煉獄統一編3ーーー砂漠の真ん中で小金持ちになりそうな気配
「素晴らしいサイズです」
目を細めたベルクが言う。
ベルクは目を細めるだけで分析、解析ができるそうな。
分析眼というスキルらしい。
「素晴らしいサイズってどういう事?」
「魔界ならかなりの高額で売れます。小さ過ぎず育ち過ぎていない大きさです」
と、分析眼をやめて眼鏡を押し上げるベルク。
「高額って、これ売れるの?」
20メートル前後のうなぎが全部で7匹と半分。
半分のモノは加藤が炸裂させて、下部が残ったモノだ。
「先ほども少し申し上げましたが高級食材です」
高級食材……。
やっぱり食べるのか。
クジラほどもあるうなぎ。
大味だったりしないのかな。
「売ったらどれくらいの価値が出るの? 人間界の価値で言えばどれくらいなのかな?」
「これだけでしたら、そうですね……。日本円に換算しまして……」
ベルクが右手の人差し指を軽く回しながら少し考えて。
「……え〜と。おそらく8300万円ぐらいですね」
「………………は? …………え?」
「売り方によればもう少しだけ上乗せされるかもしれませんが」
「は………! はっせん……さんびゃくぅ……!? このうなぎが!?」
「はい。内訳は、ほぼ傷が無い6匹が1匹あたり1200万円で、小計7200万円です。あと首が無い1匹が800万円。それと、下半分だけのモノが300万円……といったところですね。」
「なんでそんなに高いの?」
「高額になるのは、こんな砂漠の場所が場所ですので、狩りに行くのは相当な覚悟が必要……という理由ですね。さらに言いますとこのサンドイールはかなりレアでして、出向きましても空振りばかりで滅多にお目にかかれません。もし、運良く遭遇しましてもこの血が厄介なので、風魔法や斬撃を得意とする者は……」
ベルクがそこまで言うと婆ちゃんが理解して繋げた。
「あぁ、強力な酸の血で返り討ちかい。それに呑まれる危険性もあるしねぇ」
「そうです。それでも、狩りに出向いてそのまま戻らない者が毎年大勢出ます。何よりこのサンドイールは食材としてだけでなく……」
「……ベルクよ。話もいいが先にこの暑さを対処しなけらば危険だぞ?」
ファウストがたまらず割って入った。
高額な売値を聞いて興奮してしまっていたけど、ここはあくまでも砂漠。
なので冷静になると。
猛烈に……本当に……すっごく暑い。
おそらく40度は軽く超えているだろう。
何もしなくても暑さだけで疲れてくる。
何より乾燥もひどい。
ん? 乾燥……?
あっ、さっきうなぎに呑まれた加藤はカッピカピになっているんじゃないか……。
と、加藤を見ると意外にも涼しい顔。
いや、むしろこの中で1番元気そうな表情をしてないか?
「加藤……なんともないの? 暑くて気持ち悪いだろ?」
俺が訊くと。
当の加藤君は首を振り。
「いえ……それが不思議な事に……あまり……というよりは、全く暑さを感じないんです……」
「そうなの? それってヤバくない?」
「心太様。加藤さんに起きているそれが先ほど言いかけた理由です。ただ、ちょっとお待ちください」
と、ベルクが空間に手を当てる仕草をする。
そしてまた収納便利な暗い穴を呼び出した。
そこへ「ん、しょっと」と、手を突っ込むベルク君。
そうしたら……信じられない物を引きずり出したよ。
目の前に現れたそれは、木材で造られた小屋……いや、かなり綺麗で立派なログハウス。
およそ、25メートル四方はある。
いや……ベルク、マジでそん中どうなってんの?
っていうかどうやって出したの、力持ち過ぎるだろ。
「すごいのが出てきたねぇ」
「……なんでこんなの入ってんの?」
ドラ◯もんベルクに訊く。
「以前にファウスト様と魔界で休日を利用して狩りに出かけましたからね。その時に色々学びまして……」
ベルクが「ふふっ」と、笑うと。
「……まさしくこのサンドイール狩りに行き、何度も死にかけたな。砂漠をかなり進んだところで『水が全部こぼれていた』と言われた時は絶望したりもした……」
「……よく無事だったな。それで詳しいのか」
ログハウスと入れ替わりに、サンドイールをベルクとファウストが穴にしまうと。
「少し休息しましょう。さぁ、中へ入ってください」
ベルクがログハウスのドアを開けて、俺達を誘導する。
「お邪魔しま……おぉ……」
中を覗くと室内はかなり広々としていた。
ご丁寧にあちこちにニスを塗ってある芸の細かさはやはりベルクだ。
ただ、内装に余計な物は無く、部屋の真ん中に丸太を組み合わせたウッドテーブルがデン! と鎮座していて、同じく木材を組み合わせた背もたれと肘置きのある椅子が二脚、テーブルを挟んで向かい合っている。
あとは壁際に木製のシングルベッドが2つ。
L字型に置かれているのみ。
ただこの部屋。入らせてもらって驚いた事が一つ。
室内がひんやりとしていて、冷房でも完備しているようだ。
魔法の力なのか?
と、思っていると。
「ずいぶんと涼しいねぇ」
そう婆ちゃんが関心する。
「はい。まさにこれがサンドイールの体液の力なのです」
「体液?」
婆ちゃんが椅子をグゴゴ、と引いて座る。
「えぇ。1匹のサンドイールから500mlしか採取できないかなり希少価値の高いモノです。その体液を10倍に希釈して体に塗りますと、一切、日焼けしません。それと、暑い日はかなり涼しくなり、寒い日は逆に暖かくなる。さらに、負傷した体も修復してくれる傷薬にもなります。極めつけに……これが1番値段の上がる理由が……」
「なんだい? まだあるのかい」
「はい。肌年齢をも修復して、すっかり若返るという、まさに無敵の美容液です。体液のみの価格が約、1000万円という価格帯です」
「へぇ……よく乱獲されなかったねぇ」
「それは、先程も申しましたが、気が遠くなるほどの広大な砂漠のど真ん中辺りで、延々と何日……いえ、下手をすれば何ヶ月探す事になるか分からないレアな魔物で……」
「ちょっと待ってベルク」
嫌な言葉が出たので割って入る。
「はい?」
「今、俺達……そんな場所にポッツンといるの? もしかして……」
「はい。そうなりますね」
「脱出するのに……ひょっとして何日もかかったりする?」
「それは……ちょっとここへは初めてなので分かりかねますが、魔界では最低、歩いて一ヶ月はかかります」
「……一カ月?」
「はい」
あれ?
どうしよう。
急に意識が遠のいてきて……。




