこぼれてしまう。
こぼれた水が下に落ちて、地面にしみこんでいく。もったいない気もするけど、ノエルにとっては誤差だ。
それよりも、いっぱい水をだして、木々の栄養にしたほうが良いかも。さっきいっぱい木を引っこ抜いたから、ちょっとは木々の役に立たないと。
そう思ってコップの水を飲みほして逆さにする。そして、MPを込めて水を大量に湧き出させる。
「……ん?」
ノエルはコップから湧き出してくる水が地面にしみこんでいく。そのを見つつ、ノエルはとある事を思いつく。
「……そっか!」
ノエルの頭に電流が走る。このコップを使えばマッドマンを突破できる!
ノエルは水を止めて、コップの下に掌を添える。そして、マッドマンの様子を伺ってみる。
「……よし、まだ山道にいるね」
マッドマンが山道の入り口を陣取っているのを見て思わずガッツポーズをする。
ノエルは息を大きく吸って大きく吐く。
「よし!作戦スタート!」
ノエルはコップの口をマッドマンから上のほうを狙うように向ける。
「いっくよー!」
ノエルはコップに思いっきりMPを込める。瞬間、水がコップから思いっきり噴き出して、放射状に地面に降り注ぐ。その水の量は大きな滝の量よりも多かった。
「おっとっと!」
水の勢いがすごすぎて、コップが暴れてあっちこっちに口が向きそうになる。ノエルは咄嗟に魔装をして、コップの口を1つの方向に向くように押える。
「これでよし」
マッドマンも、立っている地面もだんだんと水で濡れていく。地面やマッドマンに水がしみこんで、どんどんとドロドロになっていく。
「まだまだ……もっともっと……」
土の表面だけじゃなくて、中までドロドロになるまで水をかけ続ける。マッドマンは全く抵抗せず、水をかけられている。
そして、体に水が染み込んでいってドロドロになっていって、マッドマンの体の形が崩れていく。
「……よし!」
機を見てノエルはコップをしまう。マッドマンはドロドロになりきって、遂に人の形をとれなくなった。
ドロドロの地面でドロドロのマッドマンが蠢いている。これで、マッドマンはノエルを止められない!
地面はドロドロすぎて走りにくい。なら飛び越える!
100%の魔装を身にまとって、ノエルはクラウチングスタートの姿勢をとる。そして、思いっきり地面を蹴って加速する。
加速が100%に達した瞬間、ノエルはジャンプして空に躍り出る。
「ひゃっほーう!」
本日2度目の大ジャンプ。前は撃ち落されたけど今度は!
落ちながら下を見る。マッドマンは地面と一体化して、蠢いているだけだった。泥を投げられるような状態じゃないし、投げても威力は全くないだろう。
「これなら!」
ノエルの体は山道に向かって一直線に突っ込んでいく。
何も障害もなく、ノエルは山道に着地する。着地の瞬間、足に魔装を集中させて衝撃を受け止める。
「痛ったぁぁ……」
痛みをセイントヒールでやわらげつつ、山道の入り口に目を向ける。
「まだ大丈夫そうだね」
まだマッドマンは地面と同化してドロドロと蠢いている。多分、水分が蒸発するまであのままなんだと思う。
「あとは簡単だね」
ノエルは鬼ヶ島の山を見上げる。この山道を進めば目的の右目までたどり着ける。見た感じ、魔物もいなさそうだし、魔装で一気に登っちゃおう。
魔装を30%まで下げて、ノエルは山道を駆け上がる。魔装を強くしすぎすると疲れやすいからね。弱めにして走ったほうが結果的に早く登れる。
「あと一息!ファイト!ノエル!」
こうして、ノエルは山道を駆け上がっていった。
実は、ノエルはちょっとだけ勘違いしてることがあります。それは次回、ホウリが説明してくれます。
次回は目的地到着です。




