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祐紀・殿と老中への説得 3

 祐紀(ゆうき)はあくまでも地龍(ちりゅう)などいないという堀田(ほった)の意見を聞き押し黙った。


 堀田は祐紀が押し黙ったのを見て、それみろと思った。

地龍がいることなど証明できるわけがない。

生意気な神主風情が大騒ぎをしおって忌々しい。

さて、この神主にどのような処罰を与えてやろうかと思った。

佐伯、お前もだ。

そう思い、ほくそ()んだ。


 堀田は寺社奉行の佐伯が気にくわなかった。

何かと殿に目をかけられ、自分達より信頼されているのを目の当たり(まのあたり)にしてきた。

いくら幼少の頃、お側付きになったからと言っていい気になりおって。

今回の地龍などというお伽話(おとぎばなし)を、殿の前で話したのはよい機会だった。

地龍などと市井(しせい)を騒がせようとしたかどで佐伯を処罰できる。

佐伯を役職から外し蟄居でもさせるか。

いや、腹を切らせるてもよいだろう。

そうすれば、殿の寵愛(ちょうあい)儂等(わしら)に向くであろう。

これは絶好の機会だと思った。

堀田はニンマリとした。


 そんな堀田を祐紀はジッと見つめていた。

堀田は物思いにふけっていた自分に気がつき我に返った。

そして祐紀と目を合わせる。

ゾッとした。


 なんだ、此奴(こやつ)は!

追い詰められて焦っているかと思えば、なんて冷静な目をしているんだ!

それに、この(りん)とした雰囲気はなんだ!

こ、此奴、はったりを()ませているのではないのか?

いかん、冷静になれ・・。

神主などに(まど)わされてはならん。

しかし、これは・・まずいぞ!

説得力が此奴にはあるかもしれん。

此奴の言うことがまかり通ると、佐伯をさらに殿が重要視するようになる。

それは何がなんでも阻止(そし)したい。

ならば、この場で祐紀を潰す!


 堀田は威圧的に祐紀をたたみかける。


 「どうした祐紀、地龍のいることを証明できなければ・」

 「堀田様、証明できないとは言っておりませんが?」

 「な! では、直ぐに証明してみせたらどうだ!」


 その言葉に祐紀は堀田から目線を外した。

堀田は呆気(あっけ)にとられた。

何故、目線を外す?


 祐紀は堀田から目線を外すと、殿と目線を合わせた。


 「殿様に最初に申しておきたいことが御座います。」

 「なんじゃ?」

 「これから地龍を皆様にお見せします。」

 「「「「な!」」」」


 殿と老中、佐伯までも声を揃えて、目を見開いた。


 「ただ、お見せするのは、私が神から授かった力によるものです。」

 「・・・。」

 「これを見て、疑うのは構いませぬが・・。」

 「何じゃ?」

 「疑うということは、神を疑うことになります。」

 「!」

 「その点をご理解頂きたいのです。」


 この言葉に堀田は()みついた。


 「法螺(ほら)を吹くのもいい加減にせい!」

 「堀田様、ですから信じるも信じないのも貴方次第です。」

 「だからなんだ!」

 「神を信じないというのなら、それなりのお覚悟を。」

 「くだらん! 儂を脅すとは笑止千万(しょうしせんばん)!」

 「いいえ、あくまでも忠告です。」

 「ふん! では証明してみせろ!」

 「分かりました。」


 そう言うと祐紀は深呼吸をした。

ゆっくりと目を半眼にする。

そして印を結んだ。

何やらボソボソと唱え始めた。


 すると外がゆっくりと暗くなり始めた。

老中達は雲が太陽を遮ったかと最初は気にしなかった。

しかし、暗さが戻るどころかさらに暗くなる。

やがて夕暮れ時のような暗さになったときだった。


 突然、ピカッ!と光った。

その直後、轟音が轟く。

ピシ!

ドカン!!


 雷が庭園の大木に落ちたのだ。

雷が落ちた大木は真っ二つに割れ、ゆっくりと別れ傾いていく。

ギギギギギという音とともに。

やがて隣の木によりかかり、ハの字型となり鈍い音がして静止する。

雷により、木の一部が燃えていた。


 しばらくすると小雨がぱらぱらと降って来た、そう思った瞬間、土砂降りに変わった。

雨音が凄い。

殿、老中達は目を見開き庭を見ていた。


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