煉獄統一編4ーーー出よ!我がズタボロのステータス(たぶん)よ!
「心太しっかりおし! 砂漠が広いだけで何も今すぐ死ぬわけじゃないんだから」
意識を明後日の方へ逝かせていた俺に婆ちゃんが喝をいれるが……。
死ぬわけじゃないって、いや、あのね……?
あと5か月ちょっとで、ワシ死ぬんだよ?
そんな期間限定の命なのに、こんな砂漠で1か月もチンタラしてられないでしょ。
なんて悲嘆に暮れていると。
「大丈夫ですよ? サタン様……ルシファー様のおかげで、スキルアップしてますから。空間移動もできるようですので、この砂漠から脱出するのは容易いです」
ベルクが壁際に固定されたベッドに腰をかける。
「いいなぁ……。スキル……俺も欲しい……」
心から羨ましく思い……ん?
何か忘れてる……。
あ……!
「そういや、ルシファーがなんかスキルだの加護だの言ってたような……」
「言っていたようなって、心太、あんたまさか見えてないのかい?」
え? 何が?
と、聞き返そうとしたら、婆ちゃんが心配そうな目を向けてくる。
10代の姿になっているから、痛い子を見るその目は心に刺さる。
これ、あの時と同じ目だ。
高1の時、小学生に石をぶつけられて涙目になっていた俺を心配する目……。
『やっとその話になったか……。待ちくたびれたぞ』
突然何者かが会話に割って入ってきた。
頭に響く。
直接、脳に語りかけてきた。
「…………誰?」
『ルシファーだ! 私の事を今やっと思い出したと思えば大丈夫かお前!? 話を再開するタイミングをただジッと待っておったのだぞ!』
「あぁ〜ごめんなさい。色々と忙しくて。で、何でしょうか?」
『だから、スキル! ステータスが気になっておるのだろう! それを教えてやると言っておるのだ』
「はい。お願いします。あ、その前にルシファーさん。聞きたい事があるんだけど」
「”ルシファーさん” ってお前……まぁいい……。なんだ?」
「俺達いきなり砂漠に連れて来られたんだけど、普通、街とかからじゃないの? 何? 嫌がらせなの?」
『違う……嫌がらせなどではない。お前達は潜入捜査だからな。私と繋がっていると知られたら都合が悪い。だから広大な砂漠のど真ん中なら新しく住人となるお前達の魔力も感知できず、警戒される事もない。それに砂漠ならば、どんな到着の仕方でも怪我もしにくいだろう、とガブリエルも考えたのだ』
「……そっか。なんの嫌がらせかと思った」
『納得したか。皆、それぞれステータスは見えているか?』
「出てますね。ステータス表示のようです」
そうベルクが答える。
「……スキルがかなり強化された」
ファウストは当然のように受け入れている。
「私のステータス? なのですかこれは……」
加藤……お前もか……。
不思議そうに軽く首を傾げている。
「まぁ、中々のもんだねぇ」
婆ちゃんがちょっと嬉しそうに言う。
「……あの、俺、出てないんスですけど」
そんな状況下、俺だけ置いていかれている。
「心太、小さな赤い点が見えぬか? そこに意識を向けろ」
ファウストが当たり前に言うが。
「出てない! 赤い点なんてないぞ」
「おかしいのう」
婆ちゃんが首をかしげる。
そのとき。
視界の端にちっちゃく文字があるのを発見した。
【発動条件:詠唱】
「……は?」
「どうした」
「いや、なんか条件ある」
「なんと書かれている」
「詠唱って書いてある」
「ほう」
「え、なにこれ怖い」
沈黙。
全員の視線が俺に集まる。
「……やれ」
「いや、分からん。詠唱ってどうすんの?」
『うむ! 心太は特別だ。キメ顔と詠唱を全力で行うと表示されるようにしておいた』
「……やめて。普通でいい」
『セリフはこうだ。 ”我が力の根源よ!! 今こそ顕現せよ! 我のステータスよ! 出でよ!!” これをポーズを決めて全力でだ――』
「……オネガイシマス。皆と同じようにしてクダサイ……」
『もう、魂の契約時に刻んだものである為、他には方法がない』
「……なんで俺だけ。何の罰ゲームだよ」
『やらねばスキルは無効となり、ただの脆弱な悪魔のままだ』
「やりな。心太」
婆ちゃんに急かされる。
「やれやれ……」俺は立ち上がる。
そして。
仕方ない……全力だ。
恥なんて捨てる。あと、なけなしのプライドも捨ててやる。
「―――我が力の根源よ!! 今こそ顕現せよ!! 我のステータスよォォォ!! 出でよォォォォ!!!!!」
腕を振り上げる。
無駄にキメる。
全力でキメる。
風が吹いた気がした。
そして。
―――バンッ!!
無駄に派手なエフェクトと共に、ウィンドウが展開。
「はぁぁぁ……」
鬱な深いため息を思わずついてしまう。
この詠唱これからもやんなきゃならないのか。
それにスキルだけ貰っても、俺自身のレベルとか体力や魔力は初心者のソレだからズタボロだろうし。
そう予想した。
手を伸ばしたぐらいの位置に、紫色に光るパネルが表示されている。
映し出されたステータスはこうなっていた。
【冴えない悪魔のニート】
Lv 35
HP 28.000
MP 18,000
【魔法】
火炎系 重力系(上位級)
風系 氷系 雷系(中位級)
創作創造魔法(限界突破)
召喚 (九尾弧)
【スキル】
忍 (気配断ち、高速移動、剣術、投擲、暗殺特化)
生贄、餌食無効
属性魔法攻撃無効 (地、水、火、風、氷、雷、重力、聖、斬、爆裂)
状態異常無効 (毒、麻痺、呪、石化、催眠)
魂の繋がり ファウスト
「え……何だこれ? 誰の?」
肩書き? は ”冴えない悪魔のニート” って小馬鹿にされてる割に、なんだこの数値。
『無論、お前のステータスだ心太よ。どうだ気に入ったか?』
「何で……? スキルはともかく……レベル高くない? これ高いよね?」
パネルの数値に指をさす。
『……忘れたのか? いや、理解できぬだけなのだな。お前の魂は欠損したままだ。そしてファウストと繋がり補い合っている』
「うん」
『そのお前の魂は私との契約の元、悪魔として塗り替えられた。よって、ファウストの魂と魂の質が等しくなった。ゆえに連携できるようになったのだ。つまり、ファウストとお前はレベル、スキル、そして魔法も共有できる。お前は上位の力を持つ悪魔とほぼ同等になったのだ』
「え〜と……つまり、ジョブズとゲイツからジョブズジョブズになったからスムーズにシェアできるようになったってことかな」
『……言っているその内容は分からんが、能力を共有すると言いたいのならば合ってはいる』
「……そうか。ついに俺は覚醒し……!」
ガン。
鈍い音がした。
数値に興奮してテーブルで足の……小指を……やっつけた。
たまらず蹲る、と。
「本当に冴えないねぇ……」
憐れみを充分に含められた婆ちゃんの言葉が、頭上から降り注いだ。




