最初の仕事
二話目です。
読んで頂けてありがとうございます。
内容を修正しました。スイマセン。
最初の仕事は、驚くほど地味だった。
世界中から押し寄せる祈りは、だいたい三種類に分かれる。
金。愛。命。
金は多い。とにかく多い。
宝くじを当ててください、借金を消してください、仕事をください、給料を上げてください。
次いで愛。
振り向いてほしい、裏切られた、戻ってきてほしい、今度こそ幸せになりたい。
命は――
これは数は少ないが、重い。
病気を治してほしい。
事故から助けてほしい。
誰かを生き返らせてほしい。
当然だが、全部は聞き届けられない。
いや、正確に言うと全部聞き届けない。
俺は願いを叶える存在じゃない。
神様でもない。
神様の代理人。
もっと言えば、使いっ走りだ。
祈りは基本的に、放っておく。
神様もそうしているらしい。
ーー人間は勝手に願って、勝手に立ち上がる。それでいい。
とのことだ。
じゃあ俺は何をするのか。
ほんの少し、因果を傾ける。
たとえば――
転職したいと祈る男の前を、求人広告が風でめくれる。
勇気が出ないと願う女の隣に、偶然、背中を押す言葉を言う他人が現れる。
死にたいと呟いた少年のイヤホンが壊れて、代わりに流れてきた曲が、ほんの一瞬だけ心を止める。
それだけだ。
直接は何もしない。
奇跡も起こさない。
世界のルールは一切破らない。
「それで意味があるのか?」と神様に聞いたことがある。
――あるさ。
――人間は、自分で選んだと思ったものしか、受け取らない。
なるほどね。
都合のいい話だ。
俺は今、誰にも見えない。
声も届かない。
触れられない。
神様からもらったこの視界で、街を見下ろす。
人は忙しそうに歩き、怒り、笑い、諦め、また願う。
不思議なことに、
祈っている瞬間の人間は、だいたい同じ顔をしている。
弱い顔だ。
だから俺は、助けるとか救うとか、そんな大層な言葉を使う気はない。
ただ、転ばないように、少しだけ石をどけるだけだ。
それでも。
最初に「命」の祈りを拾ったとき、
俺はしばらく、その場から動けなかった。
ー助けてください。
ー助けてください。
ー助けてください。
繰り返し、すり切れた声。
公平に処理する。
そう決められている。
特別扱いはしない。
――しない、はずだった。
俺は神様に聞いた。
『おい。』
『これも、何もしないのか?』
神様は少し考えるふりをして、こう言った。
――選べ。
――お前が、神様代理人である限りな。
……なるほど。
この仕事、
思ったより性格が悪い。
中身を少しいじりました。




